猫を家に迎えたくても、様々な事情で迎えられない。そんな人に向けた画期的な制度を実施している、保護猫団体があります。大阪府高槻市で主に活動している「高槻ねこの会」です。「フォスターペアレント制度」といい、月々500円から気になる猫に支援できるというもの。支援金は猫の医療費や日々の生活費にあてられます。事前連絡があれば、いつでもシェルターで触れ合うことだってできるんですよ。
とはいっても、フォスターペアレントがいない猫の方が多いのが現実。いても1匹につき1人のフォスターさんです。そんな中、なんと3人のフォスターさんがいる猫が高槻ねこの会には所属しています。その名も「クロくん」、推定5歳です。
恐らくスコティッシュフォールドで、超巨大猫。現在は10キロほどあります。骨格から大きいので、見た目から頼もしい!何より、穏やかな性格で優しいですよ。シェルターの仲間の猫からも慕われ、いつもクロくんの周りには人も猫も集まってくるんです。
今でこそ人気者のクロくんですが、高槻ねこの会に迎えられるまでは悲惨な暮らしでした。あれは忘れもしない2020年1月のこと。代表のOさんがスタッフと共に京都府亀岡市の山中を車で走っている時に、廃墟と化したレストランでクロくんたち発見。飼い主がいないか近隣で聞き取りを行うと、どうやら野良猫のよう。血統書つきのように見えるのに…。
クロくんは時折通りがかるトラックドライバーからお弁当を分けてもらい、命をつないでいたといいます。一緒にいた仲間の野良猫たちも、同じような境遇。それなのにたくさんの張り紙があったんです。「猫に餌をやるな」と。
このまま放置していたら、猫たちの運命は良い方向に行かない。そう感じた高槻ねこの会は、クロくん含め5匹全員の保護を決行。血液検査の結果、クロくんだけが猫エイズのキャリアでした。保護された猫たちは、それぞれシェルターに入ったり預かりボランティアさんのもとへ行ったり。クロくんは大阪市の預かりボランティアさんのお家で療養することになりました。
保護された時のクロくんは、今では想像ができないくらしガリガリ。骨と皮だけの体で、目だけがランランと輝いている状態だったんです。預かりボランティアさんはこれが不憫で、たくさんご飯を食べさせました。実は彼女が見送った元飼い猫もまた、猫エイズだったんです。その猫は口内炎が酷く、晩年はご飯が食べにくくなっていました。ご飯は命の源ですから、たくさん食べてほしい。飢えに苦しんだクロくんに心を寄せ続けてくれました。
約1年、預かりボランティアさんの元で過ごし、心と体の健康を取り戻したクロくん。そろそろ譲渡会デビューとなり、2021年10月22日に高槻ねこの会のシェルター「ねこのおうち」へお引越しです。この時の体重は12キロ。保護した時の姿はもう思い出せません。体重は重たいものの、血液検査では健康そのもの。預かりボランティアさんの愛情のたまものです。
強烈な飢えを経験したクロくんは、とにかくお腹を空かすことが怖いよう。ちょっと遊ぶと、カリカリを1口2口。また少し経つと、また1口2口。でも、「ねこのおうち」だと遊び相手がたくさんいるので、運動をよくするようになりました。その分、ちょっとスマートに。
譲渡会でも一番人気のクロくん。クロくんと会いたいがために来場される方もおられるほど。クロくん個人への差し入れも多く、譲渡会の看板猫になっています。みんなのアイドル、クロくんです。
クロくんの特徴は、何といっても平等であること。フォスターさんでも、初対面の人でも同じ対応。「ボクを撫でたら嬉しい気持ちになるよ」と言わんばかりに、人間が床に座った途端にゴロリと背中を向けるんです。人間が撫でると、こちらを見上げて「嬉しいでしょ?」って確認してくれます。
猫に対しても平等な対応をしますから、中でもちょっと不器用なリキくんはクロくんが大好き。他の猫なら「シャー!」といわれることでも、クロくんは受け入れてくれるんです。
このように、猫にも人間にも愛されまくっているクロくん。つらい思いをしたからこそ、誰にでも優しくできるのかもしれません。一度、会いに来てくださいね。猫の概念をひっくり返されますよ。
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【高槻ねこの会】
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