2022年8月のこと。東海地方のとある家でワンコの飼育崩壊が起きていました。飼い主が適切な去勢や避妊手術を行わないまま飼っていたところ、ワンコ同士の繁殖が繰り返され、どんどんワンコが増えていったそうです。こうした状況を放置すると、悪循環が加速し、増えていったワンコたちは不衛生な環境下で栄養不足になったり、病気なることが多いものです。
この家のことを知った、東海エリアで犬の保護活動を行う団体・一般社団法人SORA小さな命を救う会（以下、SORA）は、急いで現場に向かい、この家のワンコたちを緊急レスキューすることにしました。
「あなたは誰？」「私はこれからどうなるの？」
飼育崩壊現場からレスキューした中に小さな身体に真っ白な毛色、大きな目が特徴的なワンコがいました。推定年齢5歳ほどのメスのチワワです。
SORAでは後にこのワンコに「さわちゃん」という名前をつけました。適切な飼育がなされないまま、ずっと誰かが助けてくれるのを待っていたはずですが、スタッフがレスキューする際には、「あなたは誰ですか？」「これから私はどうなるの？」と言わんばかりの不安な表情を浮かべていました。そんなさわちゃんにスタッフは「もう大丈夫だからね」と優しく語りかけました。
検査でわかった膝蓋骨脱臼と鼠径ヘルニア
さわちゃんをレスキューしたスタッフはSORAに連れ帰った後、完全隔離部屋に移動させ、獣医師に検査をしてもらいました。フィラリア検査や内診、皮膚掻き取り検査が行われ、さらに詳しい検査が必要な場合は動物病院に行くことになります。獣医師は「両足の膝蓋骨脱臼（しつがいこつだっきゅう）と、右鼠径部にヘルニアの症状が見られる」と診断しました。
膝蓋骨脱臼とは、膝にあるお皿のような骨が正常な位置からズレてしまう状態になるものでで、進行すると痛みを伴うだけでなく、上手に歩けなくなる恐れがあります。鼠径ヘルニアは足の付け根付近の腹膜に隙間ができ、脂肪や臓器の一部が皮下に飛び出しポッコリ膨れ上がってしまう病気です。
スタッフは手術を依頼。避妊手術も頼み、さわちゃんは2週間以上入院することになりました。
術後のリハビリで日に日に歩行が安定し始めた
小さい体で劣悪な環境に置かれていたさわちゃんです。これだけの手術を乗り越えることができるかスタッフは心配しましたが、結果4回の手術をさわちゃんは見事に乗り越えてくれました。膝蓋骨脱臼の手術を行った後、今度は正常な歩き方ができるようリハビリをしてもらうことにしました。
術後間もない頃は、まだ足が痛むためでしょうか、さわちゃんはうまく歩けませんでした。しかし、リハビリを続けるうちに日に日に安定してきました。完璧と言える状態ではないものの、すごい成長ぶりです。スタッフは上手に歩くことができないさわちゃんのために、床で滑らないようカーペットを敷くなどして、その負担を和らげるよう工夫をしました。
人見知りの半面、心を許せばヤキモチ焼きに
小さな体でありながら、なかなかたくましいさわちゃんですが、実は人見知りが激しいタイプ。初めて接する人の前ではオドオドすることが多いです。
しかし、普段さわちゃんのお世話をするスタッフの前では尻尾を振りながらたくさん甘えてきます。ヤキモチな一面もあり仲の良いスタッフが他の保護犬のことを構っているとすねてしまうこともあります。
スタッフは「さわちゃんのそんなところもかわいい」とうれしそうに語ります。馴れるまでは一定の時間がかかるものの、馴れてからは本来の甘えん坊ぶりを思いっきりぶつけてきてくれる性格のようです。
ずっと一緒に過ごしてくれる家族を待ち続ける
現在さわちゃんは、レスキューされた頃に見せたような、悲しそうな表情は一切消え、スタッフに笑顔を振りまきながら楽しく暮らしています。そして、シェルターで過ごしながらずっと一緒に過ごしてくれる新しい家族との出会いを待っています。
術後ある程度歩けるようになったところで、優しい里親希望者さんとの出会いを求めて譲渡会へも参加するようになりました。まださわちゃんにピッタリの里親さんとのマッチングは果たせていませんが、こんなにがんばりやさんでかわいいさわちゃんなら、幸せな第二の犬生の一歩を踏み出す日もそう遠くはないでしょう。
多くの困難を乗り越えたさわちゃんに、たくさんの幸せが訪れることを願うばかりです。
一般社団法人SORA小さな命を救う会
https://sora-chiisana.org/
SORA小さな命を救う会・インスタグラム
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