愛猫を失った悲しみを乗り越え、迎えた黒猫 初めは警戒したが「カンガルー抱っこ」で安心し、今では「頼もしい相棒に」

渡辺 陽 渡辺 陽

猫に必要なのは温もりだった

ヴィトちゃん(2歳・メス)は、栃木県の片田舎で、生後1ヶ月の時に保護された。現場には母猫も兄弟猫もおらず、たった1匹でいたという。

東京都に住む貝瀬さんは、ヴィトちゃんの里親になる前に、福島県のシェルターにいた猫を飼っていた。当時、香港で暮らしていたが、その猫は生後9ヶ月の時、FIPで死んだ。2ヶ月間寝たきりの闘病生活だった。貝瀬さんは、なんとか猫を救いたいと思い、動物病院をはしごして検査や治療をしたという。

「でも、検査や治療ばかりじゃなくて、たくさん抱きしめて温もりを感じながら過ごさせてあげれば良かったと後悔しました。何か他にできることがあったのではないかと罪悪感を感じていました」

どんな性格でも病気があっても構わない

貝瀬さんは、もう猫を引き取っても幸せにできないのではないかと不安に思い、再び猫を飼うのをためらっていた。しかし、保護活動をしている友人に「あなたが引き取らなかったら、助かる命も助からないのではないか」と言われ、貝瀬さんは「(猫を)飼う」というより、「救う」つもりで猫を迎えることにしたという。

そんな時、保護されたのがヴィトちゃんだった。栃木県で保護されたが、すぐに東京で開催される譲渡会に出ることになり、貝瀬さんが話を聞いた時、すでに東京に向かっていた。

「21時頃に東京に着くので、代々木まで行けば譲渡会に出す前に会えるということでした。どんな性格でも、病気があってもよかった。黒猫は人気がないと聞いたので、そんな人間のエゴに猫が振り回されてはいけないとも思い、その黒猫を引き取ることにしました」

頼もしい相棒、でもプライベートも充実させたい

貝瀬さんは代々木のモスクまで駆けつけた。

「初めてヴィトを見た時、あまりにも小さくてびっくりしました。こんなに小さな子を無事に育てられるのかという不安の方が最初は大きかったです。免疫力も体力も十分じゃないし、母猫もいないので精神的な負担も大きく、どうやって育てていこうか毎日考えました」

家に連れて帰ると、ヴィトちゃんは警戒してごはんも食べず水も飲まず、トイレもしなかった。貝瀬さんは安心してもらうためにパーカーのフードのところにヴィトちゃんを入れてカンガルー抱っこして過ごした。

数日経つとヴィトちゃんは安心したようだった。ヴィトちゃんが来てから暮らしが変わった。

「『これは私が我慢しようかな』とか『ヴィトのことを先にやってからでいいや』とか思って、物を壊されても、何をされても『まあ、仕方ない』と考えるようになりました。ヴィトは、飼い主の心を成長させてくれました」

一方、全てをヴィトちゃん中心にすることは、貝瀬さんにとってストレスになると思い、暮らしをスマート化して、少しずつヴィトちゃんに慣れてもらったという。

「たとえば、アプリで操作できる自動給餌器を設置し、エアコンも自動化しました。ヴィトを置いて、1泊2日の旅行に出かけることもできるようになりました」

今では問題や困難を一緒に乗り切る頼もしい相棒なんだという。

「ヴィトは甘えん坊で、可愛い我が子です」

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