2021年、九州地方のとある場所で、ひとりぼっちで不安そうな表情を浮かべながら彷徨うメスのミックス犬がいました。元飼い犬のようですが、痩せ細っており体調も良くなさそうに映りました。
地元の保健所がこのワンコを捕獲し、いったん動物愛護センターに収容。元飼い主からの名乗りを待ちましたが、一定期間を過ぎても連絡がありませんでした。このことから元飼い主が意図的にこのワンコを捨てた可能性が浮かびました。
他方、動物愛護センターでは収容に対して期間制限があります。この期間内になんらかの引き取り手が見つからなければ、殺処分になってしまいます。
そこで動物愛護センターの職員は、地元・九州で行き場を失ったワンコたちを保護し続けるボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす（以下、はぴねす）に連絡。このワンコの存在を知ったはぴねすスタッフは、その命を救おうと、迷わず引き出すことに決めました。
初対面の人にも自ら寄っていくレア2号
はぴねすのスタッフが、動物愛護センターでこのミックス犬と対面すると、自ら寄ってきて自分の鼻を押し当てて挨拶してくれました。ずいぶんと人馴れしていることからも、やはり元飼い犬のように映りました。
スタッフは、当初「レア」という名前をつけてようとしましたが、同時期にはぴねすに同名のワンコがいました。犬種こそ違えど、彷徨っているところを保護されたこと、そして飼い犬らしき保護犬という点も共通しているため、このミックス犬には「レア2号」という名前をつけました。
いかにも人間好きの穏やかそうなレア2号でしたが、ガリガリに痩せており、体調が良いとは言えない状態。スタッフはすぐさま動物病院に連れていくことにしましたが、ここでレア2号の体には意外なことが隠されていることがわかりました。
妊娠していることが発覚。4匹を出産することに
動物病院での検査の結果は、フィラリア陽性。ボルバキア治療を行うことになりました。その後回復したところで「今度は避妊手術だ」とレア2号を入院させることになったのですが、ここで妊娠していることが発覚しました。避妊手術はいったん中止し、出産を優先させることにしました。
やがて4匹の子犬たちを出産。1匹は死産でしたが、残りの3匹は、レア2号の子育てとそれを支えるスタッフによって、すくすくと育ってくれました。後にこの子犬たちは、はぴねすによって里親募集がかけられ、巣立っていきました。
人間が大好きな一方、他のワンコはちょっと苦手
子育てを終えたレア2号は元気を取り戻し、エサをいっぱい食べるようになり、健康な体を取り戻しました。人が大好きですが、他のワンコは苦手なようで、預かりスタッフさんの家で暮らす先住犬とはとにかく相性が悪く、ときに噛みつくことも。その後、先住犬がいない別の預かりスタッフさんの家に移ることになりました。
ただし、問題点はこの程度で、極めて穏やかで人間が大好きな性格には変わりがありません。飼い主から捨てられ身ごもりながらひとりぼっちで彷徨っていたレア2号です。「だからこそ、とびきりの幸せを掴んでほしい」と程なくして里親募集をかけることになりました。
約2年の月日を経てやっと幸せを掴むことに
生まれて間もない子犬に比べれば、中型のミックス犬ということもあり、里親希望者さんはなかなか現れませんでした。気づけば、レア2号を保護して里親募集をかけて2年が過ぎようとしていました。
預かりスタッフさんは「どうして、こんなに優しくて穏やかなレア2号に、良縁がないのだろう」と不思議に思う日々をおくっていましたが、今年になりやっと里親希望者さんが現れました。この方は「過去にも保護犬を迎えたことがある」と言い、対面したレア2号に一目惚れした様子でした。その後、レア2号はこの里親希望者さんの家で一定期間のトライアルを経て、めでたく第二の犬生をつかむことになりました。
最初は馴れない環境に緊張したのか、地面に這いつくばり、小刻みに体を震わせるレア2号でしたが、それでも里親さんは慌てませんでした。「よく来てくれたね」と笑顔で声をかけ、同じ目線でアイコンタクト。穏やかで優しい里親さんの愛情をたっぷり受け取り、心を開きました。今では当初の様子が嘘のように思えるほどになじんでいるそうです。
波乱万丈の犬生をおくってきたレア2号ですが、ここで本当の幸せを掴むことができました。このことをおおいに喜ぶはぴねすのスタッフでしたが、一番喜んでいるのは、きっとレア2号自身です。いつまでも幸せに過ごしてね！
わんにゃんレスキュー はぴねす
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