地主から石を投げられ、カラスに狙われ…マンション8階から目撃した「親子猫の危機」、見過ごせず保護

平藤 清刀 平藤 清刀

四周を塀に囲まれて死角になっている空き地で、3匹の子猫を育てている母猫がいた。ところが、地主が親子に向かって石を投げている。その光景をマンション8階の自宅から目撃した團田芳子さんは、救出に乗り出した。

遠くに見える親子猫を観察していたら

2匹仲良く並んで写真に収まっているのは、2歳のチャト吉(向かって右、本名:寅弥)と現在6歳のニャース(同左、本名:弥助)。ともにオスの保護猫だ。「本名」が付いているけれど、飼い主の團田芳子さんによると「ふだんはチャト吉、ニャースって呼んでいます」とのこと。

今回の主役はチャト吉くん。暮らしていた空き地で人間から石を投げられたり、カラスに狙われたりしていた危機的な状況から、親子ともども保護された。

保護したのは、大阪府東大阪市に住む團田芳子さん。そのときの経緯を聞いた。

「2020年の春、コロナ禍でみんながステイホームしている頃でした」

團田さんの自宅はマンションの8階にあって、商店街のアーケード越しに小さな空き地が見えるという。そこは四周が囲まれているため、道を歩いている人からは見えない。

「離れているから色ぐらいしか分からないけれども、猫が生まれたなと思って、旦那と2人で毎日のように観察していたんです」

外出が憚られる生活で、遠くに見える親子猫を観察することが、團田さんにとって小さな癒しになっていた。

「あるとき、地主さんが囲いのカギを開けて入っていくと、猫たちが一斉に逃げて母猫は塀の上に飛び乗りました。その母猫に向かって石を投げつけたんですよ。当たらなかったけど」

團田さんは急いで空き地まで走っていき、地主に声をかけた。

「猫を保護しますから、それまで待ってもらえませんか」

地元で活動する保護猫団体に連絡すると、手いっぱいのため捕獲は2週間後になるという。地主もそれまで待ってくれるという。しかし、その後も相変わらず石を投げているし、子猫を狙っているのかカラスが集まり始めた。

「ハラハラしながら、見ていました」

それでも地主の石に当たることもカラスに襲われることもなく、親子4匹の捕獲に成功。子猫3匹は、いったん團田さんの自宅で預かることになった。

それから3週間ほど経って、保護猫団体から團田さんに「保護猫の譲渡会を行います」という連絡が入った。

「全員出しますかって訊かれたんですけど、3週間も面倒を見ていたら情が移ってしまって……。でもマンションだし、すでに先住猫のニャースがいたから全員引き取るのは無理だったんです」

そこで3匹のうちメス2匹を譲渡会に出して、オスのほうを引き取ることにしたという。それがチャト吉である。

チャト吉は控えめな性格で、團田さん宅でお世話になっていたときは姉妹に圧倒されがちで、おもちゃで遊んでいてもすぐ取られてしまう子だったという。

「メスのほうは2匹揃って、いい里親さんがみつかりました」

團田さんはその里親さんと今も頻繁に連絡を取り合っていて、チャト吉の近況を伝えたり姉妹の様子を伝えてもらったりしているそうだ。

あれから2年が経ち、チャト吉も立派な大人猫に成長した。子猫のときは遠慮がちな性格だったが、今では先住猫のニャースより大きな顔をしているという。

「ニャースも気が弱いみたいで(笑)。ニャースがいる場所を取り上げるとか、ニャースがご飯を食べていたらそれも取るとかしています。ニャースも、チャト吉が来たら『お前が来たんやったら、じゃあ僕はいいよ』みたいな感じで譲ってあげていますね」

オスどうし、プロレスごっこみたいにじゃれ合うぐらいで、喧嘩をすることもなく仲がいいという。

せっかく救われた命。これからも愛情をたっぷり受けて、生き抜いてほしい。

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