サッカー元スペイン代表アンドレス・イニエスタ(37)の妻、アンナ・オルティスさん(34)が、高機能ウールのアパレルブランド「Super Wool by Anna Ortiz」を立ち上げた。日本のウールメーカーとコラボレーションし、1年を通じて着られるホームウェアをデザインした。イニエスタも試着し、着心地にこだわったという。スペインの名門クラブ、バルセロナからヴィッセル神戸へ移籍した夫とともに2018年に来日して3年。4人の子どもを育てながら、日本でブランドを立ち上げた経緯、そしてウールへのこだわりをアンナさんに聞いた。(聞き手・伊藤大介)
海と山がある神戸、バルセロナと似ている
――スペインから来日して3年。日本の生活はいかがですか?
「文化が大分違うので、慣れるのに時間はかかったけど、夫も子どもたちもとても幸せな生活を送っています。バルセロナと神戸は似ていて、海があって山もあって、慣れるのに役立ちました。一番違うのは文化です。性格などはスペインと真逆くらい違いますね。でも日本のいいところもあるので、そこは学んで、日本に早く慣れる必要があると思いました。日本料理は好きですよ。味付けはスペイン料理と全然違いますけどね(笑)。好きな日本料理はいろいろありますけど、一つ選ぶなら刺身です。魚料理が好きなんです。私は野菜も大好きなので、野菜をふんだんに使っているところも、日本料理が好きなところです。ただ、日本の冬は慣れませんね。寒すぎます(笑)」
――お気に入りの場所はできましたか?
「一つには決められませんけど、海が好きなので、海の近くを散歩したり、景色を見ながら歩いたりしています。商店街や中心街はいつも新しい発見があり、気に入っています」
大変なこと、家族で乗り越える
――Instagramでは夫婦でカフェにくつろいだり、家族でハロウィンを楽んだりしています。異国でも夫婦仲がいい秘訣はありますか?
「出身地から離れ、親族と離れても、夫はサッカーでうまくいっているし、子どもたちは学校で楽しく過ごしています。大変なことがあっても一緒に乗り越えること秘訣というか、鍵なのではないかと思います。すべていい経験、と考えます。夫婦として、家族として、すべて成長できる経験になる、と。この経験を通じてたくさん学び、成長できますから」
――新型コロナウイルス感染症の流行でスペインと行き来できず、母国が恋しくありませんか?
「2年くらいスペインに帰れず、親戚も日本に来られない状態で、それは大変でした。でも全世界が特別な状況なので、仕方ないことだと思っています。できるだけ早く感染状況が収まって、ノーマルな状況に戻ってほしいですね」
高機能ウール、私に合う
――2021年6月、ウールのアパレルブランド「Super Wool by Anna Ortiz」を立ち上げられました。ブランド設立の経緯を教えてください。
「子どものころからファッションの世界に興味があって、ファッションに関わってきました。日本のトーア紡コーポレーション(大阪市)さんに提案してもらった高機能ウールが(私に)合うと感じ、天然繊維のブランドを立ち上げることになりました。クオリティにとても満足しています。ブランドを成長させていきたいと思っています」
トーア紡は国内で高機能ウールを紡績から加工、織りまで一貫生産する老舗ウールメーカー。2022年の創業100年を控え、世界的なサッカー選手、イニエスタの妻との協業が決まりました。アンナさんはキャミソールをタイトなシルエットにするなどレディースのデザインにこだわり、イニエスタはメンズを試着し、着心地を伝えたそうです。
パジャマを超える着心地を。真夏も快適に
――ウールは秋冬物というイメージがありますが、スーパーウールではキャミソールやTシャツなどアンダーウェアにもなっています。
「おっしゃる通りウールと言えば、冬のイメージがありますが、ウールの糸や種類によって、オールシーズン着られる服になります。日本の工場で生産されるトーア紡の製品はとても質が高く、冬物も夏物も作ることができます。高品質のウールには冬は暖かく、夏涼しい特長があって、最初のコレクションはオールシーズン着られる服になりました。キャミソールやTシャツは、ホームウェアのコンセプトで、快適でおしゃれ。様々な状況で着回すことができ、パジャマを超える着心地のものを作りたかったんです」
――蒸し暑い日本の夏でも着られるのでしょうか?
「もちろんです。通気性、放湿性はこのウールの特長ですから。夏でもとても使いやすいんです。高品質なウールは素肌に着てもチクチクしません」
――商品を手に取る機会はあるのでしょうか?
「オンラインショップがありますが、実際に触れられる機会が必要だと思い、大丸神戸店、大丸梅田店でポップアップストアを出店しました。今後、関西以外でも予定しています」
夫と意見交換、ともに成長できる
――夫のイニエスタが手掛けるスニーカーブランド「ミカクス」にも関わっています。
「ミカクスは夫が知り合いと立ち上げたプレミアムスニーカーブランドで、私はデザインに携わり、イニエスタとともにイメージにも関わっています。スニーカー業界で成功するのは簡単ではありませんが、発足時から楽しみにしていたプロジェクトです。これから全世界へ展開していきたいと思っています」
――アッパーからソールまでデザインされるんですか?
「そうです。アッパーからソールまで、すべてのプロセスに携わっています。スペインとイタリアのデザイナーと話して、スペインのチームがヨーロッパの工場を回ったりしています」
「スニーカーのトレンドはどんどん変わっているので、チームでヨーロッパ各国からいろいろなトレンドを探しています。全世界の幅広い人をターゲットにしたいと思っているので、パリやミラノのフェアに参加したり、新しいトレンドからコンセプトを生み出したりしたいですね。(アンナさんの中に新しいデザイン案はある?)それは秘密です(笑)」
――デザインやイメージについて夫と意見の相違があった場合、シリアスな雰囲気にはなりませんか?
「それぞれの意見があるのはとてもいいこと。意見を交換することで成長できると思う。(夫婦)2人とも仕事に対して真面目な考え方があるので、とてもスムーズに仕事ができています」
――スペインで本を出版して、日本での生活についても触れられているそうですね。
「幼少期からつづっていますが、一番書きたかったのは、これまでの人生で最も大きい経験だった、日本へ来たこと。当時は3人(現在4人)だった子どもたちを連れて日本へ来たプロセスや経験を紹介したかったんです。快適なゾーンから、新しい全く知らない文化の国へやって来ました。来てみたら日本の人たちはとても優しく受け入れてくれました。子どもたちも学校で楽しく過ごし、アンドレスも日本でプレーできて幸せです。日本に感謝していることも伝えたかったですね」
――バルセロナという慣れ親しんだ土地から日本へ来て、どんなことを得たのでしょうか。
「経験を子どもたちにプレゼントできました。新しい文化と言語を学ぶことは将来きっと宝物になります」
――SNSで化粧品を紹介されることがありますですが、どのようなコンテンツを発信していきますか?
「コスメやスキンケアはとても大事にしています。日本は男性も女性もスキンケアにこだわっていると気付き、発信を始めました。将来はアンドレスにも関わってほしいと思っています」
ーーイニエスタもスキンケアには気を遣っていますか?
「毎日ではありませんが、クリームを使ったりして、スキンケアを大事にしています(笑)」
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コロナ禍での異国生活をポジティブに楽しんでいるアンナさん。アンナさんがこだわった高品質なスーパーウールの製品は、ブランドサイトで購入できます。