「盗まれるほど人気な当駅のトイレットペーパー」「あまりにご好評なので販売することとなりました」。道の駅あわじ(兵庫県淡路市)がトイレに掲げた貼り紙が話題を集めています。焼き昆布(@Wwmajidesorena)さんが貼り紙の写真をTwitterに投稿すると、「皮肉が効いてて好き」「この思い、犯人に届くといいね」と反響を呼び、複数のネットニュースで取り上げられました。道の駅あわじに聞くと、「実はトイレットペーパー販売のアイデア、他の道の駅からパクらせていただいたものなんです…」。どういうことでしょう?取材を進めると、盗難に困った全国各地の道の駅で、貼り紙のアイデアが連綿と受け継がれてきたことが分かりました。
ポスターのユーモアに潜む盗っ人への怒り
投稿した焼き昆布さんに貼り紙を見た時の印象について、「最初はユーモアがあるなと笑いましたが、ヒシヒシと怒りとか困ってるとかそんな感じが伝わってくるなと思いました」と振り返ります。
確かに笑えるようで、盗っ人に対する「お前ええ加減にせえよ」という怒りが潜んでいるような気がします。
熊本のポスターをパクらせていただきました
ポスターを作った道の駅あわじ企画・広報課の関可菜さん(36)に聞きました。
ーーポスターがTwitterで話題になっています。かなり被害があったんですか?
関さん「コロナ禍でトイレットペーパーが品薄になったころはひどくって、『盗むのは犯罪です』『警察に通報します』というような厳しいメッセージの貼り紙をしていたのですが、一向に被害はなくなりませんでした。そんな折、熊本の道の駅水辺プラザかもと(熊本県山鹿市)さんが『盗まれるほど大人気!』というトイレットペーパーのポスターを貼り出していたことをネットニュースで知って、パクらせていただきました(笑)」
熊本の道の駅「うちも茨城の道の駅から拝借したアイデアで…」
なんと、熊本の道の駅水辺プラザかもとが元ネタだったとは。道の駅水辺プラザかもとに聞くと、「道の駅あわじさんから『アイデアを盗ませてもらってすみません』と連絡が来たんですが、うちもヨソ様のアイデアを拝借したので…」と申し訳なさそう。聞けば、茨城の道の駅かつら(茨城県城里町)のポスターがネットで話題になっているのを知って、取り入れたのだとか。さらに元ネタがあるとは…!
茨城の道の駅「テレビで紹介された対策を参考に」
一体どこまでたどればいいのか。道の駅かつらに聞くと、2020年秋ごろ「☆大好評販売中☆」と題したポスターを貼り出していたことが分かりました。道の駅かつらは「テレビで紹介されていたある商業施設の対策を真似たものです」と説明します。
時系列を整理すると、以下のようになります。
2020年秋 道の駅かつら(茨城)でトイレットペーパー販売のポスターがネットで話題になる
2020年秋 道の駅水辺プラザかもと(熊本)がウワサを聞きつけ、同様のポスターを掲示→2021年6月にネットニュースになる
2021年6月 道の駅あわじ(兵庫)がネットで水辺プラザかもとの話題を知り、ポスター掲示→2022年2月にネットニュースになる
こうやって見ると、トイレットペーパー販売のポスターは定期的にネットニュースになり、話題を集めてきたようです。
盗まれるほど大人気ポスター、果たして効果は?
盗まれるほど大人気のポスター、果たして効果がいかがなものでしょうか?
ポスターを導入した「初代」と言える道の駅かつらでは、あまり被害抑止につながらず、数カ月でポスターを外したといいます。2代目の道の駅水辺プラザかもとでは、その後、屋内トイレでの被害がほぼなくなり、「効果はあったと思います」と支配人は手応えを示します。3代目の道の駅あわじでは「被害はやや、落ち着いたかな」と広報担当の関さん。施設によってバラつきはありますが、効果がないわけではないようです。
販売するトイレットペーパーに感謝のメッセージ
ネットで話題になったこともあり、道の駅あわじでは、50円で販売するトイレットペーパーに感謝のメッセージを添えることを決めました。
「トイレにある看板を見てお声がけ頂いたことと思います。九州にある道の駅さんのユーモアあふれる看板アイデアを拝見し、真似させていただいたものです」
「そのまま持ち帰ることもできたのに、こうしてご購入頂きましたこと、社員一同感謝の気持ちでいっぱいです」
◇ ◇
ポスターを真似する道の駅が絶えないのは、それだけトイレットペーパーの被害に悩まされる施設が多いということ。道の駅あわじの関さんは「どんどん他の道の駅さんにも(アイデアを)パクっていただいて、盗難被害が減ってほしいです」と話していました。