保護した猫は妊婦だった
むぎちゃん(5歳・オス)は、野良猫がみごもっていた子猫だった。母猫は島根県のとある民家の近くに突然来るようになり、住人の夫妻が保護したのだが、お腹の中に5匹の子猫を身ごもっていた。その1匹がむぎちゃんだった。
「当時、保護主さんは他にも5匹の保護猫と家猫2匹を飼っていたので、引き取ってくれる人がいなかったらどうしようという不安もあったそうですが、思いきって保護して出産させてみたそうです。はじめての出産立ち会いと子育てが経験できて幸せだったと話されていました」
大きくてかわいい
広島県に住む中村さんは、幼い頃から家で猫を飼っていて猫が好きだったので、時折ネコジルシという譲渡サイトを見ていた。里親を探している猫がたくさんいて、「家族として迎えたい」という気持ちが強くなっていったという。
「子猫は比較的人気がありますし、わたしは一人暮らしなので、落ち着いた大人猫やなかなかおうちの見つからない子の中から引き取りたいと思い探しました」
中村さんは、初めてむぎちゃんを写真で見た時、「大きくてかわいい!」と思った。むぎちゃんは2歳になっていた。里親になることを希望すると、2018年4月、保護主の夫妻が車で3時間かけて連れてきてくれたという。むぎちゃんはキャリーケースの中で怯えていたが、玄関に置かれたむぎちゃんを見て、中村さんは思わず「可愛い」という言葉を口にした。
保護主は3段ケージを貸してくれて、ケージの中にむぎちゃんが使っていた毛布やトイレを設置した。「かなり臆病な性格とは聞いていましたが、本当に怖がりで、3段ケージが揺れるほど震えていました」
また同じ目に合わせたくない
保護主が帰ってからもずっとむぎちゃんが震えていたので、中村さんはあまり関わらないように見守った。近づくとシャー!と威嚇したり、イカ耳になったり、ケージの天井に登って逃げたりした。夜中は夜泣きをしたので、中村さんはなかなか眠れない日が続いたという。
臆病な性格で慣れるのに時間がかかるため、トライアル期間は1カ月あった。「2週間経ってもこんな感じで、やっぱりやめようかなと考えたこともありましたが、赤ちゃん猫のときによそのおうちにもらわれていったことがあり、抱っこできないからと返されてしまったと聞いていたので、『また同じ目に合わせたくない!』と思いました」
中村さんは、むぎちゃんに話しかけたりブラッシングしたり、少しずつ触れ合うようにした。すると、次第におもちゃで遊ぶようになり、3週目くらい経つとそばにくるようになり、その後、一緒にベッドで眠るようになったという。
毎日幸せをくれる子
譲渡前は姉妹猫と同じく葉っぱシリーズの名前がつけられていて、「葉助くん」という名前だったが、中村さんは、呼びやすくて茶色の被毛に合った「むぎちゃん」という名前にした。
むぎちゃんはすごく甘えん坊で、食いしん坊! 玄関で「いってらっしゃい」や「おかえり」もしてくれて、トイレやお風呂にもついてくる。一緒に枕に頭を乗せて寝たり、腕枕で寝たりする。外を見ることも好きで、立ち上がってカーテンから外を眺めていることもある。
むぎちゃんを迎えて、中村さんは赤ちゃんができたような気分だという。
「実家にいた頃は家族で面倒をみていましたが、今は自分がママになって親子のように生活しているので、すごく責任も感じます。むぎがいるから家に帰るのも楽しみで、むぎのためにも頑張ろうと思います」
中村さんは、むぎちゃんが寂しがらないようにむぎちゃんとの時間がたくさん取れるようにしている。毎日幸せをくれる子なのだという。