夏休みの読書感想文「すごい」「やばい」しか言わない子でも大丈夫! 母親が作った「言葉変身シート」が話題

金井 かおる 金井 かおる

 夏休みも終盤。読書感想文の指導を丸投げされ頭を悩ませる親御さんと、真っ白な原稿用紙を目の前に途方に暮れる子どもを同時に救ってくれる「読書感想文の書き方プリント」が話題です。

 作成したのは「書店POPの達人」として知られる元書店員で、3人の子の母親でもある川口諭美(ゆみ)さん。名古屋市内の図書館で実践講座を開いたところ、ほとんどの参加者が約3時間の間に清書まで完成させました。川口さんは自身のTwitterアカウントでもプリントを公開。Twitterユーザーからは「これはすばらしいノウハウ」「自分が子どもの頃に知りたかった」「語彙力不足を解消してくれる」「永久保存版」「来年も講座を開催してほしい」などの声が上がり、拡散が続いています。

 「みなさんそれだけ読書感想文について困っていらっしゃるんだなと痛感しました」という川口さんと、イベントを開催した図書館館長に話を聞きました。

「小学生の子どもに丸投げは無理」

 「小学生のうちは子どもが一人で読書感想文を書くのは無理」。自身の子育ての経験からそう思っていた川口さんは、大人がインタビュアーになり、子どもの頭の中にある感想を引き出しながら、最終的には子どもが作文を完成させる方法を編み出します。

 サポートする大人が「インタビューってどうやればいいの?」と戸惑わないように、手順を(1)インタビューの仕方、メモの取り方(2)文章を膨らませる5つのパターン(3)言葉変身シート(4)原稿用紙の書き方の4枚にまとめ、親子でプリントに沿って進めていくと、気づきや学びのある感想文の完成へと導かれる仕組みです。内容は現役の国語の先生や作家、司書にも相談し、現場のリアルな声も盛り込みました。

 「お子さんの心の中にある、もやっとした感想を、親御さんが文字化してあげてほしい。『すごい』はどういう感情なのか。もっとくわしく膨らませて。そこから自分の生活の中にも似たことはあるかな、などと気づきから学びに持っていってもらうのが一番理想的な形だと思います」(川口さん)

 プリントの中にある「言葉変身シート」を使うと、「すごい」や「やばい」など日常会話で使いがちな言葉が「すてき、最高、びっくりした、開いた口がふさがらない、腰を抜かす、大きい、とんでもない、おそろしい、思わず拍手した」など、子どもが伝えたかった気持ちに近づけることができます。また、文章を膨らませる方法として、「もし私が〜だったら編」「お手紙編」「みんなにおススメしたい編」など5つのパターンも紹介します。

 本選びや読み方にもコツがあります。「本はお子さんが選んでください。お子さんが選んだ本に親御さんは否定やダメ出しはしないようにしましょう」。本を読むときは「心が動いたページに紙を挟んでおいてください。プラスに心が動いたところだけでなく、嫌だったページ、辛かったページ、涙が出たページにも挟みましょう」。

 大人への注意点としては「お子さんの感想にはダメ出ししないようにしましょう。子どもが興味を持って感想を言っているときに『それは違うでしょ』と曲げないでほしい。お子さんの気持ちをすくい取ってあげてください」。

図書館館長「僕らも目から鱗だった」

 名古屋市守山区にある志段味(しだみ)図書館では8月18日、川口さんを講師に迎え、「POPの達人が教える読書感想文の書き方」を開催しました。参加条件は、当日までに本を選び、読み終えておくこと。小学生から大人まで11人が参加し、小学生は図書館スタッフなどとペアになり、川口さんのプリントをもとに取り組みました。

 同館館長の藤坂康司さんもサポート役として参加。開催前は下書きができればいいと思っていたところ、ほとんどの参加者が清書まで完成させ、終了後は参加者の間に笑顔が広がったそうです。

 「僕らも目から鱗だった。上から目線の『読書感想文の書き方』の本が多かった中、一緒に取り組む。大人が手を出しているのではなく、引き出してあげている。文章を組み立てるのは子どもが自らやる。文章構成がおかしくても、自分で思ったことを素直に書いていくのがいい。こちらも達成感があった。書く回数を重ねて、もっと本を読んで、きれいな文章にあたってくれれば、すらすらと書けるようになるのではないかと思います」(藤坂館長)

 藤坂館長は今回の方法を親子のコミュニケーションにも役立つと期待します。

 「親子で1冊の本を読む。それをツールとして、親子の会話が生まれて、子どもがどういうことを考えて、どういうことに興味にを持ったとか、話し合う場になる。宿題とはいえ、親子の深いコミュニケーションが取れるいい機会になるのではないでしょうか」(藤坂館長)

 ネット上では、評判を聞いた人たちから来年の開催を期待する声も上がっています。

▽川口諭美さん 書店員時代に作成した本を紹介する手描きPOPのクオリティの高さが注目を浴び、「POPの達人」などと呼ばれる。Twitterでは「こな・つむり」名義で活動。書店退職後も、新刊書籍のPOPや本の装丁画などを手がける。Twitterアカウント「こな・つむり」(@conatumuribooks)

志段味(しだみ)図書館 愛知県名古屋市守山区深沢1丁目101番地。電話052-736-6907。

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