「宝石のはずなのに、どう見てもネギにしか見えない…」
国立科学博物館(東京都台東区)で開催中の特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」に出展されたトルマリンが「ネギにしか見えない」とTwitter上で大きな注目を集めている。
棒状に白から緑へと移り変わるグラデーション…たしかに見る人はこれが白ネギかトルマリンか理解不能に陥ってしまうはずだ。注目のきっかけになったひきこうもりさん(@Hikikomori_)の投稿に対し、SNSユーザー達からは
「はんぺんに乗ったネギ」
「実はネギ説まだ信じてる人自分以外にもいるはず」
「台湾には豚の角煮と白菜の彫刻が博物館に展示されてますね どちらも彫刻品ではありますが、角煮は色を染めたけど層は天然のもの 白菜は彫刻だけど色は天然のヒスイそのままらしいです」
など数々の驚嘆の声が寄せられている。
このトルマリンを所蔵している神奈川県立生命の星・地球博物館(神奈川県小田原市)で岩石を研究している学芸員の山下浩之さんにお話を聞いた。
ーーこのトルマリンの中央部はなぜこのような色味を帯びているのでしょうか?
山下:トルマリンに微量に含まれる元素によって色が付きます。緑色は「鉄(Fe)」を含むためと言われています。なので、白色部はあまり金属元素を含まず、上部の緑色の部分に鉄が含まれているということですかね。
ーーこのような状態のトルマリンは珍しいのでしょうか?
山下:1つの結晶の中で色が変わってくることはよくあります。今回は白色から緑色に絶妙に変わっているのでレアだったと思われます。今回の科博の宝石展でもう一点出品しているトルマリンは緑から白、赤に変化します。
ーーこれまでにも「ネギみたい」という指摘はあったのでしょうか?
山下:「ネギみたい」という表現は、2020年に開催した「ゴンドワナ」展でこの石を出展した際に、当時の広報担当がこの表現でツイートしたところバズりました。芸能人のおぎやはぎさんらが出演している、「ぶらぶら美術・博物館」でもネギと紹介されています。
なお、この標本は特別展示で3回くらい展示していますが、学芸員としては「ネギ」はいかがとためらいがありました。
ーーそのあたり複雑なところですね…。このトルマリンは貸出期間以外は神奈川県立生命の星・地球博物館で常時展示されているのでしょうか?
山下:展示していません。
ーー今回のSNSの反響へのご感想をお聞かせください。
山下:2度目のバズりなので、正直「またか」という感じです。そもそも当館主催の特展ではないので複雑な心境なのと、今回の科博の特別展は高価な宝石をメインにしているので、それを差し置いて「ネギ」というのは…やはり複雑です。
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「宝石 地球がうみだすキセキ」は国立科学博物館で6月19日まで開催中。ぜひ多くの方に自然がおりなすこの神秘の目撃者になっていただきたい。
【特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」】
▽ホームページ
https://hoseki-ten.jp/
【神奈川県立生命の星・地球博物館】
▽所在地
神奈川県小田原市入生田499
▽ホームページ
https://nh.kanagawa-museum.jp/
※改修工事のため3月15日(予定)まで休館中