生まれつき前足がない柴犬、トレーニングを頑張る姿に応援の声 いつか車いすで自由に動けるように…

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「少しずつですがトレーニングしてます
なかなか上手くいきませんが、おやつで釣れるな。
と実感してます」

生まれつき前足2本がない柴犬の春ちゃん(雌・春子ちゃん)。1歳を迎えた2月から車いすに乗れるようになるためのトレーニングを始め、その様子を飼い主さんがInstagram(@haru_fuku_taro2022)に投稿しました。

「春ちゃんは元々2本足で生まれてきたので、4本足で歩いた経験がなく、前に重心を預けることがなかなかできません。そのため最初のトレーニングはタオルで胸を持ち上げて、なるべく前重心の体勢にして後ろ足で歩くというもの。これがなかなか上手くいかなくて。無理やりするとトラウマになったりするとかわいそうなので、なるべくトレーニングは短時間に。嫌がるとすぐに止めるようにしています」

後ろ足だけで懸命に生きようとする子犬の姿が目に焼き付いた

飼い主さんが春ちゃんと初めて出会ったのが、昨年3月21日の「春分の日」。柴犬のブリーダーをしている叔父さんの娘さんから連絡がありました。「子犬が生まれたよ!見に来る?3匹おるけど、1匹両前足がないんよ」。その日は予定があったものの、いても立ってもいられずその足で向かったといいます。

「初めて見た春子は他の兄弟よりひと回りもふた回りも小さくて、排せつもうまくいかないのか汚れていました。生まれつき前足がない犬を見たのは初めてだったので、とても哀れでかわいそうだと思いました。これからこの子はどうやって生きていくのか、どんな成犬になっていくのか、もしくは、ちゃんと生きていけるのか様々な思いが巡っていました。それでも春子は2本だけ授かった後ろ足を必死に動かし、一生懸命生きようとしているように映りました」

それから何日か春ちゃんのことがとても気になっていたという飼い主さん。叔父さんから「犬好きを見込み、飼ってくれないか」と言われたそうです。

「とても迷いました。多頭飼いの経験もなく、何といっても先住犬の福とうまくやっていけるのか。いろいろ考えましたが、春子も他の犬と同じように幸せにしてあげたいという思いが強くなり、主人や母の助けも借りることで迎えることを決意。“春子”と言う名前は、初めて出会った『春分の日』のようにこの子の周りがいつも春の優しくて暖かい空気で包まれていて欲しいという願いを込めて付けました」

   ◇  ◇

2本足の子犬を先住犬が受け入れてくれるか心配だった

先住犬も柴犬、福ちゃん(雌・3歳)といいます。春ちゃんをおうちにお迎えすることを決意したものの、飼い主さんは福ちゃんが春ちゃんを受け入れてくれるかどうかが心配でした。しかし、そんな不安もすぐに消えました。福ちゃんは春ちゃんに威嚇することもかみつくこともなく、何かを察したようにすんなりと受け入れてくれたとか。また実家にいる老犬・太郎くん(雄・15歳)も”孫”のように優しく接してくれました。2匹の対応を見て、とても安心したそうです。

とはいえ、前足がない犬を飼うのは初めての経験。ケージの段差をなくすこと、餌箱や水入れの高さをどうするのか、どういう姿勢で食べるのが楽なのか、胸当ては必要か…それに市販で売られている犬用のグッズは全て健常犬用のものばかり。試行錯誤しながら、春ちゃんが少しでも快適に過ごしてもらうと環境を整えてきたという飼い主さん。春ちゃんの”日常”についてこう話します。

「歩く時は胸を着いて後ろ足を同時に蹴り上げてぴょんぴょん歩きます。ちょうどウサギさんのような感じです。トイレの仕方もどういう姿勢でするのか観察しましたが、自分なりにしやすい姿勢があるようで、そこは心配要りませんでした。ただ自分から外に出て用を足すことはできないので、時間を決めて庭に連れて行きました。ちなみに、柴犬は家の中ではトイレをしないのは経験上知っていたので小さい頃から外で慣らしています。春ちゃん自身も家に来た時からトイレが近くなったら自分からほえて教えてくれます。

