文部科学省が「生命(いのち)の安全教育」を本格化させ性教育が注目されるなか、教える側の大人の教育の現状はどのようなものになっているのでしょうか。どろんこ会グループ(東京都渋谷区)が実施した「性教育意識調査2023」によると、約7割の保育従事者が「園児の性的な行動を見たことがある」と回答しました。他方、「家庭で性教育は実施していない」と回答した保護者は約7割となりました。
調査は、2023年8月にインターネットで実施されました。
同グループの保育園、発達支援つむぎ、学童保育室、放課後等デイサービスに勤務する保育士・保育補助スタッフの男女638人に、「園児から『性』や『生殖』に関する質問(例:女の子と男の子の体はどうして違うの?赤ちゃんはどうやって生まれるの?)をされた経験」について聞いたところ、40.8%が「ある」と回答。
さらに「園児の性的な行動(性器タッチや友達同士で見せ合い、自慰行為など)」については、68.0%が「目にしたことがある」と回答しました。
また、「園児からプライベートゾーン(胸やおしりなど)を触られる、触ろうとされるなどの行為を受けたことがある」と答えた保育従事者は71.2%。
そこで、園児からプライベートゾーンを触られた経験がある454人に対して、「園児からプライベートゾーンを触られる・触ろうとされるなどの行為を初めて受けたのはいつですか」と尋ねたところ、「保育士になってから」が85.9%と多数を占めた一方で、保育士になる前の「実習中」(9.0%)と答えた保育従事者も一定数いることが明らかとなりました。
次に、「保育士養成校で、乳幼児期の性教育に関することは教えてもらいましたか」と聞いたところ、「該当する科目・講義がなかった」(44.4%)が最多となった一方で、「該当する科目・講義があり、教えてもらった」が13.5%、「該当する科目・講義はなかったが独学で学んだ」が7.4%という結果になりました。なお、実習後や働き始めてから「乳幼児期の性教育を学んでおけばよかった」と答えた保育従事者は85.4%に上りました。
これらの結果を踏まえて同グループは、「保育園で幼児期に正しい『性』の知識を学ぶ機会を創り、自分や他者の命、体を大切に思う気持ちを育む包括的性教育が行うことが重要であると再認識いたしました」とコメントしています。
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他方、同グループの保育園、発達支援つむぎ、学童保育室、放課後等デイサービスを利用する保護者(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、福岡県、宮城県、福島県、沖縄県、新潟県、兵庫県、群馬県在住)3176人に、「自身が性教育を受けた経験」について聞いたところ、73.6%が「性教育を受けた経験がある」と回答。
一方、「分からない」(10.7%)、「いいえ」(15.7%)と答えた839人のうち、83.9%が「性教育を受けておけばよかった・受けたかったと思う」と答えています。
「性教育を受けておけばよかった・受けたかったと思う」と答えた704人に対して、「いつごろ受けたかったですか」と尋ねたところ、「乳幼児期(0~5歳児)」(45.9%)や「小学生」(42.9%)といった低年齢時期に回答が集まりました。
さらに「どのような性教育を受けたかったですか」と複数回答可で聞いたところ、「プライベートゾーンやプライベートパーツについて」(78.0%)、「男女の体の違い、発達や発育について」(75.1%)、「受精・妊娠に至る経緯(性行為)、出産について」(64.1%)などが上位に並びました。
その一方で、「現在、家庭で性教育を実施している」(28.0%)と答えた保護者は3割未満に留まり、多くの保護者が「実施はしていない」(必要だと思うが実施はしていない51.7%・実施していない20.3%)ことが明らかになりました。
なお、「実施していない理由」について回答者からは、「どう教えたらよいか分からない」「正解が分からない。恥ずかしい気持ちもある」「導入を間違えて、変な伝わり方をしたらいやなので、なかなかハードルが高く感じる」といった意見が寄せられました。
最後に、「家庭での性教育や子どもと性について話をする場合、事前にどのようなことを学んでおきたいですか」と複数回答可で聞いたところ、「男女の体の違い、発育や発達についての知識や伝え方」(70.7%)、「プライベートゾーンやプライベートパーツの伝え方」(70.5%)などに回答が集まったほか、「自分や相手の体・命の大切さの伝え方」(67.4%)、「自分の体の守り方」(67.1%)といった意見も多くみられました。
回答者からは、「積極的に性教育が実施されなかった世代なので、正しい情報を学んでおきたい」「私自身知らないことがたくさんあるから、一からちゃんと学んで何を伝えるべきかを考えたい」といった声が寄せられたそうです。
調査結果から同グループは、「保護者の方の中にも性教育に対するとまどいや迷いも見られるものの、昨今の子どもへの性犯罪の増加を受けてのご不安も感じられ、乳幼児期の性教育の重要性や、正しい情報を求めているという姿が浮き彫りとなりました」とコメントしています。