視力を失い耳も遠いトイプードルの老犬 なでられると安心した表情で離れない 「急に独りぼっちにされて怖かったんだね」

松田 義人 松田 義人

2023年9月、福岡県の保健所に収容された1匹の老犬がいました。トイプードルのメスで15歳はとうに超えているようです。体はベタベタで、両眼ともに白内障でほぼ目が見えないようです。

情報では、福岡県福智町エリアで捕獲されたとのこと。同時期にこのエリアでは複数のワンコが捕獲されていることから、もともと同じ飼い主の元で暮らしていたようにも推測できました。しかし、一定期間を過ぎても飼い主の名乗り手がなく保健所の収容期限が過ぎてしまいました。そうなると殺処分の可能性が高まります。

このワンコの存在を知った福岡を拠点に保護活動を続けるボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)では、このトイプードルの老犬ら複数を引き出すことにしました。

大人しくマイペースな性格?

トイプードルの老犬の名はふじ子さん。目が見えないためヨタヨタと歩くことしかできません。スタッフが声をかけても反応ゼロ。どうも耳も遠い様子でした。それでもなんとかして元気になってほしいと、スタッフは預かりスタッフさんの家に連れて行く前に、まずはその汚れ切った体をスッキリさせることにしました。

はぴねすの活動に賛同してくれているサロンに連れていき、優しいトリマーさんの元でいつも通りのトリミング。ふじ子さんは目が見えず、耳も聞こえないところで自分の体を触られるわけですから、嫌がって暴れたりするのではないかとも思いましたが、キョロキョロする程度。極めて大人しく、トリミングをさせてくれました。

綺麗になったところで、改めて預かりスタッフさんの元へ連れていくことにしました。この預かりスタッフさんの家には、先住犬もいましたが、ふじ子さんは特に警戒することもなく、どこかマイペースに部屋中をてくてくとお散歩。初めての場所なので、何があるのかを見て回っているようでした。

両目とも見えていない状態なので、あちこちにぶつかってしまいます。しばらくはケージの中で過ごしてもらうことにし、環境に馴れたところで、ケージから出してあげることにしました。

 

人の体から離れたがらない

ふじ子さんは、目と耳が不自由で、預かりボランティアさんはもちろん先住犬が近くにいてもなかなか気づいてくれません。しかし、ふじ子さんの体に預かりボランティアさんが触れ、なでてあげると安心したようにうれしそうな表情を浮かべます。さらに尻尾をフリフリさせながら、預かりボランティアさんに体を寄せて離れようとすれば嫌がるそぶりを見せます。スタッフはこう語ります。

「急に独りぼっちにされて、すごく寂しくて怖かったんだと思います。この子の丸ごと全てを受け入れてくれるご縁を繋いでいきたいです」

「これからもいっぱいの笑顔を見せ続けてね」

保護犬の譲渡にあたってはどうしても月齢の若いワンコから決まっていく傾向があります。それでもはぴねすのスタッフは諦めません。ふじ子さんのように体が不自由になっても、どのワンコにも等しく与えられた命を幸せなものにしてあげたいと考えているからです。

この月齢になるまでのふじ子さんは、おそらく大好きであったであろう人間のもとで過ごしていました。そんな思いを踏みにじるかのように手放された可能性が高く、なんとか第二の犬生でもっと幸せになってほしいと願っているからです。

現在、ふじ子さんは持病の治療をしながら、預かりスタッフさんの家で先住犬たちと仲良く穏やかに暮らしています。その表情は保護当初よりどこか優しげで、安心しているようです。そんなふじ子さんに預かりスタッフさんは、いつもこう話しかけています。

「ここでは自由に過ごしていいんだよ。ご飯をいっぱい食べて、1日でも長く生きて、そしていっぱいの笑顔を見せ続けてね」

わんにゃんレスキューはぴねす
http://happines-rescue.com/

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