「実の息子が先に亡くなっても、どんなに痩せこけても生きる力が衰えることはありませんでした。最後の最後まで生き抜いてくれたその姿から、私は命を教わりました」
亡き愛猫クロちゃんを、そう語るのは飼い主のmidnightexpressさん(@kokoubyara)。
飼い主さんは25年のニャン生を通して「生きること」の重みや大切さを学ばせてくれたクロちゃんを、今でも愛し続けています。
抱っことお散歩が大好きだったクロちゃん
クロちゃんは、元野良猫。誰かにご飯をもらいながら暮らしていましたが、ある日、息子のチビチビくんと共に飼い主さんの家族に保護され、おうちへ。
親子は仲が良く、2匹で寄り添いながら眠ることも。互いを毛づくろいし合う微笑ましい姿に、飼い主さんは母子の絆を強く感じたと言います。
「クロちゃんは抱っこが大好きでした。こちらから降ろさない限り、ずっと抱っこされっぱなし。動かない時は、『クロちゃんのぬいぐるみモード』と呼んでいました」
一方で、アクティブな一面もあり、同居猫のにけちーちゃんに飛びかかられた際は、後からきっちりと反撃。
おもちゃで遊ぶことや、リードを着けてのお散歩も大好きでした。
「外に出ると、元気よく走っていた姿が、とてもかわいかったです。怖がりなので、人や車が通ると、猛ダッシュで家まで駆けこんでいました」
24歳になってもオムツ姿でお散歩
しかし、15歳の頃、腎不全を患い、治療が必要に。最初は通院して皮下点滴をしていましたが、怖がりのクロちゃんにとっては通院がストレスに。そこで、飼い主さんは自宅で皮下点滴を行うようになりました。
「特段の食事療法はしていませんでしたが、ウェットフードをあげる際にスプーン2~3杯水を足して、水分を多めにとってもらうようにしていました。週2回の点滴を頑張り続けてくれ、腎数値は亡くなるまで一定数値以上悪化しませんでした」
ところが、新たな悲劇が。クロちゃんが22歳となった2019年、息子のチビチビくんが19歳で天国へ旅立ってしまったのです。
これにより、クロちゃんと飼い主さん家族は大きな悲しみを味わうことに。しかし、数カ月後に生後1カ月のもくちゃんをお迎えしたことを機に、心の傷は徐々に和らいでいきました。
「クロちゃんは孫と接するような態度で、もくちゃんの相手をしてくれました。もしかしたら、チビチビのことを思い出し、お世話している感覚だったのかもしれません」
しかし、この頃からクロちゃんの体には、加齢による変化が。トイレ以外でも排泄し、音に敏感に反応するようになりました。そこで、飼い主さんは部屋中にペットシーツを敷いて対処したり、足音を立てずに歩く、扉や引き出しの開閉を静かにしたりするなどし、配慮。
それまで食事はストレスを与えないよう、食べすぎに気をつけつつ、好きな時にご飯を食べられるようにしていましたが、認知症が見られるようになってから1日4回、時間を決めてご飯をあげるように。
「ただ、複数回のおやつタイムを設け、食に満足してもらえるようにしました。自分で上手く食べられなくなってきたので、付きっきりで体や顔を支え、ご飯は食器の真ん中に寄せて食べやすくしていました」
愛情深いケアのおかげか、クロちゃんは24歳になってもオムツ姿でお散歩をするほど元気。長い時には1時間以上、お散歩を満喫することもありました。
「クロちゃんはブラッシングも大好きでした。毎日、何度もブラシをせがむので、最低でも1日1回はブラッシングし、できるだけおねだりに応えていました。毛ヅヤの状態やクロちゃんのおねだり具合で体調の良しあしが何となく分かるし、ストレス軽減にも役立っていたと思います。何より、クロちゃんが喜んでくれるので嬉しかったです」
こうして2022年2月、クロちゃんは25歳に。
飼い主さんのSNSには、多くのお祝いの言葉が寄せられました。
家族の隣で穏やかに永眠
ところが、2022年4月。クロちゃんは突然、吐血し、ほぼ寝たきりの状態に。病院で検査をすると、新しい血がうまく作れていないことが判明しました。
なんとか元気になってほしいと思った飼い主さん家族は通院治療をしながら、体調管理を徹底。
「体温がすぐに下がるので、常に湯たんぽやホットカーペットで体を温めました。それまで毎日3食しっかり食べていたのに、自分から食べることもほぼなくなったので、強制給餌で何とか体力を維持していました」
すると、自力でご飯を食べられるまでに回復。
しかし、やがて再び食欲が落ち、自力で体を動かすことも困難に。
「水をほんの少し、シリンジで口の中に入れて飲むくらい。でも、名前を呼ぶと耳をピクリと動かしたり、手を握るとグッと握り返したりしてくれていました」
ところが、4月30日の朝。にけちーちゃんを連れて動物病院から帰宅した飼い主さんは、お母さんの隣で眠るように亡くなっているクロちゃんの姿を目にしました。
「動物病院に行く時、声をかけたら耳が反応していたのに…。でも、特に苦しんだ様子はなく、私が最後に声をかけた時と同じような穏やかな表情でした」
25年という長い時間、家族であり続けてくれたクロちゃんは飼い主さんにとって、人生の約半分を共に過ごしてくれた大切な家族。
「ご長寿となったのは私の母が毎日、付きっきりでお世話をしていたことも大きかったと思います。我が子のような存在ですが、25歳まで生きてくれた、その生命力の強さを尊敬しています」
そう語る飼い主さんが思う長寿の秘訣は、猫目線に立った細やかな健康管理でストレスを減らすこと。
「人間の都合に合わせてではなく、猫がかまってほしい時にふれあう時間を毎日持つことも大事だと思います。ブラッシングやスキンシップも、その子の性格に合わせて。たくさん話しかける、いっぱい名前を呼んであげる、何もしていなくても褒めてあげることもストレス軽減につながるような気がします」
また、同じ猫飼いさんには少しでも気になることや様子が違うことがあれば、病院へ行ってほしいとアドバイス。
「クロちゃんは17歳頃から3カ月に1回、健康診断を受けていました。こうした定期健診はもちろん、食事の量やトイレ時の様子など少しでも様子が違うことがあれば、病院へ行くことも病気の早期発見に繋がると思います」
そんな心構えを持ち続けながら、にけちーちゃんやもくちゃんのニャン生も温かく見守り、サポートする飼い主さん。その優しい姿を、天国のクロちゃんは笑顔で見ていそうです。