異臭漂うゴミ屋敷 20匹もの犬が飢えていた 保護されたシニア犬は愛情注がれ体力回復 「家族に迎えてくれる人、待ってます」

松田 義人 松田 義人

2022年頃、九州地方のある民家から激しい異臭が漂い、複数の犬の鳴き声が聞こえてきました。その民家の室内はゴミで埋め尽くされており、床が見えない状態でした。20匹前後のワンコたちが暮らしており、いずれも栄養が足りていないのか痩せ細っていました。

「多頭飼育崩壊現場」と言うべき環境です。このことを知った地元の民生委員さんは「真っ先にすべきは、ワンコたちの命を助けてあげること」と考え、地元を拠点に動物保護活動を行う団体・わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)に相談しました。

栄養失調による貧血とフィラリア陽性

すぐにはぴねすのスタッフがこの家に向かうと、もはや人間・ワンコが住める環境ではありませんでした。他の動物愛護団体にも協力を要請し、この家のワンコ達を少しずつ保護することにしました。最初に相談してくれた民生委員さんも「保護できないワンコにもできる限りお世話をし、そして、家のゴミの片付けもやる」と言ってくれました。

はぴねすがまず保護したのがハチという白と黒の毛色が特徴のシニアの大型犬でした。健康状態であれば凛々しいルックスであることが想像できましたが、保護当時はあばら骨や背骨が浮き出ているほどに痩せ細っており、表情もやつれていました。

はぴねすのスタッフは、ハチを動物病院に連れて行きました。獣医師さんによれば、栄養失調が原因で貧血が見られ、フィラリア陽性反応もあるとのことでした。

そのためまずは毎日3回きちんとエサを与え、とにかく栄養を摂取して体力の回復を目指すことにしました。これに加えてフィラリア陽性に対するボルバキア治療を行い、経過観察を行うことにしました。

ビニールやゴミなどの異物が便に…

ハチはしばらくの間をはぴねす所属の預かりスタッフさんの家で過ごすことになりましたが、驚くべきことが発覚します。ハチの便からは、ビニールやゴミなどの異物が出てきたのです。

以前の環境では、飢えのあまり食べ物の匂いがするものは何でも口にしていたのでしょう。あのままだったらハチは栄養失調で死んでいた可能性が考えられます。預かりスタッフさんは「保護できて良かった」と思う一方、必死に生き抜こうと過ごしていたハチを思うと、胸が締め付けられる思いでした。

元気を取り戻す一方、オッチョコチョイな一面も

預かりスタッフさんは、日々ハチにしっかりとエサを与え、フィラリアの治療も続けました。数カ月後にはハチの体格は格段に良くなり、表情も明るく目の輝きを取り戻してくれました。

預かりスタッフさんの家には、他のワンコも一緒に暮らしていますが、ハチはこういった先住犬とも仲良くでき、無駄吠えもありません。とても穏やかで甘えん坊な性格でもあり、なでてあげるとうれしそうな表情を浮かべてくれます。

その家の飼い猫を見つけては「追いかけっこしようよ」とばかり、猫ちゃんと遊ぶことも尾。ハチ自身がキャットタワーにハマって動けなくなるといったオッチョコチョイな一面も見せてくれます。「そんなハチの性格がとにかくかわいくて愛おしい」と預かりスタッフさんは目を細めて話します。

元の環境とは真逆の、潮風の中をのんびり散歩

散歩も大好きで、出掛ける時間になるとソワソワします。しっかりと前を向いてとにかく楽しそうに歩きます。預かりスタッフさんの家の近くは海で、いつも潮の香りが漂い、波の音が聞こえます。以前の環境とは真逆のこの場所は、ハチにとってこの上なく幸せな場所です。

現在、里親さんを募集していますが、気になることもあります。シニア犬であること、視力や聴力が衰えており、フィラリアの影響からか心臓も弱くなってきていることです。

シビアな言い方をすると、ハチはこの先、長くは生きられないことも考えられます。「それでもハチのことを家族として迎え入れてくれ、最期の時まで愛情を持って見送ってくれる里親さんが現れるのを信じたい」と預かりスタッフさんは言います。これまで多くの苦難を乗り越えたハチに、どうか幸せが訪れることを願わずにはいられません。

わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/


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