「100回登山の5歳ってワンちゃんやったん!」 京都・愛宕山"看板柴犬"の偉業達成に登山客が祝福

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 「火伏[ひぶせ]の神」で知られる愛宕神社があり、多くの参拝者が訪れる京都市右京区の愛宕山(標高924メートル)に100回登った犬がいる。山麓の家で育った5歳雌の柴犬「クゥー」で、3年前にダイエットのため常連客に連れ出され以来、こつこつと登山を続けて達成した。ハイカーを癒やす「看板犬」がベテランたちをも驚かせる偉業を成し遂げた。

 クゥーは、一日の大半を登山口そばの右京区嵯峨清滝町の家で過ごす。幼犬の頃から表参道を行き交う登山客を見守り続け、軒先は「ファン」が贈った写真やはがきで飾られている。元の飼い主だった女性が3年前に亡くなった後、友人の山崎年春さん(73)が引き取り、西京区の自宅から毎日連れて来ている。

 「よお肥えとったからなあ…」と山崎さん。登山のきっかけは、食欲旺盛なクゥーの健康のためだった。休日を利用して愛宕山に登る会社員井坂忠晴さん(44)=兵庫県宝塚市=が、下山後によく一緒に遊ぶぽっちゃり体形の犬を心配し、山に誘い出した。2017年9月に初登山をしてから、年間を通じて登るようになった。山崎さんがカレンダーに赤丸で記すうち100回の目標が見え、今年は週1回とペースを上げた。

 節目を迎えた11月8日。ぽかぽか陽気で朝からうたた寝をしていたクゥーだが、井坂さんが到着すると地面を転げ回って喜んだ。手で持つリードは放してしまうと危険なため、井坂さんはズボンに取り付けたカラビナと首輪をロープでつないで出発。「今日はやる気があるみたい」。クゥーは丸くて愛らしいお尻を振りながら、坂道をすたすたと歩き出した。

 道中、すれ違う子どもたちから名前を呼ばれるほどの人気ぶりだ。ツイッターや登山アプリで度々取り上げられ、有名になった。「さっき登山口にいた犬?」と、驚いてカメラを向ける人もいる。

 「頭が良くて、息遣いでしんどそうな演技もできる。本当に疲れて動かない時は肩に担いだ」「狩猟本能を発揮してヘビを捕まえたこともある」―。井坂さんは数々のエピソードを懐かしそうに語る。

 紅葉が見頃の参道を、小休憩を挟みながら進み、最後の急な石段を一気に駆け上がった。2時間余りで山頂付近の神社にたどり着くと、神職にも迎えられた。井坂さんは、体重は依然12キロと重たいクゥーを両手に抱きかかえ、うれしそうに記念写真に収まった。

 得意の下りは、途中の沢でバシャバシャ音を立てながら水遊びして、あっという間に下山。麓に戻ると、山崎さんと集まった登山客が準備した手製の祝福ゲートをくぐった。

 「100回達成の5歳ってワンちゃんやったんか」と仰天する人も。山崎さんは「100回登った犬はまずいないだろうし、クゥーちゃんはみんなにお祝いされて幸せ者」と感慨深げ。褒美のおやつをぺろりと平らげた相棒を見て、井坂さんは「クゥーが待っていると思うと、多少仕事で疲れていても来ることができる。200回も夢ではない」とほほ笑んだ。

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