石川県で最大震度7を観測した能登半島地震。帰省中に石川県能登町で被災し、「報道されず孤立している」「避難所の備蓄品も底を突いた」などと発災直後から自身のXアカウントを通じて懸命に周辺の被害状況を発信していた20代の女性に、現地の通信環境や電源の有無などを考慮しながら、断続的に3日ほどかけて話を聞いた。
女性は名古屋市在住のデザイナーで、地震発生時は能登町南部の藤波に帰省していたという。発災翌日の1月2日頃から「能登の被害が報道されず、孤立している」「周知と救助のために投稿を拡散してほしい」と精力的に発信を開始。「道路の液状化や陥没がひどく、車の移動もリスクがある」といった現地の様子をリアルタイムで伝え続けた。
水、灯油、ガソリンが不足
6日現在は女性の実家がある地域の電気も復旧。ただ現在も水道は復旧の目処が立っておらず、給水車から供給される1人2リットルの水を少しずつ使っているという。また朝晩の冷え込みが厳しくなっているが、暖房器具に必要な灯油が不足しているほか、車のガソリンも足りていないそうだ。
石川県によると、1月6日14時時点で県内の死者は計110人。女性のいる能登町は、死者2人、負傷者35人、安否不明者10人で、住宅の被害は全壊、半壊、一部損壊いずれも「多数」となっている。
女性によると、水や電気の復旧程度には地域差があり、被災者の間でも感覚にズレが生じてきているのが感じられるという。「一口に能登といっても範囲が広く、山奥の方は報道や支援が届いていません。また、そこへ向かう道路は土砂崩れなどで寸断されていて、あちこちで数十メートルにわたるひび割れや、1メートルほどの隆起もできているようです。孤立地域を解消するためにも、救援の基礎となる陸路の復旧作業をなんとか急いでいただきたいです」
そんな中、1月3日には町内のドラッグストアが店を開けてくれたという。
「行ってみると停電のため店内は真っ暗で、陳列していた商品の一部が床に散乱していました。私は衛生用品としてお尻拭きシートや口内洗浄液のほか、寒さ対策としてホッカイロ、食品はカップ麺や食塩、ふりかけなどを買うことができました」
「地震後、初めての店舗再開だったので、物資が手に入ることを喜んでいる人、安心した様子の人がたくさんいました。店内をライトで照らして、お互いどこに何があるのかを教え合い、言葉をかけ合いながらの買い物でした」
能登はやさしや土までも
レジも使えないため、住民らは自分が購入した商品分の現金を置いて帰る形に。金額を確認するため、スマホや紙のメモを手に売り場を何度も行き来する人も多かったという。
女性は「自分が被災しているのに、ちゃんとお店にお金を払い、帰り際に『大変な時にありがとうございます』とお礼を口にする人もいました。古くから『能登はやさしや土までも』と言われますが、ドラッグストアでの光景などを見るたびに、本当にその通りだと感じています。こんなにも素敵で大好きな能登が、少しでも早く復旧し、平穏な日常が戻ってきてほしいです」と話し、被災地に心を寄せてくれるよう願っている。