今冬、京都府と滋賀県は何度も大雪に見舞われ、車の立ち往生が相次いでいる。1月には、京都市でも、夏用タイヤで走行不能になった車が原因で道路が通行止めになったケースがあった。雪道を夏用タイヤで走行して立ち往生した場合、どのようなペナルティーがあるのだろうか。
滋賀県北部が大雪になった昨年12月27日、彦根市では積雪73センチを記録し、国道8号で大規模な立ち往生が発生した。今年1月21日は、京都市で積雪14センチとなり、左京区の通称「狐坂」と呼ばれる坂道で数台が走行不能に。中には夏用タイヤの車もあったという。
では、雪道を夏用タイヤで走ることは違反になるのか。道路交通法には、都道府県公安委員会の遵守(じゅんしゅ)事項があり、「積雪・凍結路を運転する場合、滑り止めとして冬用タイヤやチェーンなどを装着」するよう求めている。つまり、夏用タイヤでの雪道走行は道交法違反になる。
ところが、警察は夏用タイヤで雪道を走る車を見つけても、「危険だからチェーン装着を」「この先は進めないので引き返して」といった指導、警告にとどめることが多い。「狐坂」の立ち往生でも、同違反の適用はなかった。京都府警は「信号無視や飲酒運転などと異なり、雪は急に積もるなど予想できず、故意犯でない場合がある」と説明する。
ただ、夏用タイヤで雪道を走行して、事故を起こしたり、立ち往生して渋滞や通行止めを発生させたりすると、悪質なケースでは同違反が適用されることがある。大・中型車は7千円、普通車は6千円の反則金となるという。
貨物や旅客を運送する事業者に対して行政処分を行うこともあり得る。国交省近畿運輸局によると、立ち往生の原因になったトラックやバス、タクシーが、夏用タイヤや使い古した冬用タイヤだった場合、警告や車両使用停止の行政処分の可能性があるという。
とはいえ、近年こうした処分の実績は、近畿運輸局の管内ではない。「大雪による交通障害時は、除雪と復旧を最優先にするため、原因車両のタイヤ装着状況の調査は手が回りにくい」(同局)という。
立ち往生して動けなくなった車は、災害対策基本法に基づき、道路管理者が強制撤去することもある。近畿地方整備局によると、2021年1月、大雪になった福井県で、運転者が不在の車を撤去したことがある。除雪や復旧の妨げにならないよう、近くの路肩が広い場所などに動かし、運転者への費用請求などはないという。
雪道を走行する際の注意点は何か。夏用タイヤでの走行はもちろん危険だが、日本自動車連盟(JAF)京都支部は「冬用タイヤを装着した車でも、京都ではスリップ事故が起きた。降雪時はなるべく運転を控えて」とした上で▽スタッドレスタイヤやチェーンを必ず装着▽急な路線変更、急ブレーキは厳禁▽先行車との車間距離を広めにとる▽発進時はアクセルをじわりと踏み込み、ゆっくり発進する―を注意点に挙げる。
京都や彦根の地方気象台によると、今週末は再び強い寒気が流入し、滋賀県北部を中心に大雪となり、京都市などでも雪が降る見通しという。