「就労支援事業所のカフェに入ったけど、とても美味しいコーヒーがクッキー付きで300円だった。安すぎだよ。良いもの提供してるんだから喫茶店と同じ値段でいいのに。障がい者の賃金が安いのは軽作業だからとか年金前提にしてるからとかあるかもしれんが、売り物は別の話やん。なぜ安く売る？」とツイートしたのは、雪見うどんさん（@BigUdonGIRLS）。雪見うどんさんに取材したところ、「美味しいコーヒーに手作りのクッキーが２枚ついていて、のんびりしている感じが居心地良かったです。でも、なぜ300円と安価なのか理解できませんでした」と言う。なぜ300円という値段設定なのか、実際にこのカフェを運営している団体にお勤めのリエリンゴさん（@soratobi82）に話を聞きました。
ーー利益を出してはいけないという決まりがあるのでしょうか。
「いえ、そういうわけではないのですが、就労支援事業所には就労支援事業所A型とB型がありまして、A型の利用者さんは事業所と雇用契約を結んでいます。そのため一定の収入を得ることを目的に働いているのですが、B型の利用者さんは、障害の程度が重く働くことが難しいため、雇用契約を結べないのです。そのため、賃金ではなく工賃をお支払いしています。工賃の規定は事業所によって違いますが、厚生労働省が発表した令和2年度のB型の工賃は月額15776円（時給222円）、A型の賃金は79625円（時給899円）です」
ーー実際にカフェでコーヒーやお菓子を提供したり、モーニングやランチを提供しているのですよね。
「そうなのですが、就労支援事業所B型で働く理由は収入を得ることにあるのではなく、生活リズムを整えるとか日常的に活動する場を設けるとか、もう少し頑張ったらA型で働けるくらいの能力を身に付ける場であるのです。健常者なら1人でできることでも、3人とか5人とか複数の障がい者が関わらないとできないのですが、スピードや効率を求めてはいません」
ーーそうなんですね。300円という値段設定で採算は取れますか。
「はい、なんとか頑張っています。これでも昔、コーヒー200円だったところを値上げしたんです」
ーーただ、お客さんのお財布には優しいですね。
「近所のおばあちゃんが一生懸命歩いてきて、コーヒーを一杯飲んで利用者さんとお話して笑顔で帰っていく…そのおばあちゃんが安くて居心地よくていい喫茶店あるよ、とお知り合いに紹介してまた来てくれる、それでもいいのかな、と思っています。いつでも誰にでも気軽に来てもらえるように、高い値段はこれからも設定しないと思います。モーニングは500円でお出ししていますが、これはモーニング文化の根付いた名古屋では普通の値段です」
ーー事情を知らない人から「差別だ」というリプライもあったようですね。
「そうです。でも、B型の利用目的を理解していただければ、そんなことはないと分かっていただけるはずです。ここは働いて賃金をもらうことを目的にしている場所ではないのです。これからも地域の人に愛されるカフェでありたいと考えています」
雪見うどんさんのツイートには、
「ウチの地域ではカフェじゃ無くてパンやクッキー、お弁当やおにぎり等の物販ですが普通価格です。ただ、だいたい店舗は無くて、市役所や病院のロビーで事業所を入れ替えて定期販売しています。それにしてもきっと一人で稼いで生活するには程遠いのだろうなと。障がい者の店＝安くて当然→偏見や無理解。無くなって欲しいです」
「わかる！ほんと、本当にそう思う！せめて、と思ってかなりの量を買う（ジャムとか日持ちするものがあった場合）けどほんそれ！」
「私の職場に持ち込み販売される施設は逆にちょっとお高めです。実際美味しいし、他で買えないものなのでそれでもお見えになられたら購入してはおやつに食べてます。クオリティ的にも人件費はもちろん、原価・設備費とかも含めて価格設定されてるのかな？あまりお安くするのは問題ですよね」
という声が寄せられていました。
リエリンゴさんは、「お年寄りが多いお店なのでいつでも気軽に来て頂けるよう安くしてる、というのもあります。常連さんと利用者さんのやり取り、サイコーです！あと職員がお金を搾取してるとかは本当になくて、利用者さんたちの終の棲家を作りたい想いもあり、一生懸命貯めてます。職員の給料、やっすいです！笑」とツイートしています。
A型の賃金やB型の工賃については適正な運用が求められますが、リエリンゴさんによると、「重い障がいを持つお子さんを抱える保護者の方にとって心配なのは、保護者の方が亡き後、我が子がどう生きていくのかということ」だと言います。毎日生き生きと働くことや安心して暮らせる場所がとても大事なことなんですね。
