譲渡会で希望した猫とは縁がなく、意外にも里親が決まらなかった美猫をお迎え 家族の会話が増えた

渡辺 陽 渡辺 陽

ダリンちゃん(1歳・オス・元いのすけくん)は、母猫や兄弟と一緒に野良をしていたが、香港の留学生からえさをもらっていた。しかし、コロナ禍、留学生は母国に帰らなければならなくなったので親子で保護された。保護猫を飼おうと思っていたKさんはダリンちゃんが出ていた譲渡会に参加したが、別の猫を希望していた。

 

留学生にえさをもらっていた親子猫

東京都府中市で香港から来た留学生は、野良の親子猫にえさを与えていた。母猫と生後5カ月くらいの子猫が3匹いて、たいそう可愛がっていたが、新型コロナの影響で留学生は香港に帰国せざるを得なかった。2020年10月、保護依頼を受けた保護猫団体「NPO法人府中猫の会」が特別に保護したという。団体には保護猫がたくさんいるので通常、保護依頼は受け付けていないが、事情が事情なので引き受けた。

2カ月後、12月に譲渡会が開催され、その親子猫も参加した。

希望していた猫とは縁がなく

Kさん一家はもともと動物が大好きで、犬か猫を飼いたいなと思っていた。ホームセンターのペットショップなどでの購入を考えていて買い物ついでに見に行くことがあったが、新聞で保護犬や保護猫のことを知り、そういう出会い方も選択肢に加えた。

府中猫の会のブログを読んで地域猫のことや多頭飼育崩壊で保護された猫のことを知り、さらに保護猫を迎えたい気持ちが高まったが、母親が入退院を繰り返したため、生活が落ち着いたら本格的に考えようと思い数年が経った。

2020年、母親が天寿を全うし、子育ても一段落したので譲渡会に参加した。

「キャットタワーやトイレ等、猫をお迎えする準備を既に整えていたので、必ずこの譲渡会でご縁が欲しいと思っていました。だから、人気がありそうな猫は選ばず、出場猫の紹介文を読んで、雌の成猫を希望していました」

ところが、譲渡会当日の21時過ぎ、希望していた雌猫とは縁がなかったという連絡があった。「今回は残念でしたが、ぜひまた次の譲渡会にもいらしてください」と言われたが、みんながっかりして、家の中はお通夜のようだったという。

可愛い親子猫

香港人の留学生が託していった子猫たちも譲渡会に参加していて、3匹のうちの1匹、いのすけくんは、「府中猫の会」のYouTubeチャンネル(ちゅー猫チャンネル)に数本動画が公開されていた。Kさんは、初めてスマホでいのすけくんを見たとき、ペットショップにいるような綺麗な猫だなと思った。母猫も、いのすけくん以外の兄弟猫も、みな美猫で、4匹揃って「鬼滅の刃」のキャラクターから仮の名前をもらっていた。

「みんなとても可愛い顔をしていて、タイムリーな名前ということもあり、譲渡会では人気が出るだろうなと思いました。譲渡会には母猫以外の兄弟猫3匹が揃って出場していました」

実際に譲渡会場で見たいのすけくんは、画面越しで見るよりも更にかわいい、綺麗な茶トラ白の猫だった。譲渡会から帰宅後、家族で「いのすけくん、とても綺麗な猫だったね、ケージに人も群がっていたし、きっとあの猫は凄い人気だろうね」と話していた。家族揃って譲渡会に足を運んだが、帰宅後にお目当ての雌猫以外で唯一話題に上った猫がいのすけくんだった。

まさか、いのすけくんが!

翌朝ブログで譲渡会の結果を見ると、驚くことに居残り組にいのすけくんがいた。すぐに「ぜひ、いのすけくんを我が家に迎えさせてください」と代表に電話を繋いでもらうと、嬉しいことに承諾してもらえた。

いのすけくんはとてもビビリで臆病な猫だったため、府中猫の会では、そのことを理解してじっくり向き合ってくれる家庭への譲渡を望んでいた。Kさんは「臆病なくらいなんでもありません、どんな猫でも迎える準備はできています」と熱意をもって伝えた。

1週間後、「府中猫の会」の代表が、自宅までいのすけくんを届けに来てくれた。愛する人、愛に溢れた、という意味でダリンくんと名付けた。

洗濯ネットに入ったままのダリンくんの大きな目は、緊張から更に瞳孔が大きく開いていた。「本当になんて可愛い子が来てくれたのだろう」と家族みんなが思っていた。最初はケージ飼いからスタートしたが、ケージの中に用意したハンモックが気に入ったようで、ダリンくんはハンモックの中にずっと入っていた。緊張して外ばかり見ていたので、Kさんは安心するようケージを毛布で覆った。

1週間くらいは、「ワォーン、ワォーン」とかぼそい声で鳴いていた。とても寂しい声で鳴くので、かわいそうに思い、翌日からはケージの隣でKさんと娘が一緒に寝た。

ケージの中では触らせてくれるが、ケージの外では抱っこはおろか、触ることすらできなかった。幸い食べることが大好きな子なので、ちゅーるをあげながらそっと撫で、少しずつ慣らしていった。

家族のグループLINEはダリンくんでいっぱい

3カ月経った今、ダリンくんはすっかり馴染んでいて、Kさんはダリンくんがいない生活は考えられないという。家族全員ダリンくんを抱っこすることができるが、Kさんが抱っこした時は普通の鳴き声、夫の抱っこでは悲しい鳴き声、娘が抱っこするとドラ猫のような鳴き声で鳴く。

夫婦と娘1人の3人家族、娘が小さい時から休みの日は家族で過ごすことが多く、なんでも話す、もともと仲が良い家族だが、ダリンくんを迎えてから、更に会話が増えた。

「一人っ子の娘に弟ができて、4人家族になった感じです。何をしても可愛いダリンくん、家族のグループLINEはダリンくんの画像や動画でいっぱいです」

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