衝撃の寺、ウサギの島、軍艦島… 「1泊2日」で瀬戸内の知られざる魅力に触れてみた

黒川 裕生 黒川 裕生

広島の<まだ見ぬ絶景>や<美味しいグルメ>、<知られざる伝統・文化>などを「ミタイケン(未体験)」というテーマでつなぎ、広島県とJRグループが新しい旅の形を提案する「せとうち広島デスティネーションキャンペーン」が現在、展開中だ(12月31日まで)。瀬戸内の多島美を体験できるクルーズ、SNSで大人気の謎スポットなど、広島のまさに“ミタイケン”の魅力を堪能できるツアーに参加してみたら、広島の観光ポテンシャルの高さに今さら圧倒されてしまった。広島、ヤバいです。

広島市の中心地や宮島エリア「以外」を探訪

1泊2日の日程で訪れたのは、マチモトのバラ農園(福山市)、平田観光農園(三次市)、海上自衛隊の呉基地がある呉湾艦船巡り(呉市)、下蒲刈島(呉市)、大久野島(竹原市)、生口島(尾道市)、尾道市役所(尾道市)。広島観光と聞いて真っ先に思い浮かぶ広島市の中心エリアや宮島エリアは敢えて外されているのがミソである。

いろんな意味で衝撃の寺、耕三寺

とにかく度肝を抜かれたのが、生口島の耕三寺。実業家/発明家として財を成した初代住職の耕三寺耕三が、母親の菩提寺にと1936(昭和11)年から30年余りの歳月をかけて建立した浄土真宗本願寺派の寺院なのだが、赤や白を多用したビビッドな配色と、細部まで緻密かつ豪奢に作り込まれた建物の強烈な存在感に目を奪われた。

母親の隠居所として耕三が昭和初期に建てたという潮聲閣(ちょうせいかく)も、見応え十分。書院造を主とした日本住宅と西洋風の洋館とを複合させた大邸宅で、重厚感のある浴室のステンドグラス、天井に花鳥や観音像が描かれた老人室と御佛間、中国清朝時代の家具が配置された応接室など、耕三の母親への愛と感謝が随所に溢れていた。

ここはどこ?謎めくスポット「未来心の丘」

耕三寺と潮聲閣を含むこの一帯は、「耕三寺博物館」の施設の一部として公開するという全国的にも珍しい形式となっている。博物館は芸術家支援にも力を入れており、その象徴とも言えるのが敷地の端にある「未来心の丘」。イタリアで活躍する彫刻家、杭谷一東氏が設計・制作した真っ白い大理石庭園だ。

2000年10月に開園した未来心の丘には、約3000トン分もの大理石で造られた様々なモニュメントが林立。どこか異国(異界?)を感じさせる不思議な景色が、近年はSNSなどでも人気を集めているという。

野生のウサギと触れ合える大久野島

SNS人気といえば、やはりここ、ウサギの島として有名な大久野島も外せない。観光型高速船「シースピカ」を降りて島に足を踏み入れた瞬間、どこからともなくウサギが2羽駆け寄ってきて、嬉しさの余り思わず喉から声にならない音をブフォッと漏らしてしまった。

驚くほど人を警戒しないウサギたちは、手から直接ペレットをもしゃもしゃ。カメラを向けても逃げる素振りも見せず、面白いように撮りたい放題である。実はこの日はまばらにしか見られなかったのだが、島にある宿泊施設「休暇村大久野島」によると、人前に現れるウサギの数は天候や時間、観光客数などによってかなり変動するらしい。島に生息するウサギの数は700〜900羽程度。運が良ければ、ウサギだらけの光景が見られるかも…?

また大久野島は、昭和初期から終戦まで毒ガスが製造されていた「毒ガスの島」でもある。長くその事実は封印され、「地図から消された島」とも呼ばれた。島には歴史を伝える毒ガス資料館や毒ガスの貯蔵庫跡があり、製造器具も保存・展示されている。

自転車で回れる瀬戸内の島々

シースピカでは、下蒲刈島も訪れた。朝鮮通信使や参勤交代の大名も立ち寄ったという歴史ある島で、昔ながらの街並みと海沿いの開放感を感じながらのサイクリングは実に気持ちが良い。ユネスコ記憶遺産を所蔵する博物館「松濤園」などの文化施設も絶対に見逃せないスポットだが、私が訪れた日は全て休館日だったため、残念ながら見逃した。再訪したい。

ちなみに下蒲刈島など近隣の7島は橋で結ばれた「安芸灘とびしま海道」として整備されており、自転車で回ることもできる。

シースピカからは、呉港の勇壮な艦船や、小さな島が丸ごと工場になっている「瀬戸内の軍艦島」こと契島なども間近で見ることができた。好きな人は悶絶間違いなしである。

自然豊かな農園ならではのアクティビティ

今回の旅では、バラ農園と観光農園にもお邪魔した。

「100万本のばらのまち」として知られる福山市。マチモトでは食用のバラを栽培しており、バラティーやホットバラジュース、摘みたてのバラの花びらを使ったスムージーを味わえる。裏手の山にあるハチクの竹林などの一風変わった景色も面白い。

広島県北部の自然豊かな三次市にある平田観光農園では、オリエンタルスター(ブドウ)の収穫を体験。ここではチケット交換制のフルーツ狩り「ちょうど狩り」や自然の中でのBBQといったアクティビティも充実しており、農園ならではのフルーツを使ったパフェ作りなども楽しむことができる。

尾道市役所からの絶景

ツアーの締めは、今年逝去した大林宣彦監督ゆかりの地である尾道市。今年の1月にできたばかりの市役所新庁舎は、目の前が海という最高のロケーションだ。5階には海と山と街並みがぐるり360度見渡せる展望スペース「おのみちルーフ」がある。時間が経つのも忘れて絶景に見入りながら、自分にとって広島が一気に「もっと“見たい県”」になったのを感じたのであった。(完)

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ミタイケンひろしま https://www.hiroshima-kankou.com/mitaiken/

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