「真夜中に中華風豆腐を食べる話」
こんなタイトルでTwitterに公開された午後さん(@_zengo)の漫画が、7万近くのいいねを獲得する人気となっています。
眠りたくても眠れない――。
そして小腹も空いてくる――。
そんな夜は、起きて何か食べたくなるもの。
しかし、深夜に重たいものをドカ食いするのは体に良くない…。食べるか我慢するか、判断に迷うところです。
それに、調理や後片付けに手間がかかってしまうのも悩みどころ。午後さんは、そんな深夜にピッタリの豆腐を使ったお手軽料理を提案しています。紹介したのは、「簡単マーボー豆腐」と「簡単あんかけ豆腐」の2品。
どちらも、ヘルシーで小腹が空いた時にぴったり、使う材料や道具も少なく、電子レンジで簡単にできます。
「簡単マーボー豆腐」は、豆腐に味噌と食べるラー油を混ぜ、電子レンジでチンしてお好みで山椒を振る。
「簡単あんかけ豆腐」は豆腐に白だしと醤油、カニカマにネギ、しょうがチューブを加えてレンジでチン、さらに水溶き片栗粉を回しかけて再加熱。お好みでごま油をかけて。
午後さんは、それらのレシピを公開するばかりでなく、ご自身の調理風景を漫画で描くことでその過程も詳細に紹介しています。その中で、「レンジの加熱中に使わないものは洗っておく」、「スプーンを流しのフチに置いてまた使う」といった、調理や片付けの作業を効率よく進めるためのちょっとしたテクニックも伝授。
料理だけに気を取られているとつい後回しになってしまうもの。こういったポイントに改めて気づかせてくれると、とても助かりますね。
さらに、漫画の内容は料理紹介にとどまりません。
豆腐料理を食べているうち、眠れないほどに張りつめていた神経も落ち着いて、ほっとした午後さん。「いつか本場の中華料理を浴びるほど食べてみたい」と夢を語ります。
食べ終わると、火照った身体を落ち着けるために夜風にあたるべく、ベランダに出ました。周辺の外灯の光が強い都会では、星はほとんど見えません。そんな寂しい夜空を眺めていた午後さん。「死ぬまでに一度でいいから満天の星を見に行きたい」と、ふいに目を閉じ天空に広がる大パノラマを脳裏に思い浮かべます。
部屋に戻ると、愛猫が起きて待ち構えていて、大きな声で「なでろ、なでろ」と催促してきました。
午後さんは少し猫とじゃれ合った後、再びベッドの中へ。猫とともに眠りにつくのでした――。
このように、料理紹介を軸としながら、午後さんの想いや夢、日常の風景なども情感いっぱいに描かれ、午後さんの人間性さえにじみ出るようなエッセイ漫画に仕上がっています。
この漫画を公開したTwitterのリプ欄にも、多くの反響がありました。
「『洗い物は食事の楽しみをジャマしない量がいい』ってほんとにそれしかないですね……」
「ヘルシーだし、美味しそう」
「午後さんの漫画を読むと、自己嫌悪も変な期待もなく等身大の自分になれる感じがします」
「新しいお豆腐レシピありがとうございます……!」
「レシピだけじゃなく片付けのタイミングまで丁寧に描いたかと思えばノスタルジーな表現で飽きずに見れました」
「豆腐のフィルムを活用したり、洗い物が少ないようにスプーンの使い方まで書いてあったり丁寧過ぎて、優しさが染みます」
このように、豆腐料理が美味しそうという声や、調理中のワンポイントアドバイスについて参考になったという声、漫画の作風への感想など、さまざまなコメントが寄せられています。さらに、「長野県の白骨温泉」や「秋田県の男鹿半島」、「宮城県の鬼首(おにこうべ)」など、オススメの星空スポットを紹介する方もいました。
ちなみに、漫画でも中華好きを公言されている午後さん。天津飯が大好きだそうで、「あんかけ豆腐」は天津飯の豆腐バージョンを目指して作られていたそうです。
筆者は思いました。豆腐を卵焼きに替えれば、「カンタン天津飯」もできそう――。
午後さんにお話をうかがいました。
――「マーボー豆腐」に「あんかけ豆腐」、私自身も食事が夜遅くなることが多いのでとても参考になりました。漫画でも詳しい作り方や材料を紹介してくださっていますが、アレンジも楽しめるのではとも思いました。
午後さん:アレンジと呼べるかは疑問ですが、少し味を濃いめに作って、ご飯にかけて食べたりもしています。結構ちゃんとした食事になるので、たまに朝食にしています。
――「浴びるほど中華料理を食べてみたい」というセリフも印象的でした(笑)。
午後さん:もともと、炎の味がする中華料理が好きだったのですが、学生時代にアルバイトをしていた中華屋のメニューがとても美味しくて、そこから中華好きに拍車がかかった気がします。いつもまかないを1.5人前くらい食べていて、社員さんを驚かせていました。
――「天津飯の豆腐バージョン」を目指して作ったというあんかけ豆腐は、アレンジ次第で本物の“カンタン天津飯”にもできそうですね!
