「もはや木にしか見えない…」その技法に驚き!メトロポリタン美術館にも収蔵される作家の作品

沢田 眉香子 沢田 眉香子

「この〜木なんの木‥‥」。ギャラリーでワイルドな枝振りを伸ばす木。盆栽か、流木のアートかと思いきや、本当の木じゃなくて、なんと陶芸作品なんです。

いやいや、ご冗談を、とじっと見つめてみれば、皮のめくれた白樺、ガサガサに朽ちた樹皮の質感、そして乾いた苔‥‥ますます木にしか見えなくなって、沼る。山にあったら絶対見過ごす迫真のそっくりぶり。作者はアメリカのエリック・セリテラ さん(1963―)。作品はメトロポリタン美術館などに収蔵されて、高い評価を受けているアーティストだ。

作品はろくろ、手びねりで大まかな形を形成。白樺の樹皮は白い粘土と化粧土で、松の木の皮は赤土で風合いを似せ、彫刻刀、カッティングナイフで細部や表面を彫り込んでいく。色は顔料や酸化物などで出すが、茶色だけでも数種類使いわける細やかさ。苔むした緑の部分も、上から絵の具で描いたのではなく、釉薬を焼き付けて仕上げている。かなり精巧な陶芸の手法が駆使されているのだ。

感心しきりだが、よーく見ると枝や葉脈が、自然の木には絶対ないような向きに伸びていて、不思議な感じもある。まるでトリックアートだ。

セリテラさんによると、この一連の作品には、日本の「侘び寂び」の美学が込められていて、やきものの耐久性と自然環境の強さのイメージも、重ね合わせているそう。

そんな哲学的なコンセプトもある作品は、「びっくり」のなかに、どこか生物の神秘や、人間の想像力の中の怪奇的なイメージも感じさせてくれる。「びっくり」ののちに、じわじわくる深みもたっぷり。ぜひ一見あれ!

現代美術 艸居(そうきょ)
開催期間:2月26日まで(日月休)
住所:京都市東山区古門前通縄手東入ル元町381-2
電話:075-746-4456
www.gallery-sokyo.jp

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