元広島カープ投手が大阪府警の警察官に 地域のパトロールや防犯教室で講義も

あの人~ネクストステージ

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 広島カープの投手だった池ノ内亮介さん(31)は現在、大阪府警の警察官となり、寝屋川署に勤務している。

 「毎日いろんな事件事故が起こります。警察官になってまだ3年。すべてが勉強ですが、上司や仲間に恵まれ、また、街の人たちからの『ありがとう』『ご苦労さま』という声にも励まされながら頑張っています」

 同署地域課に所属し、交番勤務をメインにしている。交通事故や住民同士のトラブル、盗難、落とし物、迷子、道案内など交番に寄せられる案件は多種多様。バイクで地域のパトロールを行い、学校や老人会などで防犯教室も開く。書類を作成する仕事も多く「結構苦手です。ずっと野球しかしてこなかったので」と苦笑いする。

 三重県伊賀市出身。中京学院大を経て2010年秋のドラフト会議でカープから育成枠で指名された。1年目は3軍でひたすら体力強化に励み、3年目のシーズン終了後に支配下登録を勝ち取った。右サイドハンドから繰り出す150キロの直球とキレのある変化球を武器に、14年には1軍登板も果たした。中継ぎで2試合に投げ、いずれも1イニングを無失点に抑えた。

 しかし、翌年は1軍での登板機会はなく、オフに戦力外通告を受けた。「力不足でした」と悔しさも残ったが、カープに在籍した5年間を「不器用なタイプなので、育成から支配下、1軍と一歩ずつ上がっていけたのは自分らしくて良かったと思います。わずか2試合でしたが、1軍で投げられたことで、家族やお世話になった方にも少しは恩返しできました」と振り返る。

 第2の人生には「厳しいプロの世界でやってきたので、次の人生でも厳しい環境で挑戦したいという思いはありました」。警察官の知人の勧めもあって16年夏に大阪府警の自己推薦方式の採用試験に応募して合格。翌年8月に警察学校に入校し、警察官として新たなスタートを切った。

 プロ野球で培った経験が役に立つことも多い。「カープに入った頃はクイックやけん制に苦手意識があったんですが、プロで活躍するためには欠かせない技術。コーチから教わり、上手な人を見て研究するうちに自分の武器になったんです。だから警察官になった今も難しい仕事があっても努力すれば、必ずやれるようになると思っています」。

 かつての仲間の活躍は今も気になる。中京学院大時代の1年後輩にあたる菊池涼とは大学、カープで7年間チームメートとして過ごした。「同期で同い年の中村恭平は去年頑張ってくれて本当にうれしかった。中崎や磯村も年は下ですが同期です。同い年の会沢やマエケン(前田健太)にも頑張ってほしい」。仲間の活躍を見聞きするたびに野球の虫がうずくそうで、「たまに友達とキャッチボールします。野球したいですね」と目を細めた。

 これからの目標については「プロ野球選手は子供たちのあこがれだと思うんです。警察官でもそういう存在になりたいし、私の下に入ってくる若い人たちの見本にもなりたい。そのためにも警察官である前に一人の社会人として自分を磨いていきたいです」。地域から愛され、信頼される警察官へ。池ノ内さんは第2の人生でも一歩ずつ前進していく。

(デイリースポーツ・工藤直樹)

◆池ノ内亮介(いけのうち・りょうすけ)。1988年11月22日生まれ。三重県伊賀市出身、現役時代は右投げ右打ちの投手。175センチ、74キロ。背番号は121→68。中京高から中京学院大を経て10年度のドラフト会議で広島に育成2位で入団。13年オフに支配下登録され、14年7月14日のDeNA戦でプロ初登板を果たす。15年に退団。通算成績は2試合に登板し0勝0敗0セーブ、防御率0・00。17年8月に大阪府警の巡査となる。独身。

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