私の友人K子から聞いた、世にも残念な姑とその息子Y太の話。
はた目には、二人はお似合いのカップルに見えていました。少し年上で行動的なK子と、そんな奥さんを後ろでニコニコと見守るような夫のY太。
遠距離恋愛だった二人。もどかしい数カ月を過ごし、とうとうK子は大好きな会社を辞めて、彼の元へ行くことに決めたのでした。しかしもともとK子はバリキャリ系。キャリアを諦めたわけではありません。結婚式を挙げると、さっそく彼が住む地で仕事を決めました。
そこで姑の放った強烈なひと言、「女でも欲が深ければ仕事もしたがる」。
…ん?どういうこと??サーっと血の気が引くのを感じたものの、このときはスルーしたそうです。(Y太は仕事を頑張っている私が好きと言ってたし!)と。
しかし後から思えばこれが序章だったのですね。
そして、優しくおだやかなY太の正体は…「仕事が続かないマン」だったのです。
1回目の「俺、この仕事無理やねん」は、結婚の約半年後でした。もしかして妊娠したかも…?という本来幸せ絶頂期のはずのとき。(私、やばい人選んじゃった?)という不安がわきあがるも、彼を信じていたK子。Y太を叱咤激励し、「仕事とは」の哲学を彼に教え込み、次の就職先が決まったときは共に泣いて喜んだと言います。
K子自身は、無事第一子を出産。ほどなく二人目をさずかる中、育休や転職、正社員から派遣社員へと形を変えながらワーキングマザーを続けていました。
一方、Y太はというと、K子の努力むなしく、長女が5歳になるまでに会社を辞めた回数全部で4回。(いくらなんでも、小さい子供二人抱えて辛抱足りなすぎ!…私はそう思いましたし、それが真っ当な反応かと思います)
しかし、なかば非難をこめて「Y太また会社辞めちゃって…」とK子が報告するたび、Y太をたしなめるどころか姑は…。
「かわいそうに。体力的にきつかったんやろうな。」
「安い金でこき使いやがって。」
「Y太には向いてないと思ったわ。」
完全に「うちのカワイイ息子が被害者」という反応にドン引きです。
次の仕事は自営業をする、というY太。
「そんな資金あるか!」と激高するK子でしたが、何の問題もありません。
はい、姑がウン百万、ぽんと貸して(あげて、でしょうね)くれました。
もう、勝手にしてください。生活費さえ入れて、法に触れさえしなければ一切口は出すまい。そう決心したK子は、育児による時間制限のなか、派遣社員として広告代理店でせいいっぱい働いていました。
しかし、またもや困難がおとずれます。
自営業を始めて1年後、Y太がノイローゼ気味になり、K子に暴言を吐き始めたのです。Y太いわく「K子が結婚してからずっと浮気している」「K子はそばにいる人間を破滅させる」などなど。
優しくおだやかなY太のあまりの豹変ぶりに、「やばい、Y太の頭がおかしくなった!」と姑に訴えたK子。そこで交わされたという会話に、同じ働く母として私も悶絶しました。
姑「かわいそうに、ストレスやな。K子さんが仕事ばっかりして寂しい思いさせてたからと違うか?とにかくY太を休ませないと。さて、後はK子さんがいつ仕事やめるかやな。」
K子「…え?」
姑「しばらくあの子のそばにいてやらんと。そうだ、ここ(実家)で一緒に暮らしたらええやん!家賃浮くしちょうどええ!なっ(笑)」
K子「…無理。」
はい、あなたの可愛い息子さん、のしつけてお返しします。お二人で末永く、お幸せに。
K子は二人の可愛い娘を連れて地元に帰り、ワーキング・シングルマザーとして、イキイキと暮らしています。