「悪気がないとしても、モヤモヤしています」ーーまいどなニュース編集部に読者から調査依頼のメールが寄せられました。悩みの原因は「切手の柄」。知人から届いたお礼状に喪中はがき用の切手が貼られていたというのです。「受け取った瞬間、ギョッとしました。私が気にしすぎなのでしょうか」
読者「ショックでした」
兵庫県在住の読者は40代女性。喪中切手で手紙を送ってきた知人も同世代だといいます。手紙の内容はプレゼントしたお菓子のお礼と近況報告だったそうです。
「もしかしたら記憶違いかもしれない」。そう思った女性はすぐに切手のデザインを画像検索してみました。結果はやはり、「喪中切手」。
「嫌な予感が的中して余計にショックでした。お礼状に喪中切手を使うだなんて。知人の性格からして嫌がらせなどではないと思います。喪中切手を知らなかったのか、『まあいいか』と使ったのか。どちらにしてもモヤモヤしています」
日本郵便「余った喪中切手は交換可能」
喪中はがき用の切手の正式名は「弔事用63円普通切手・花文様」。紫や白の小花にシルバーの模様があしらわれたデザインです。
日本郵便のサイトには「喪中はがきは正式には『年賀欠礼状』と言います。これは喪中の期間のお正月に、新年を喜ぶあいさつを控えることを詫びるものです」「喪中はがきの切手には『弔事用63円普通切手花文様』をご利用ください」とあります。
年賀欠礼状は年賀状の準備を始める前の12月初旬に投函するのが一般的といわれています。喪中はがき用の切手が余った場合、「次回、喪中はがきを送る時までとっておこう」と残しておくのも気が引けます。今回のようなトラブルにもなりかねません。
日本郵便の広報担当者によると、弔事用63円普通切手・花文様は普通切手に該当するため、1枚につき5円の手数料を払えば、普通切手、通常はがき、往復はがき、郵便書簡、特定封筒(レターパック封筒およびスマートレター封筒)と交換することが可能だそうです。例えば、63円切手1枚を交換したい場合は、手数料5円を支払った上で63円分の普通切手やはがきと交換できます。
手紙のプロ「アウトです」
「文豪たちの手紙の奥義―ラブレターから借金依頼まで」や「すごい言い訳!」など、手紙に関する著作の多いコラムニストの中川越(なかがわ・えつ)さん。まいどなニュース編集部の取材に対し、喪中はがき用切手の普段使いについて、大変ウィットに富んだ見解を文書で寄せてくれました。全文を紹介します。
「『弔事用63円普通切手、いわゆる喪中切手は、通常の切手に交換しようとすると、手数料が5円もかかってしまいます。そこで、交換の手間暇と費用を節約するために、喪中切手を普段使いしてしまうのは、大変いいアイディアです。切手に喪中と書かれているわけではないので、気がつかれません。万一気づかれた場合でも、節約意識の高い人だ、見上げたものだ、とほめられるに違いありません』などと考える人は、アウトです。手間暇と費用がかかっても、通常のハガキや封書には、通常の切手を貼るのが最低の礼儀です。通常の手紙の文面が、作法の面でも内容的にもすべてカンペキでも、喪中切手を貼って出せば、アウトです。常識を疑われるだけでなく、悪意があると誤解されることもあるでしょう。敬意の感じられない、失礼千万な人として、末永く記憶されることになるでしょう。中川 越」
「手紙のプロ」と呼ばれる中川さんから見ても今回のケースは論外のようです。その一方で中川さんは、「喪中切手のデザインは、広く認知されているわけではないので、知らずに使用してしまう場合も少なくないと思われます」と慮りました。
◇ ◇
喪中はがき用切手以外にも、鶴と扇をデザインした「慶事用切手」も3種あり、こちらは結婚式やおめでたい行事用などに使用されています。また、最近ではデザイン豊富なシール式の切手も多数登場しています。
手紙の内容に合わせて切手のデザインを選ぶような余裕や遊び心、相手へのちょっとした心配りは忘れないでおきたいですね。