自然災害における被害を最小限にとどめるためには、みなさんの災害に対する知識や日頃の心構えが重要になります。日本損害保険協会関東支部が、「ハザードマップ等に関する住民意識調査」を実施したところ、約3割の人が「自宅周辺のハザードマップを見たことがない」と回答しました。また、ハザードマップを見たことがない理由については、約4割の人が「どこで見ればいいかわからない」と回答したそうです。
2021年12月に茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・山梨県・長野県に居住している4011人を対象として実施された調査です。
はじめに、「ハザードマップの認知」について聞いたところ、「自宅周辺」では「ハザードマップを見たことがあり、被害リスクを認識している」(41.5%)、「ハザードマップは見たことはあるが、被害リスクまでは認識していない」(27.9%)を合わせると69.4%の人が「ハザードマップを見たことがある」と回答しました。また、「ハザードマップは見たことはない」(21.8%)、「ハザードマップの存在を知らない」(8.8%)を合わせると30.6%の人が「ハザードマップを見たことがない」と回答したといいます。
一方、「別居の家族の自宅」や「勤務先等(日中過ごす地域)」では、「ハザードマップを見たことがあり、被害リスクを認識している」(16.9%・17.4%)、「ハザードマップは見たことはあるが、被害リスクまでは認識していない」(16.2%・14.6%)となり、「自宅周辺」に比べて大幅に低い結果となりました。また、「ハザードマップは見たことはない」(38.0%・33.5%)、「ハザードマップの存在を知らない」(いずれも8.8%)を合わせると、「別居の家族の自宅」では46.8%の人が、「勤務先等」では42.3%の人が「ハザードマップを見たことがない」と回答したそうです。
続いて、「ハザードマップを見たことがない理由」を聞いたところ、「どこで見ればいいか分からない」(39.5%)、「災害発生のおそれが高まったときにハザードマップを見ようと思っているから」(26.9%)、「関心がないから」(22.5%)と続きました。さらに、「ハザードマップを見たことはあるが、被害リスクまでは認識していない理由」を聞いたところ、「ハザードマップの情報量が多すぎる」(30.0%)、「自分の地域は安全だと思うから」(29.7%)、「ハザードマップを見たことはあるが、内容は忘れてしまった」(28.6%)といった回答が続きました。
自治体から「高齢者等避難」「避難指示」が発令された場合の行動については、46.7%が「自治体指定の避難所に避難する」と回答しました。この回答は、ハザードマップの認知度に比例しており、「ハザードマップにより被害リスクを認識している」と回答した人では55.8%となっているのに対して、「ハザードマップの存在を知らない」と回答した人では21.6%まで下がっており、「わからない」と回答した人が50.3%となっていたそうです。
また、「自治体が指定した避難所に避難しない」理由としては、男性が「自宅や車中泊の方が安全」(33.0%)、「避難所に移動するまでの間が危険」(30.5%)、「プライバシーの確保が不安」(26.4%)という回答が上位になったのに対し、女性は「プライバシーの確保が不安」(33.2%)、「衛生面が不安」(31.1%)、「新型コロナウイルスなどの感染症が怖い」(30.8%)が上位になっていたそうです。
自治体から「避難指示」などが出たにもかかわらず、結果的に大きな被害が発生しない「空振り」については、48.2%が「何度空振りになっても構わない」、19.7%が「1年に2,3回程度なら空振りになってもよい」と回答しました。
最後に、「地域コミュニティの活性化が防災や減災に繋がると思いますか」と聞いたところ、65.6%の人が「思う」と回答しました。これを被災経験の有無でみると、「被災経験あり」(74.5%)と、「被災経験なし」(61.3%)となり、被災経験の有無で10%以上の差があったそうです。
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調査を行った同協会は、「防災意識には住民によって大きな差があり、ハザードマップの理解や周知にも課題があることがわかりました。防災・減災力強化のためには、住民一人ひとりや地域コミュニティが主体的にかかわることが大切ですが、自治体等が自助・共助の強化に向けた改善やバックアップをする必要性も考えられます」と述べています。