聞いてください!すみだ水族館の広告が「攻めている」と話題に…他館の名前まで出して訴求したものとは

北村 泰介 北村 泰介

 今夏、東京の水族館によるユニークな広告がSNSで話題になった。東京・墨田区の「東京スカイツリータウン(R)」にある「すみだ水族館」(2012年開業)が、水族館として〝先輩〟に当たる別の2館の最寄り駅に大胆なキャッチコピーの広告看板を大々的に掲示し、それが「攻めている」と評判になったのだ。また、家電量販店の折り込みチラシを思わせる電車内の広告は〝ダサかっこいい〟と注目された。担当者に企画の背景を聞き、同館に足を運んだ。

 すみだ水族館の最寄りは「とうきょうスカイツリー駅」や「押上駅」など。だが、同館は、サンシャイン水族館(1978年開業)の最寄り駅・池袋駅に「サンシャイン水族館兄さん、聞いてください!わたくし、すみだ水族館の者です。」、アクアパーク品川(2005年開業)の最寄り駅・品川駅に「すみだ水族館は、アクアパーク先輩を尊敬しています。」という横長の看板を、いずれも7月15日から21日までの1週間限定で駅構内に掲示。電車内広告はJR中央総武線各駅で同期間、都営新宿線や京急、東武本線、日比谷線などでは7月12日から8月11日まで掲げられた。

 そもそも、何を訴えたかったのかというと、7月24日から期間限定で実施した「すみだ水族館でプロカメラマンが無料で写真を撮るサービス」のPR。企画広報チームの恵土(えど)敦さんに話を聞いた。

 恵土さんは「プロが無料で 1 時間撮影をしてくれるという新サービスを始めるにあたり、他施設に語りかけるようなメッセージ広告が、プログラムの独自価値を伝えられるのではという着想から始まりました。事前に両館にご相談し、掲載のご許可を頂き実現しました」と経緯を説明。「水族館への直接の反響はありませんが、 ツイッター等でたくさん投稿を頂いています」とSNSで反応があったことを明かした。

 新たな形の写真サービスについて、恵土さんは「写真のクオリティが高く、よい思い出を残せた、カメラ係をしなくてよいので子どもと一緒に水槽を見ることに集中できた…といった声を多数頂いております」。家電量販店的デザインの電車内広告では今回のサービスが直球で紹介された。同氏は「具体的に無料などのメリットをお伝えするために、イメージ寄りの広告ではなく、セールチラシのような広告フレームを借りたデザインとしています」と解説した。

 8月末の夜、すみだ水族館を訪れた。毎日18 時~21時は「ブルーナイトアクアリウム」という夜の水族館になる。LED照明の中で揺れるたくさんのクラゲ。アニメ「ムーミン」のニョロニョロを連想するチンアナゴ。二層吹き抜け空間の水槽で泳ぎ、たたずむペンギン。金魚展示エリア「江戸リウム」…。日中こそ太陽光のような白色の照明がペンギンプールを照らし、館内全体が明るいイメージとなっているが、夜はブルーのライティングで照らされた館内が幻想的になる。深海を思わせる暗さに身を潜める心地よさ。癒しのBGMとともに納涼空間を堪能した。

 広告の対象となった今夏限定の無料撮影サービスは8月28日に終了。話題によって予約が開始初日で埋まったという。恵土さんは「参加できなかったお客様には残念な思いをさせてしまっているので、今回頂いたご意見などを取り入れながら今後も定期的なプログラムとして開催できるよう企画につなげてまいります」と意気込んだ。秋以降の動向も注目される。

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