未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合、子どもの親権は父母のどちらがもつのか決めなければなりません。2018(平成30)年度の司法統計によると、未成年の子どもがいる夫婦が調停を経て離婚が成立した総数20061件のうち、父親が親権者になったのは1873件、母親は18713件と発表されています。現在の日本では、母親が子どもの親権者となるケースが父親の約10倍と圧倒的に多いことがわかります。
先日、3人の子どもをもつ私の友達が離婚をしました。子どもをとても大切に育てていた彼女は、自ら親権者となることを放棄したのです。
彼女の告白に頭が真っ白になった私
彼女は数年前から旦那さんと価値観のズレを感じるようになり、何をするにも揉めてしまうと悩んでいました。旦那さんは正社員として働き、彼女はパート勤務です。子どもが3人いるということもあり、経済的にも余裕がないため、彼女は何度も正社員として働きたいと旦那さんに伝えていましたが、旦那さんは自身の節税に意識が向いており、彼女が自分の扶養から外れることを頑なに拒否していました。
彼女はお金の不安を抱えたまま毎日を過ごすうちに、夫婦間でけんかが絶えず、しまいには家庭内別居のような状態とになり、旦那さんとの離婚を決意しました。
彼女から調停で離婚が成立したと報告を受け、彼女の新居にお邪魔するとかわいい子どもたちがいないのです。
「子どもたちは旦那に…。その方が子どもたちは幸せになるから」と彼女は泣きながら話すのです。私は「大丈夫、大丈夫」と言うことしかできず頭が真っ白になりました。
それから数分後、私は心の中で「なんで…なにがあったの?シングルマザーでも育てられるよ」と繰り返していました。
彼女が大切な子どもを手放した理由
彼女が子どもを手放した理由は経済的な問題でした。
3人の子どもを自分の収入だけで育てることはできない。
働きに出ると子どもに寂しい思いをさせてしまう。
子どもが大好きなサッカーを続けさせてあげることができない。
子どもが家庭環境のせいで将来の夢を諦めてしまうかもしれない。
…彼女が子どもといる生活を選ばなかった理由は、いま日本で大きな社会問題となっている「ひとり親家庭の貧困」です。
私自身は子どもの親権者であり一緒に生活を送っています。子どもを手放すという選択肢は私にはありませんでした。ですが、離婚後の生活に一切不安を感じなかったわけではありません。
彼女からの「子どもと一緒に住みたいと主張することは、自分のエゴなのかもしれない」という言葉に、私は「子どもを手放すこと=子どもはいらない」ということと無意識に思っていたんだと気づかされました。
現在彼女は、転職をし正社員として一生懸命働いています。
子どもの誕生日、クリスマス、お正月、そして進学などのイベントや人生の節目で、できる限りのことをしたい!と力強く前を向いて頑張っています。
子どもと一緒に暮らしていなくても、彼女は私と同じ「シングルマザー」。
シングルマザーの形は多様だなと思いました。
そしていま社会的な問題となっている「ひとり親の貧困問題」が女性の離婚後のあり方についても大きな影響を与えていると感じました。