東京・足立にある保護犬カフェPETS。同団体では、数多くの保護犬を迎え入れ、献身的にお世話をした後、新しい里親さんへの譲渡を行なっていますが、中でも一定数いるのが「多頭飼育崩壊」出身の保護犬たちです。
「多頭飼育崩壊」とは、元飼い主のずさんな管理によって、避妊去勢などを行わず、どんどんワンコが増えていき、手がかけられなくなってしまうものですが、多くの保護犬団体では、こういったワンコたちを受け入れ、適切なメディカルチェック、治療、避妊去勢などをします。
もちろん、同団体も同様のぬかりないお世話をするわけですが、ただし譲渡に対しては、これら以外にも足かせとなってしまうことがあるとか。スタッフはこう語ります。
「医療的な面でのケアは基本的ですが、特に『多頭飼育崩壊』出身のワンコは『人に馴れている』と『人に馴れていない』の差が激しいため、健康な状態まで治療をしてもマッチした里親さんにつなげるように、より慎重に譲渡を行なっています」
多頭飼育崩壊から保護されながらも、両極端な性格の2頭
多頭飼育崩壊となったワンコのうち、比較的早い段階から環境にいたワンコは飼い主や人間から撫でてもらったり、コミュニケーションを取ってもらっているケースが多いのに対し、後から生まれてきたワンコは、ぞんざいな扱いを受けることが多く、一度も人間に触ってもらっていない場合もあると言います。
実に悲しい現実ですが、PETSでもこの両極端のワンコを発見しました。まず、1頭はチワワの保護犬・ポコちゃん。推定4〜6歳のメスで、出っ歯気味の表情がかわいいですが、初対面の人間にもすぐに寄ってきて「なでて!」とばかりに甘えてきます。
一方、推定5〜8歳のミックス犬の保護犬・けんごは、ポコちゃんの真逆の性格で、とにかく人見知り。おそらく保護前は人間とのコミュニケーションがなかったと思われ、人間を見かけると、すぐに自分のお家の中に隠れてしまいます。ただし、「完全に人間が嫌いなのか」というと、そういうわけではなく、ただ馴れていないだけで、こんな行動を取ってしまうようで、「この人は怖い人ではない」「この人は甘えても良い人だ」と理解すれば、心を開いてくれるのです。
ゴールを決めないでのんびりと接する
このように、同じ多頭飼育崩壊から保護されたワンコでも、その性格はまるで違う傾向があるということです。PETSでは、どんな性格のワンコであっても、ワンコ個々のペースに応じ、あえて譲渡するまでのゴールを決めず、のんびりとお世話をし続けると言います。
「多頭飼育崩壊からのワンコは、このように『人に馴れているワンコ』『人に馴れていないワンコ』の差が激しいのですが、私たちは特にゴールを決めないで接するよう心がけています。
散歩や人馴れトレーニングはもちろんやりますが、ワンコがあまり乗り気でなければ強制的にさせることはしません。ご飯・おやつなどの食べ物も、もちろん定期的にあげますが、ワンコ自身が食べたくなければ残してもらっています。
こういったことの繰り返しによってワンコが人間に心を開いてくれれば良いし、仮に心を開いてくれなくても、それはそれで良いと思っています。『そういったワンコのほうがかわいい』と考える里親希望者さんもいますので。
少なくとも、人間が考える『理想のワンコ』みたいなものを無理強いすることは絶対にしません。言うまでもなく、ワンコはワンコごとに性格が違うものなので、私たちはそれを尊重しながらお世話をし、新しい里親さんにつなげたいと思って活動をしています」