寅(とら)年を迎え、京都国立博物館(京都市東山区)の公式キャラクター「トラりん」に注目が集まっている。旺盛なサービス精神やSNS(会員制交流サイト)での易しい美術ガイドなど、お堅いイメージの博物館では異彩を放つ親しみやすさだ。トラりんのモチーフとなった尾形光琳の「竹虎図」を含む特集展示も開催中で、「トラりん年を盛り上げるリン!」と意気込んでいる。
トラりんは、江戸期の絵画の一流派である琳派400年を記念し、2015年に誕生した。本名は「虎形 琳丿丞(こがた りんのじょう)」で、尾形光琳の幼名「市之丞」から拝借したという。翌年には全国の博物館マスコットキャラクターの人気投票「ミュージアムキャラクターアワード2016」で、他のキャラに大差をつけて1位に輝いた。ぬいぐるみやトートバッグ、スマホスタンドなど関連グッズは約40種類に上る。
トラりんは京都国立博物館のPR大使を務め、なかなか多忙だ。2万5千以上のフォロワーがいるツイッターは毎日更新している。展示の告知のほか、掃除をしたり、こたつに入ったりと日常の様子をつぶやき、1万2千以上の「いいね」が付いたことも。モデルのように決めポーズは多彩だ。
公式ブログの「虎ブログ」は、日本美術を勉強中のトラりんが素朴な疑問や感想を伝え、研究員が答えるといった軽妙なスタイル。日本美術に親しみのない人にも共感してもらうのが狙いという。水墨画の「竹虎図」をはじめ、日本や東アジアのトラ関連の作品を集めた新春特集展示「寅づくし―干支(えと)を愛(め)でる」(13日まで開催)の魅力も分かりやすく伝えている。
土・日曜と祝日には1日3回(午前11時、午後2時、午後4時)、トラりんと来館者との交流の場を設けている。総務課事業推進係の沖田祐子さんは「幅広い年齢層に人気で、トラりん目当てに来る人もいる」と話す。
コロナ禍に伴い、トラりんもマスク姿で、柵越しにミニゲームをしたり、写真撮影をしたり。「おともだちとハグや握手ができないし、マスクでお顔を忘れられちゃう」とトラりんは心配するが、ジェスチャーを交え、持ち前の愛嬌(あいきょう)で来館者を楽しませている。
新年となり、ブログで「『虎』年きたああああ!!!(歓喜)」と、快哉(かいさい)を叫んだトラりん。年賀状も例年より多い約500枚が届いた。沖田さんは「堅いイメージがある日本美術に親しむきっかけになれば。寅年に合わせていろいろな企画を打ち出したい」と語り、トラりんも「SNSを頑張りたいし、出張にも行けたらいいな☆」と、博物館と自身のさらなるPRを目指している。