2021年は「東京五輪とワクチン」という「2つの不確定要素」がカギ…今年の「戦後最悪」から反動も

須田 慎一郎 須田 慎一郎

 新型コロナウイルスの感染拡大に世界が覆われた2020年も終わろうとしている。ジャーナリストの須田慎一郎氏は当サイトの取材に対し、コロナ禍に伴う「戦後最悪の経済的な落ち込み」があったにも関わらず、今年の時点では持ちこたえた精神的な要因を指摘。だが、21年にはその反動で「大変なこと」になり、「東京五輪とワクチン」という「2つの不確定要素」が日本社会のカギを握ると予想した。

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 今年一番、驚かされたのは、経済が大きく落ち込み、年率換算でマイナス28%もGDPがマイナスとなったことだ。これは戦後最悪であり、いまだかつて、これほどの経済的な落ち込みを我々は経験してこなかった。

 ところが、経済的な落ち込みが「戦後最悪」といいながらも、国民感情としてはそれほど深刻な感じにはならなかった。

 それには2つ理由がある。1つは国が膨大な財政支出をしたことで、そのマイナスが相殺されたこと。もう1つは、これが大事なことなのだが、命の危機を感じている時、生き残ることに精いっぱいで、我が身の将来などを考える余裕がなかったことにある。

 自殺者についても同じことが言える。人は一番厳しい時に自殺するのではない。自分の生存本能で生き残ることに全力集中している時は死を考えないが、いったん事態が収拾して、客観的に物事が見られるようになった時、将来を悲観して自殺に追い込まれるものだ。

 今年の11月期に国内で月間の自殺者は2000人を超え、今も増加傾向にある。年末を越えて新年になった時、さらに危機的な状況になると考えてもいいのではないか。

 今年2月以降、緊急事態宣言のあった4月から5月、6月頃までは大嵐の中、生存本能で人は動いていた。4-6月期の経済的な落ち込みは相当深刻だったが、本当の危機を認識することはなかった。だが、これから大変なことになっていくのではないか。

 新年は1-3月期を乗り越えられるかどうかにかかっている。今年は4月以降、第1次補正予算、第2次補正予算で政府は無尽蔵の金を使った。計50兆円を使って、7兆円が残っているだけで、第3次補正予算は先送りされた。

 国からもう金は出ていかない。母子家庭を除き、一律給付金などは出ない。実感として、これから経済的な落ち込みがどれだけ出てくるか。飲食店は年末のかき入れ時に時短営業となったが、十分な補償もない。このショックは今後に尾を引くか。

 新年のポイントは2つある。1つは東京五輪。現時点で「間違いなくやる」という方向になっているが、本当に開催されるのか。もう1つはワクチンの投与がどのくらい広がり、高齢者や基礎疾患を持つ人にも一定の効果をもたらすことができるかということ。確かな効果があれば、コロナはある種の収束に向かうだろうが、まだ見通しは分からない。

 (1)東京五輪が開催されるか否か、(2)ワクチンが広まって効果がスムーズに見込まれるか…という、この2つの「不確定要素」に2021年の日本は大きく左右されるだろう。日本の社会、経済は新年の1-3月期の動きに命運がかかっている。

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