咬傷犬とされ殺処分対象に 警戒心の塊だった四国犬 愛情をいっぱい浴びて甘えん坊ワンコに変身

松田 義人 松田 義人

保護犬の中には「咬傷犬」と呼ばれ、過去に人を噛んだことがあるワンコもいます。一度でも咬傷犬とみなされると、「人間にとって危険な犬」というレッテルを貼られ、多くの行き場を失った保護犬の中でも、殺処分対象になることが多いのが現状です。

数年前のある日、広島の動物愛護センターに人を噛んだ経験のあるワンコが収容されました。その名はガッツ。咬傷犬とされたガッツは殺処分対象となった一方、心ある動物愛護センターの職員さんが「なんとかこの命を救うことはできないか」と保護犬団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)に引き出しを依頼しました。

四国犬のガッツは当初とにかく警戒していた

ピースワンコのスタッフは、これまでも多くの咬傷犬を引き出し、そして幸せな第2の犬生へと導いた経験が数多くあります。そういったことから動物愛護センターの職員もピースワンコに連絡したわけですが、それを聞いたスタッフは一も二もなくすぐに引き出しに向かうことにしました。

ガッツは四国犬という犬種で骨格ががっしりとしているため体格が大きいのが特徴でした。確かに警戒心が強く、ピースワンコのシェルターへ連れ帰ってからも、しばらくは人間に不信感を抱いて様子がうかがえました。そして、その不信感・警戒心がマックスになった際は確かに噛みついてくることもありました。

しかし、スタッフは慌てません。「大丈夫。ガッツはきっと心を開いてくれる」と信じて献身的にケアとサポートを続けることを決意しました。

寝食をともにし、やがて心を開いてくれるようになったガッツ

当初のガッツは確かにスタッフを警戒するがあまり、噛みついてくることもありました。しかし、スタッフは冷静に接し、そしてガッツが心を開いてくれることを信じ、ときに自宅に連れて帰り寝食をともにすることもありました。

長い時間をスタッフと一緒に過ごしたガッツは少しずつ心を開き笑顔を見せてくれるようになり、そして噛むこともなくなりました。

そんなガッツの成長を前に、スタッフは「『咬傷犬』と言っても、人間が心底そのワンコと向き合い、愛情を注ぎ続ければ、いつか必ず心を開いてくれるものです。そして、そういう状態になった際には噛まなくなることが多いです」と語ってくれました。

ガッツを何時間も見つめる里親希望者が現れる

「元咬傷犬」ということさえ感じさせないほど成長したガッツは、のちに新しい第2の犬生へと導いてくれる里親募集を始めました。さらに他のワンコと一緒に譲渡会にも参加することになりました。

その譲渡会でのこと。会場に来た方が、ガッツのことを30分〜1時間ほどジーッと見つめていました。スタッフはその方を見て「どことなくガッツに似ているな」と感じたと言います。

スタッフは思い切って、その方に話しかけてみることにしました。「ガッツのことが気になりますか?」と声をかけると、その方は「つい最近愛犬を亡くしたばかりで、ペットロスの状態だ」と言います。そして、「ワンコを迎えたいけれど、亡くなった愛犬のことが忘れられず迷っている」と言います。つまり、すぐにワンコを迎え入れられる心境ではない一方、ガッツのことが気になってしょうがないということでもあるようでした。

さらにその方は何時間もガッツのことをじっと見つめていました。スタッフは「ペットロスを克服するきっかけになれば」と思い、「お試しでガッツをお家に連れて帰ってみませんか?」と提案しました。スタッフの提案にその方も快諾。ガッツはトライアルとして、この方の家にいったん受け入れられることになりました。

さらなる笑顔を見せるようになった

結果、その方はガッツとの生活を心から楽しみ、そしてガッツもすぐに心を開いたそうです。この経緯から、ガッツはこの方の家に迎え入れられ幸せな第2の犬生をつかむことができました。

ガッツがピースワンコを卒業してからすでに6年以上が経過していますが、新しい里親となったこの方は本当に心優しく、今でも頻繁にピースワンコにガッツを里帰りさせてくれると言います。

新しい里親さんのもとで暮らすようになったガッツはさらに表情が柔らかくなり、本当に人が大好きなワンコに大変身していました。スタッフから見てもガッツが本当に幸せな生活をおくっていることを感じ、里親さんが毎日愛情をたっぷりと注いでいることが見て取れました。ピースワンコに里帰りしたときでさえガッツは里親さんにべったりと甘えているそうで、スタッフはそんなガッツの姿を見てとても嬉しく思いました。同時にガッツのようなワンコを、これからも1頭でも多く送り出すことができるよう、その決意を新たにしました。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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