奇跡の回復を遂げた瀕死の保護猫、入院先の病院院長が里親に まるで“シンデレラボーイ”?

渡辺 晴子 渡辺 晴子

一人の写真家が助けた保護猫のウッキーくん。里親が決まりました。その里親は入院している動物病院の院長先生です。ウッキーくんを保護した写真家の岡本正史(しょうし)さんは「いま入院中の病院で引き取って頂くことになりました」とTwitter上で報告。ウッキーくんの行方を見守っていたフォロワーなどから「病院が里親さんなんて、最高じゃないですか!」「ウッキーくん、良かったですね。院長先生が里親さんなら安心ですね」「ウッキーの健康面でそれほど安心できる場所はないでしょう」と、喜びの声が多数上がっています。

全く見えなかった目「少し光を感じるように」

今年8月、岡本さんが街並みなどを撮影中、埼玉県八潮市でウッキーくんを発見。ウッキーくんは生後2カ月ほどの子猫で、病院に運ばれた当初は、呼吸はあったものの意識不明の重体。頭は陥没、皮膚ははがれて頭の骨が見えるほどの大けがを負っていたのです。運ばれた病院の獣医師からは「ほぼ助からない」と告げられましたが、何とか一命を取り留めることができました。

ウッキーくんは、白黒ハチワレの男の子。東京都と埼玉県を結ぶ「浮花橋(うきはなはし)」の周辺で見つかったことから、橋の名前の一字「浮(うき)」にちなんで岡本さんが「ウッキー」と名付けました。ウッキーくんが発見された場所はゴミ集積場の近く。けがの状況などから誰かに捨てられてカラスに襲われた可能性が高いといいます。

現在は、ウッキーくんを保護した八潮市内にある保護団体「NPO法人・ねこの家」から紹介を受けた動物病院で入院しています。岡本さんによると、ウッキーくんは10月で4カ月ほど。猫の風邪と呼ばれる「カリシウイルス」に感染して少し口内炎が残っているそうですが、頭の傷は小さくなり、皮膚がはがれた頭部の肉芽は全て再生され、皮膚も再生しつつある状況だといいます。全く見えなかった目も「少し光を感じているようだ」と院長先生から言われ、視力が少し戻る可能性も見えてきたとのこと。

里親が現われなかったら・・・飼う覚悟も。自宅の改造を検討

9月も後半にさしかかり、ウッキーくんが退院してからのことを悩んでいた岡本さん。単身で近くの老人ホームにご入居されている認知症のお母さまがいらっしゃることもあり、ご自身一人で飼うことに迷っていました。しかし、昔お母さまが可愛がっていた飼い猫のタマちゃんにそっくりだったこともあり、ウッキーくんに深い“縁”を感じていた岡本さんは、迷いながらも「責任を持って飼わなければ」という使命感を持っていたいいます。

「捨てられて大きな傷を負ったウッキーを目の当たりした僕は、幸せにしたいという思いがあります。もし里親になってくれる方が現われなかったら、僕が飼うことを心に決めていました。実はケージを買ったり、畳をフローリングに変えようと見積もりを出してもらったりしていました。家の改造や外に出ないように突っ張り棒のような柵も購入しようと考えていました」。

院長家族の一員へ、治療体制も整った環境が一番

そんな迷いと使命感にさいなまれていた岡本さんでしたが、院長先生から「岡本さんがよろしければ、うちで(ウッキーくんを)引き取りますよ」と提案があったのです。入院中、ウッキーくんは院内ではアイドル的存在。院長先生やスタッフの方から「ウッちゃん」と呼ばれ、抱っこすると喉をゴロゴロ鳴らすなどその人懐っこさが人気を集めていたとのこと。院長先生は夜、2階の自宅にウッキーくんを連れて行って一緒に寝ていたそうです。また2階の自宅では保護猫ちゃんを飼っており、1階の院内にいる猫ちゃんたちを含めると20匹近くになるとか。

このように院長先生たちがウッキーくんを大切に思っていること、ウッキーくんのような保護猫ちゃんたちを飼っていることなどから、岡本さんは院長先生からの“提案”を快諾したといいます。

「みんなに愛されて、治療体制も整っている環境下で暮らせるということは、ウッキーはまさに“シンデレラボーイ”だと思いました。ただ、ウッキーが可愛いから人懐っこいからという理由だけで、院長先生が引き取ることになったわけではありません。病院で飼う理由として、まずウッキーがときどき誤食をしてしまうということを挙げられました。その原因が頭を打ったための後遺症なのか、あるいは知的障害なのかまだ分からないという話ですが・・・今後、病院で様子を見るとともに、別の後遺症が出てくる可能性もあり、予断は許せない状況だと。また、目が見えないウッキーくんを飼うには、段差が少なく、決まったレイアウトのスペースで過ごせるような環境を整えてあげなけれならないとも言われ、やはり、環境の整った病院で飼っていただけるのが一番だと考えました」。

とはいうものの、保護した岡本さんにとってもウッキーくんは大切な“家族”。

「院長先生のお子さんもウッキーと仲良く遊んでいました。とても可愛がっていて。ウッキーは院長先生のご家族の一員ですね。うれしい反面、個人的に少し寂しい気持ちにもなっています。私の心情は、まるで片思いの人に失恋した感じでしょうか(苦笑)」。

ウッキーくん、猫カフェにも“出張”?

院長先生の「家族の一員」となったウッキーくんですが、岡本さんは今後もときどきウッキーくんに会いに行くといいます。ウッキーくんの成長の記録もTwitterで報告するとのこと。

また、最近はTwitterなどでウッキーくんを知った方々から「ウッキーちゃんに会いたい」という声が上がっているとか。そんな要望に応えて、ウッキーくんの頭のけがなどが完治してから、「NPO法人・ねこの家」が準備を進めている猫カフェに“出張”するかもしれません。ウッキーくんの元気な姿を見てみたいですね。

ウッキーくんの成長記録については、岡本さんのTwitter(オカモト@okamoto_neko)をご覧ください。

https://twitter.com/okamoto_neko

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