午後さん:ご質問をいただいて試しました!ご飯に薄い卵焼きをのせて、豆腐抜きのあんをかけて――。想像以上にちゃんと天津飯になり、大満足でした!!
――おおー、しっかり天津飯になったんですね。ちなみに美味しく作るためのポイントなどはありますか?
午後さん:豆腐抜きであんを作る場合、水の量はだいたい200mlくらいで作ると、とろみがちょうど良い塩梅で作れます。豆腐を入れない以外、あんをつくる手順や分量は漫画の紹介と同じで大丈夫です。また、あんに味がしっかりあるので、卵焼きは塩少々だけの、かなり薄めの味付けで大丈夫でした。
――漫画作品について、リプ欄にあった「自己嫌悪も変な期待もなく等身大の自分になれる感じがします」という感想が印象に残りました。また、これは私個人の感想ですが、今回の漫画では、星空を「叶わなかった想いや遠い願い」、そして料理や猫との暮らしを「現実にある幸せ」と対比しているように思え、どこか切なくも心が温かくなるような不思議な感覚になりました。このような午後さんの作風はどこから来ているのでしょう?
午後さん:難しいですね…好きに描いているだけなので、もし読んだ方が良いふうに何かを感じ取ってくださったのなら、その方との相性が良かったのだなと思います。
――そのような作風にするために、あえて工夫したり心がけたりしていることはないのですか?
午後さん:強いてあげるのであれば、正直に描くことでしょうか。私は正直な性格でフラットに描く傾向があるので、それといただいた「等身大」という言葉は、何かがリンクしている気がします。しかし、ありのまま正直に描くことはエッセイ作品の前提である気もするので――うまく答えられてはいないかもしれませんが。
ーーまいどなニュースでは、以前に午後さん手作りの「リボンで閉じるブックカバー」についても取り上げさせていただきました。料理や工作は、午後さんの中ではどのような意味をもつのでしょうか?
午後さん:単純に好きだからやっている、という要素が大きいですが、もしかすると『自分を守るためのバリア作り』のような意味合いがあるのかもしれません。作ったものはいうなれば自分の分身なので、けして攻撃してくることはなく、それらに囲まれていると安心できるといいますか……料理したものは、食べたらなくなってしまいますけれど(笑)。
◇ ◇
眠れない夜にオススメのカンタン豆腐料理を教えてくれた午後さん。現在、レシピ漫画を集めた単行本、『眠れぬ夜はケーキを焼いて』を2巻まで発売しています。1巻には今回とは別の豆腐料理のレシピも載っているとのこと。
さらに午後さんから「いつも本当にありがとうございます…いくらお礼を伝えても伝えきれないので、これからも、作品を描くことで感謝をお返しをさせてください。今後もよろしくお願いします!」と、メッセージをいただきました。
午後さんのTwitterはこちら
→https://twitter.com/_zengo
『眠れぬ夜はケーキを焼いて』はこちら
【1巻】→https://www.amazon.co.jp/dp/4046800844/ref=emc_b_5_i
【2巻】→https://www.amazon.co.jp/dp/4046805986/ref=emc_b_5_i