「ネットで買い物できない…どうやったら買える?」と電話 小さな会社がハッと気づいた「スマホやPC使いこなせない人も」「現代の問題」

宮前 晶子 宮前 晶子

今やネット注文が当たり前のショッピング。しかし、さまざまな状況からネットでの購入を避けたい人やスマホやPCを操作できない人も。そんななかで中小企業の心温まる対応が話題となりました。

「今日会社に電話があって、御社の作ってる国産つまようじがどうしても欲しくて…東京ならどこに置いてますか?ネットで見たけど私はネットで買い物ができないんですと話されてました。うちは本当に小さな会社で、この商品はどこにも卸してないので街で買う事はできないんですとお話ししました」

こちらの会社は、今では希少となった国産つまようじを製造する菊水産業株式会社(大阪府河内長野市)。「勇気を出して電話をしたと話されてたし、本当に欲しいですと言う気持ちに応えたくてお送りする事にしました。ネットが普及した今って情報過多で、この商品いいな〜買おうって思う事って日々あると思うんです。ネットで買う事ができなくてわざわざ電話番号調べてかけてきてくれるってハードル高いしすごい事やなって…」と、送り届けることを決意したとのこと。

ネット注文をしたことがない高齢者の方々にも自社商品を届けるような仕組みができないかと考えている最中だという、4代目社長の末延秋恵さんにお話を聞きました。

珍しくない、買えない人からの問い合わせ電話

「触り心地って言ったら変ですけど、手触りが違います」と末延さんが話すつまようじは、北海道産の白樺の木が原料。しっかりした材質なので折れにくい上、製造過程で薬品などを使っていません。問い合わせのあった商品「きくすい 日本製 純国産しらかば楊枝 約300本入り」は、自社ECショップなどネットでの販売を中心としています。しかし、ネットでの購入以外の方法はないのか?買えるお店はあるのか?と聞かれることも。そんな問い合わせ電話のひとつが冒頭でのエピソードでした。

会社を探し当て、東京から電話で問い合わせてくれた行動力に感銘を受けた末延さんは商品を送付することにしました。「私自身、ネットで商品を紹介する記事を見ます。でも、ネットで買えないとわかったら、買うのをあきらめると思うんですよね。会社を調べて、電話をかけてまで問い合わせをするってハードルが高いというか、勇気のいることだと思うんですよ。だからお電話をいただいてとても嬉しく思ったし、この気持ちに応えたいと」

X(旧Twitter)には、「欲しいものがあり企業に電話したけど、木で鼻をくくったような対応をされまして…。企業側がわかってくださるのが嬉しい」「スマホやPC使いこなしている人から全く使えない人まで色々な人がいらっしゃる」「ほんとに現代の問題。みんながみんな、ネットで色々出来るわけじゃない」とのコメントもあり、ネットショッピングに慣れていない人に対する売り方の仕組みを考えなくてはいけない、と考えるようになったと末延さん。

ただ常時、電話で受注すると対応のため人件費がかかり、振込にすると確認もひと手間かかってしまいます。また着払いは、つまようじの価格帯を考えると手数料が割高になってしまうのが懸念材料に。

「今までも、メディアに出るとこういうことは多少ありました。 “小売店で販売していないので買えないんです、すみません”で終わらせることは簡単です。弊社は、私を含め全員で5人しかいない小さな会社ですが、小さな会社だからこそ、柔軟に対応できる事もあるのではないかと。欲しいと思ってもらえることがありがたいので、あきらめるのではなく、そういう方々のために自分たちができることを考えていきたい。できるだけ対応していきたい思いを、社員と共有しています」

末延さんがこう考えるのは、同社を設立した先々代の祖父への思いから。「私は、祖父母が大好きで、介護をしたくて学生時代からの目標であった介護福祉士の資格を取り、介護職に従事していた事もありました。そして今は内職さんがたくさんおり、地域の高齢者の方々に商品作りも支えてもらっています。祖父が作り続け、たくさんの方々に支えられている国産つまようじを作り続けたいし、多くの人に知って欲しいんです」。

家業を継いで1カ月後の会社全焼や、転売ヤーによる3倍の価格での転売など数々の壁が立ちはだかりますが、その都度、持ち前のガッツとポジティブ志向で逆境を跳ね返しています。「転売ヤー騒動では、最長約1ヶ月半お待たせする事態になってしまいましたが、最終的に約5000個を販売しました。そのうち、約3500件の発送は従業員一丸となってやり遂げました!」。

社長になって2年が経過した現在は、社長業、職人としての黒文字楊枝づくり、SNSでの広報など大忙しの毎日。X(旧Twitter)のフォロワー数は7.5万人。つまようじのこと、家業を継ぐということなど、さまざまなことを発信しています。

■菊水産業株式会社【公式】(国産つまようじ屋)@kikusui_sangyo
■菊水産業公式ホームページ https://kikusuisangyo.co.jp/

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