妊娠出産を繰り返してきた保護犬 幸せつかんだ6匹の子犬を見送り自身も人馴れトレーニング 「次はあなたの番だね」

松田 義人 松田 義人

北海道の滝上町では数年前から犬に関するある問題が起こっていました。近くで多頭飼育崩壊がまず起こり、この現場にいたワンコたちが半野犬化し、そこにさらに通りがかった人たちが餌やりなどをすることもあり、ワンコたちは繁殖を繰り返していました。

この現場で、多くのワンコたちを保護し世話し続けているのが、保護団体のHOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。保護したワンコに適切なケアとサポートをし、健康状態が良ければ避妊や去勢手術を行った後、新しい里親さんへと譲渡する活動を行なっています。

しっぽの会がこの滝上町で保護を始めた2020年5月、最初に出会った犬がママというメスのミックス犬。白い毛並みが特徴でした。

最初の確認から半年後の保護時、再び妊娠していた

最初に滝上町の現場で見かけたママは、出産して間もない様子でした。過去にも何度も妊娠・出産を繰り返してきたのでしょうか、お乳が著しく垂れ下がっていました。

このときは保護することができず、それから半年ほど経過した2020年12月にやっと保護することができました。しかし、このときは再びママが妊娠していることが発覚。しっぽの会ではより慎重にケアとサポートをすることにしました。

のちにママは6頭もの子犬をがんばって出産しました。出産後もママは、やっぱり母親でした。産まれてきた6頭の子犬それぞれに愛情をたっぷり注ぎ、立派に育ててくれました。もちろんしっぽの会のスタッフも、そんなママの手伝いをし、成長した子犬たちはそれぞれ新しい家族の元へと巣立っていきました。

過去を思い涙をこぼしたスタッフ

愛情をいっぱい注ぎながら子育てをする様子は、とにかく頼もしくそして優しい気持ちにもさせてくれました。

過去にも同じような経験を何度も繰り返しがんばって出産し、育てた子犬たちと離れ離れになることばかりだったことを思うと、スタッフの目から涙がこぼれることもありました。

スタッフはママに「でも、大丈夫だよ。今回が最後になるからね」と声をかけ、出産から数カ月後に避妊手術を行いました。

ママが幸せをつかむ番

半野犬として人間から餌はもらっていたものの、人間から触られたり首輪やリードを付けられたりしたことがないまま、成犬になりました。そのため、ママにピッタリの里親さんとの縁をつなぐためには、避妊手術だけでなく、人馴れトレーニングも必要でした。

臆病な性格のため、お散歩の練習中も「怖い!」と感じてしまうとパニックになることがありました。スタッフはママがパニックになっても大丈夫なように、首輪やハーネスを念入りに体につけ逸走を防ぎながらトレーニングを続けました。そして、スタッフは「大丈夫、大丈夫!ママのペースいいんだからね」と声をかけ続けました。

スタッフの愛情がママにも伝わったのでしょうか、やがてママは上手にお散歩できるようになりました。

車などは相変わらず苦手ですが、そういった「嫌いなもの」「怖いもの」がない場面では、スタッフとアイコンタクトを取ったり、道草の匂いをクンクン嗅ぐなど、本来の優しく好奇心旺盛な性格を見せてくれるようにもなりました。こういった地道なトレーニングを経て、この夏からついにママの里親募集が始まりました。巣立っていった子犬たちのように、ママが幸せをつむ日もそう遠くはなさそうです。

しっぽの会のスタッフは、その日がいつ来ても良いように、今日もママと寝食を共にし、人馴れトレーニングを行い続けています。

HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/#gsc.tab=0

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース