いや、揺れすぎやろwww 乗り心地が悪いのになぜか大人気!? 神戸の山に唯一現存する謎のレトロ乗り物「カーレーター」 #昭和98年

黒川 裕生 黒川 裕生

2017年、神戸のある珍妙な乗り物が、人気テレビ番組に取り上げられたことで一夜にして全国的な話題を集めた。タモリさんが街の歴史や人々の暮らしに迫るNHKの「ブラタモリ」。そしてその乗り物とは、日本でここにしかない「カーレーター」である。

1966(昭和41)年に誕生したカーレーターは、神戸市須磨区の鉢伏山と旗振山の山頂一帯に広がる須磨浦山上遊園にある。ロープウェイの鉢伏山上駅と山頂を結んでおり、2人掛けの簡素な作りのゴンドラが、全長91mのベルトコンベアの急傾斜をガタゴト振動しながら登っていくレトロな乗り物だ。名前の由来は、車の「カー」とエスカレーターの「レーター」から。

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「世界一乗り心地が悪いらしいで」「楽しみやな」

3月中旬のお昼前。ロープウェイ内である親子の会話が聞こえてきた。念のために指摘しておくと、確かに同遊園は「乗り心地の悪さを楽しんで」と積極的にPRしているが、さすがに「世界一」とまでは言っていない。とはいえ、「乗り心地の悪さ」を売りにしていること自体、よく考えてみたらおかしな話ではある。

思っていた以上に揺れる

カーレーターに実際に乗ってみると、のっけから覚悟していた以上に激しく揺れ始めたので、「まさかここまでとは…」とたまらず笑いが込み上げてきた。カメラを構えてみたものの、当たり前だが手ブレが収まらない。というよりじっと座っていることすらままならないほどの振動だ。

原因は、平面の乗り場と斜面をつなぐ数mの部分にある。ゴム車輪が縦に並んでいるここを通過するときに、激しく揺れてしまうらしい。

「我々としても、乗り心地の向上を目指してやれるだけのことはやっているんですよ」と同遊園主査の田村将樹さん。測量用の道具などを使って車輪の高さを細かく調整し、スムーズに動くよう試行錯誤しているのに、どうしても揺れを食い止めることができないという。

「結果的にこうなっているだけで、決してわざと乗り心地を悪くしているわけではありません。たまに『ギャアア』と泣いて嫌がる子供を見ると、切なくなりますしね…」

そうは言っても、とある記事で「『乗り心地の悪さ』を適度に残すため施設の維持管理を行っているという」と書かれていたのを私は知っている。真偽はいかに。

さて、カーレーターは2016年の開業50周年というタイミングで地元メディアにも大々的に取り上げられ、それなりに耳目を集めたが、翌2017年のブラタモリ効果はケタ違いだった。各民放テレビ局などからの取材も相次いだほか、一般の利用者による動画投稿も急増。コロナ禍で一時落ち込んだとはいえ、人気は今に至るまで衰えておらず、昨年もある人気YouTuberによる紹介動画が127万回再生を超えるなど、大きな反響を呼んだ。今年4月に地元神戸で公開される映画「アキレスは亀」のロケ地としても使われているという。

もともと国内に2カ所しかなかったカーレーターは、1975(昭和50)年にサンケイバレイ(現びわ湖バレイ)で廃止されて以降、ここ須磨浦山上遊園でしか乗れない超レアな存在に。ただ、開通時に44台あったゴンドラは老朽化などで18台になり、他に類似施設がないためメンテナンスも「かなり手間がかかる」(田村さん)という。それでも同遊園は「日本で唯一」というプライドを胸に、今日もゴンドラを激しく揺らし、来園者たちを(力わざで)笑顔に変えていく。

レトロ風ではない本物のレトロを目撃せよ

カーレーターでたどり着いた山頂にドーンとそびえるのは、ずんぐりした円柱形の建物「回転展望閣」。3階の「喫茶コスモス」は、丸いフロアがゆっくりと回転する、いわゆる回転レストランだ。約55分かけて、雄大な海と山、そして眼下に広がる神戸の街の360度眺望を楽しむことができる。全国でももはや数えるほどしか残っていない、レトロフューチャーの至宝である。

「物珍しさもあるのか、最近は若い人も増えてきたんですよ」と厨房のスタッフが教えてくれた。メニューは基本的にコーヒーやカレー、ピラフなどの簡単に調理できるものが多いが、1年ほど前から新たにクリームソーダを加えたところ、多い月で500〜600杯出るほどの大ヒット商品に。「大学生くらいの子たちがよく写真を撮ってくれています」

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そして回転展望閣のレトロな魅力の真骨頂は、実は2階のゲームコーナーにこそ詰まっている。「ミスターバットマン」や「カニカニパニック」、スロットマシンなど主に1980〜90年代に製造された古い筐体が35台ほど並んでおり、「懐かしい」を通り越して、そこはかとない不安を覚えるほどの時代錯誤感を漂わせているのだ。「故障中」の紙が貼られたものが目立つのも、らしくて大変良い。

ちなみに、数週間前に下調べで訪れた際は何も置かれていない床がむき出しの寂しいスペースがあったが、3月中旬に再訪すると、その一角は緑色のネットに覆われ、中に卓球台が1台だけ設置されていた。新しいゲーム筐体を入れるという選択肢はなかったらしい。それでこそ回転展望閣。そのブレなさが心強い。タモリさんもきっと喜んでくれるはずだ。

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【須磨浦山上遊園】
営業時間は10時〜17時。火曜休園(祝日と重なる場合は営業)。
カーレーターは大人片道200円、往復350円。ロープウェイや展望閣入場とのセット券もある。
Tel:078-731-2520
Fax:078-731-5471

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※この記事はまいどなニュースとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
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