二番煎じはおもしろくないですよ、デスク。それに私、昨年より写真うまくなりましたもんー。「今年も年末に『喜田さん写真展』やっとく?」年の瀬が近づいた頃、紙面を編集するデスク(上司)からそう言われ、少しムッとして答えた。
神戸新聞入社4年目、兵庫県三田市を担当して3年目になった筆者。出した写真がことごとく保留(要するにボツ)になるため、昨年末、その理由を探るコラム風記事を神戸新聞の「三田阪神版」に掲載した。写真は読者の俳句や短歌を紹介する紙面「文芸」欄の挿絵として撮ってきたもので、見た人が楽しめるよう工夫したつもりだった。
記事は「まいどなニュース」にも「デスク、納得できません!」のタイトルで掲載。すると、「これまで何を学んできたのか」「謙虚な姿勢が足りない」とおしかりも受けたが、詳細なアドバイスや応援も寄せられた。三田の人たちからは「普段の写真はそこまで悪くないよ」と励ましまでもらった。よく考えると褒められてはいない。
デスクに断ろうとしたけれど、そんな皆さんに感謝を込めてやっぱりやらせてほしい。今年もたくさん出しました。1年の成長、ご覧あれ。
◆今年のかかし【採用】
料理の評価も一口目で決まるというが、もうお分かりいただけただろうか。かかしが柵に寄りかかり、ぐでんぐでん。コロナ禍前の夜の街を思わせ、なんだか懐かしい。本来の役割を果たしているのかは怪しいが「飲み過ぎた…」というタイトルがぴったりとOKをもらい、無事掲載された。
◆タヌキ【採用】
手足を広げてぺろっと舌を出すぬいぐるみのよう。これはすんなり通った。「よーく見ているうちに不思議とタヌキが浮かび上がってくるねんなぁ」とデスク。よしよし、ようやく丸め込め…いや、意図が伝わるようになってきた。
◆もうエノキとは言わせない【採用】
夜の撮影は難しい。昨夏は花火にチャレンジするも設定が間に合わず、高速で鍋に落下するエノキ(ぶれた光の跡)を捉えてしまった。
あれから勉強し直し、基本的な撮り方は押さえられたが、ひと味違う写真も撮らねばと焦っていたこの冬。クリスマスのイルミネーションを取材中、カメラマンに声をかけられた。顔に不安がにじみ出ていたらしい。シャッターを切っている間にズームレンズを回す手法を教わった。温かい出会いのおかげで迫力ある「流れ星」を持ち帰ることができた。
◆あじフライ【ボツ】
そうとしか見えなかった。昼食前で空腹だったのもあったが、植木を見るとサクサクの衣にしっぽが付いていた。ただ、背景がぼかせておらず、花の中で際立たせられなかったためボツに。考えて設定を変えるべきだった。
◆龍【ボツ】
紅葉が映る川面に神々しい姿を見つけた。のり面とその反射が角と耳の生えた龍のよう。紅葉の炎をまとい、水面を泳いでいる。「これはさすがに…。朝から読者を混乱させられへんわ。保留」(デスク)
◆ヘリコプター【ボツ】
山岳救助訓練の取材中。近づいてきたヘリコプターをかっこよく撮るはずが、吹き下りる風でそれどころではなかった。ノーファインダーでシャッターを切ると、震える空と見送る隊員が確かにヘリの存在を感じさせた。しかし、写っていない。けっこうへこんで下山した。
◆昨年よりましなエミュー【採用】
何か言いたげですね。分かります。
◇ ◇
反省することはまだまだたくさんあった。でもそのたびに周囲の助言を受けながら次の対策を練ってこられた。「失敗と書いて成長と読む」という元プロ野球監督の故・野村克也さんの言葉を反すうしている。
とはいえ、このほかに出した29点は全て採用。確かにボツになる数は減ったはず。「ものの見え方も変わったかも」と、この記事を書くにあたり1年前の反省会の紙面を読み返してみた。今も間違いなくエノキに見えた。
(まいどなニュース/神戸新聞・喜田 美咲)