「赤ちゃんが生まれるからもう飼えない」…手放されたアメショーは置物のように美しく、大人しかった

渡辺 陽 渡辺 陽

「赤ちゃんが生まれるから飼えなくなった」と手放されたアメリカンショートヘアの猫。一度は親戚が経営するヘルパーステーションに預けられたが、そこにいた先住猫と折り合いがつかず、ステーションの社長は途方に暮れていた。

 

置物のような美猫

2016年11月22日、大阪府に住む嶋田さんは、仕事でヘルパーステーションを訪問。ステーションでは2匹の猫を飼っていた。机の上に愛くるしいアメリカンショートヘアの置物があったので、「可愛い置物があったんですね」と声をかけると、「置物ではなく本物やで」と言われて驚いた。

その猫は、ステーションを運営する会社の社長の親族が飼っていたのだが、「人間の赤ちゃんが生まれるので手放したい」「ステーションで飼ってもらえないか」と言われてやって来たのだという。年齢は5歳だった。

ところが、2匹の先住猫との相性が合わず、先住猫が家出をしてしまい、ステーションの職員は困っていた。

人の顔色をうかがう

ステーションの職員は、嶋田さんに「猫を飼わないか」と持ちかけた。当時、嶋田さんは猫と犬なら犬のほうが好きだった。ただ、夫が猫好きだったので聞いてみると、二つ返事で承諾した。

ステーションの社長が、猫を飼うためのグッズをその日のうちに買い揃えてくれたので、嶋田さんは急遽猫を迎えることになった。映画「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の登場人物にちなんで、息子がサリーちゃんと名づけた。ただ、当初女の子だと思っていたが、後に男の子だということが判明した。

「サリーは全く物怖じせず、我が家にやってきた日から、まるで昔から家にいるように振る舞いました。落ち着いた猫だったと思います」

 サリーちゃん改めサリーくんはとにかく穏やかで、全く手のかからない良い子だった。嶋田家に来るまで5年間、どのように暮らしてきたのか分からないが、いつも人間の顔色をうかがうところのある猫だった。

「してはいけないことは一切しませんし、何かを訴えるということもなく、あまりニャーと鳴かないなど、なんとなく切ない印象を受けました」

猫にとって最初の飼い主は大切な家族

サリーくんを迎えたことで、犬好きだった嶋田さんは猫好きになった。

寒い11月に来たこともあり、サリーくんはすぐに一緒に布団で寝るように。嶋田さんより夫の体温の方が高いので気持ちが良いのか、夫と一緒に寝ることが多かったという。大学生だった一人息子は、まるで小さな弟ができたように大切にしてくれた。

嶋田さんは「以前の飼い主さんにもいろいろ事情はあると思いますが、サリーにとっては最初の飼い主さんが大切な家族。最後まで面倒を見てほしかったと思います。ペットはおもちゃではないので、簡単に手放すのであれば、最初から飼わないことが大事だと思います」と話す。

5年間1匹で育ってきたサリーくんだが、今、嶋田家には10匹以上の猫がいる。ケンカをすることもなく、みんな穏やかに暮らしているという。

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