新幹線の中で、有名ブランド「Paul Smith」のデザイナー、ポール・スミスさん(76)に遭遇した―。そんな夢のような話が日本で起き、SNSを沸かせている。気付いたのは、漫画家の男性。緊張しながら声を掛けると、漫画に興味を示してくれ、本をプレゼント。すると、お礼に直筆サイン入りの手紙をくれたという。サインはもちろん、ブランド名と同じ。男性は「家宝にします」と感動している。
漫画家の福田雄一さん(44)。普段はポルトガルでイラストレーターの仕事をしている。友人とともに、ツイッター「工務店の日報(KOBA_co_osaka)」も運営。大阪にある工務店の日常を4コマ漫画で投稿しており、今年3月16日に書籍化されたばかりだ。
イラスト絶賛「書店に行ったら買えるのかい?」
新幹線で遭遇したのは3月23日昼過ぎ。東京・品川駅から大阪への新幹線を待っていると、ポール・スミスさんらしき人が立っていた。若い頃からの憧れのブランドのため、顔はもちろん知っていた―。「あなたはポール?」。英語で声を掛け、返ってきたのは「そうだよ」。緊張とうれしさで震えていると「旅行かい?」とポール・スミスさん。仕事で東京に来た旨を伝え、震える手で漫画を見せると「きれいなイラストだね。書店に行ったら買えるのかい?」と褒めてくれた。
「よろしければもらってください」。福田さんが書籍化されたばかりの本を差し出すと、「ありがとう」と10回も伝えてくれた。
2人は同じグリーン車に入り、別々の席へ。その後、前から歩いてきたポール・スミスさんが、直筆のメッセージをそっと渡してくれた。「Dear MR FUKUDA Thank you for my book Best Wishes(親愛なる福田さん、本をありがとう。幸運を祈ります)」。左上には、ブランドに登場するウサギの絵。サインはもちろん「Paul Smith」だ。福田さんは「ロゴと一緒。自分の本を受け取ってくれて、手紙まで運んでくれて…。夢じゃないかなと思うくらい」と興奮を語る。
お返しに似顔絵プレゼント「僕らは友達」
お返しをしなくちゃ―。ガタガタと揺れる新幹線の中、スケッチブックに似顔絵を描き、自分のサインを添えた福田さん。帰りに渡そうと思っていると、トイレから戻ったポール・スミスさんが、手を拭く紙がなくて困っていた。すかさずハンカチを渡しに行き、そのまま似顔絵をプレゼント。すると、席に誘導され、事務所の住所が書かれた紙を渡してくれた。「これで我々は友達だからロンドン来たら事務所においでよ」。記念撮影も提案してくれた。
話をしていると、来日した理由は、世界的な建築家・安藤忠雄さん(81)に会うためだったよう。「本当に、日本でこんなことが起きることにびっくりです。SNSに写真を上げるのも許可してくれましたよ」とも話した。