おしっこの場合、胸を着いて、後ろ足をカエルのように広げて安定した状態でします。またうんちの時は2本足ではいきめないので、直立になって出しているんです。でも2本足で立つのは不安定なので、頑張りすぎて後ろに倒れることもしばしば。いつも複雑な気持ちになります…このほか、ワンコは土を掘るのが好きなのですが、それもできず、鼻で掘っている姿を見た時は涙が出ました。2本足だけではできないことがたくさんあって。だからこそ、なるべく手助けできるようにしてあげたいと思っています」

2本足だけではできないことも多い、車いすを使いこなせるようになれば

2本足だけではできないことを春ちゃんができるようになってほしい・・・そこで思い立ったのが前足2本の代わりとなる車いすでした。

「獣医さんには、動物というのはなければないなりに自分で考えて動くものなのでそのままでいいと言われたのですが、私から見たら胸を突きながら動いている姿は痛々しく、腰や膝にも悪そうに感じました。それに車いすを使いこなせたら3匹一緒に散歩にも行けるようになるし、今後訪れる老後にも役立つと思ったんです」

春ちゃんと同じように前足がない犬のことについて、また犬用の車いすについて調べたといいます。飼い主さんの旦那さんがネットで見た犬用車いすを参考に第一号を作ったものの、まだ春ちゃんが生後1ヵ月になったばかりで、車いすを動かせるような筋力がなく使用を断念。そのころ、春ちゃんの成長を記録をしようとInstagramで投稿を始めました。

「投稿を始めてから数ヵ月でフォロワーさんが一気に増えてきて、たくさんのコメントやメッセージをもらうようになりました。その中に犬用の車いすを作る会社を紹介してくれる方がいたんです。後ろ足用の車いすを作っている会社が多い中、前足用のものも作ってくれる会社もあったり。また春ちゃんの車いすを作りたいと手を挙げてくださった方がいたんです。遠方の方で採寸もなかなかできず、作ってもらっても使いこなせない可能性もありますので一度はお断りしたのですが…その方の熱心な思いに共感し、試しに作ってもらったのが今ある『春ちゃん号』です!」

トレーニング方法もフォロワーさんが教えてくれた

さらに、車いすに乗るためのトレーニング方法もフォロワーさんから教えてもらったとか。

「初めはタオルで胸を持ち上げて、なるべく前重心の体勢にしながら後ろ足で歩くトレーニングをという練習をしていましたが、なかなか上手くいきません。なので、最近は少し練習方法を変えて車輪の付いたものに乗ることを体感させています。例えばスケートボードや、ガーデンチェアーに乗せたりと。今は赤ちゃんの歩行器を改造できないか考え中です。ゆっくり焦らず取り組んでいこうと思います」

日々のトレーニングに頑張る春ちゃんについて、飼い主さんはこう話します。

「春ちゃんはとっても賢い子です。自分は他のワンコと違うと理解しているように思います。何をするにも私たちの手が必要になります。トイレに行きたい時は出入口近くに行き、水が飲みたい時は水椀の近くに、ご飯が食べたい時はご飯椀の近くでほえます。ちゃんと私たちの方を振り向いて意思表示してきます。その気持ちをくんであげないといけませんが、一緒に生活することで大体わかるようになりました。それに一度も粗相をした事がありません。

でも少し寂しがり屋さんなところも。平日、仕事の時は実家に預けていきます。午前中は寂しがって鳴いているみたいです。仕事が終わって迎えに行くと玄関先で待っていてくれてお尻フリフリ、飛行機耳で大喜びの春ちゃんがお迎えしてくれます。これがかわいくて、ついつい甘やかしてしまいますね」

そんな春ちゃんが車いすに乗れるようになったら・・・

「太郎じぃじと福ちゃんたちと一緒に散歩はもちろんのこと、ドッグランやマルシェ、みんなで旅行もしたいですね。いろんな夢が膨らみます!」

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