なぜジャッキー・チェンは67歳になってもアクションを続けられるのか 秘訣を分析「永遠のヒーロー」

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ジャッキー・チェンをご存じでしょうか?言わずと知れた香港が生んだアクションスターで、そして今や中国全土やハリウッドでの活躍も目覚ましい世界的トップスター。新作映画『プロジェクトⅤ』も好評のうち幕を下ろしました。

そんなジャッキーも御年67才。高齢者となり往年の動きはできない中で、どのようにヒット作品を生み出しているのでしょうか。80年代ジャッキーブームで中二病真っただ中だった筆者が、現在のジャッキー・チェンの魅力に迫ります。

ここでちょっとジャッキー・チェンの略歴を。1954年4月7日、イギリス領香港生まれ。幼少期から10年間、全寮制の京劇学校で厳しく演技や武術、アクションを仕込まれます。これは我々でいう小中高時代に当たります。

映画界入りして数年間の下積み生活を送り、早世したブルース・リーの穴を埋めるようにカンフースターとしてデビュー。『ドランクモンキー 酔拳』(1979)などで人気を獲得、80年代には『プロジェクトA』(1983)、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)などの名作を連発してアジア圏では押しも押されもせぬアクションスターに上り詰めました。

ブルースが練り上げた武術哲学に則って圧倒的なカリスマ性で魅せたのに対し、ジャッキーはコミカルで奇想天外、ちょっとスケベでおっちょこちょい、そしてド派手な体当たりアクションが魅力です。ここまでは往年のファンにとっては言わずもがななところでしょう。

90年代には『レッド・ブロンクス』(1995)が全米で大ヒット!実はジャッキー、ハリウッド進出には二度失敗しており、初回から実に15年を経た三度目の正直です。いよいよハリウッドスターの仲間入りを果たし、『ラッシュアワー』(1998)を皮切りに香港作品もはさみながら続々とハリウッド作品を発表します。

人間誰しも年を取るにつれて肉体は衰えていくもの。アクションスターの宿命は年齢との戦いです。ジャッキー自身も、いや本人が一番そのことを考え続けていることでしょう。

その変化が訪れたのはジャッキー50才、いきなり酒に溺れるボロボロなジャッキーが登場してファンを驚かせた『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(2004)から。自身の代表作であるポリス・ストーリーシリーズに、それまでになかった若手助演陣とアクションの分担をしながらの共演、シリアスな演技をぶち込んで来ました。この若手の発掘と起用はこの後もジャッキー作品の定番となっていきます。

そして大きな変革をもたらしたのが『新宿インシデント』(2009)と『ベスト・キッド』(2010)。

前者は新宿の裏社会の人間模様を描いたドラマチック・バイオレンス。この作品では持ち前のアクションもキャラクターも封印して、複雑な演技に挑みました。作品の評価はともかくも、いち俳優としてアクションなしでも魅せられるという、今後老境に向かっていくための一布石でもありました。

後者は、かつて師匠にしごかれて強くなっていったジャッキーが、主人公の師匠役に。年齢的には当然ですが、ついにジャッキーもおじいさんかぁ、と思ったものです。ちなみに製作はウィル・スミスで主人公はその息子、大ヒットしました。この作品以降は、従来の「恋人を助けるジャッキー」が「我が娘を助けるジャッキー」へとシフトしてゆきます。ちなみに必ず息子ではなく娘です。作品に花を添える若き女性を救うのはジャッキーワールドの定番ですから!

こうして徐々に自己の可能性を切り開いていくそんな中、『ライジング・ドラゴン』(2012)では”最後のアクション超大作”と銘打たれ、まさかのアクションから引退!?と皆大騒ぎでしたが…そんなことないじゃん!

その後の作品でも動く動く!そして歴史物からシリアス物からSF物までこなすこなす!ハリウッドで学んだ撮影技術やCG合成、香港発のワイヤーアクションなどをうまく取り入れ、新作を作り続けます。

近年の作品では、娘との確執と陰謀に立ち向かう刑事を描いた『ポリス・ストーリー/レジェンド』(2013)、香港の刑事とアメリカ人詐欺師の逃亡劇「スキップ・トレース」(2016)、まだこんなことやっちゃうの!シリアス復讐アクション『ザ・フォーリナー/復讐者』(2017)などがおススメです。予告編だけでも見てみてください、観たくなりますから。

中にはもうこんなのはジャッキー映画ではない、というオールドファンもいるかと思います。それはその通り、おじいさんですから。さらに映画配給会社の宣伝方法が正しくない場合もあります。間違った方向へ過度な期待を持たせたりします。『ポリス・ストーリー REBORN』(2017)と『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』(2019)はポリス・ストーリーも拳法も全く関係ないSF物、邦題で損をしているいい例です。とにかく最近のジャッキー映画は中国の盆と正月的な春節・国慶節映画がほとんどなので、変な情報に左右されず、今年の「寅さん」はどんなのだろう?といった気分で臨むのが正しい観方です。

さて、最新作、民間の国際特殊護衛部隊“ヴァンガード”が世界を股にかけて危険なミッションに挑む『プロジェクトV』。

出た!プロジェクトA、スパルタンX、サイクロンZ、ノリだけで持っていく80年代の流れを汲むこの安易な邦題!誤解のないように内容を鑑みてあえてつけるなら「ミッションV」です。一番の見どころは長年培ってきたジャッキーアクションを託された若手俳優たちの肉弾戦。かっこいい!御大は撮影時65歳、水上バイクの下敷きになってあわや溺死寸前という命がけのスタントを自らこなす。銃撃戦に派手なカーチェイス、はたまた以前だったら飛び降りたような場所をあえて階段で降りるという自らのパロディなども盛り込んで見どころ満載!

何歳になっても新しいチャレンジを続けるジャッキー・チェン。ジャッキーがこれだけやっているんだから自分もまだまだ!と思ってしまう。そして私はいつまでも中二病のまま、新しいジャッキー映画を楽しみにしているんです。

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◆春風亭伝枝(しゅんぷうていでんし) 昭和47年、静岡県修善寺町(現・伊豆市)出身。平成9年、春風亭(現・瀧川)鯉昇に入門、四番弟子。平成13年二つ目昇進、平成22年真打昇進。肩肘を張らない飄々とした芸風で、特に女性の描写が秀逸。膨大な知識に裏打ちされた落語は、見る者を納得させるだけの力がある。落語芸術協会会員で結成されたハワイアンバンド「アロハマンダラーズ」の一員で、スチールギターを担当。楽器は他にウクレレや三味線、ベースも嗜む。小汚い酒場が好き。

▽伝枝師匠のトークは以下からもお楽しみいただけます
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