「ごみのポイ捨て禁止です。渋谷の街をきれいにしましょう」。社員たちは、ぞろぞろと街を周回するコスプレイヤーたちに呼びかける。当初は「空き缶と空き瓶」がごみの対象だったが、紙コップやお菓子の包み紙なども、差し出すポリ袋に放り込まれていく。そのたびに、社員は「ありがとうございます!ハッピーハロウィーン!」と捨てた当人とハイタッチ。約1時間で28袋が集まり、そのうち10袋を集めた営業部チームが優勝した。
同社の西村誠司社長は「創業の地であり、本社がある渋谷の街をきれいにしようと、今回初めて行った。渋谷を訪れる外国人に『ごみが散らかっている』というイメージを持たれないように企画した。みなさん楽しみながら積極的にごみを捨ててくれて一定の効果があったと思う。再来年の東京五輪に向け、ごみ問題に少しでも意識を向けてもらう啓蒙につながったのでは。やってよかった」と手応えをつかんでいた。
ハロウィン本番が日付の変わる深夜0時まで淡々と進行した背景には、28日午前1時過ぎに起きた“暴動”のイメージがあった。センター街の路上で軽トラックを暴徒と化した者たちが取り囲んで横転させ、この映像はニュースとして世界中に配信された。その報道を意識してか、本番では人数こそ多いものの、おおむね仮装した人たちは目立って羽目を外すすことも少なく、大半の人はただ街を歩くのに終始していた。
仮装することで“無礼講”と勝手に解釈して大暴れし、痴漢や盗撮をして嵐のように去っていく。秋の収穫を祝うキリスト教文化圏の宗教的な行事が、日本では「天下御免の乱痴気騒ぎ」にすり替えられて数年になる。言語道断の犯罪行為には警察による取り締まり強化が求めらているが、ごみ捨てに関しては、この日初めて開催された企業によるイベントなど、来年以降も草の根的に行われていくことになりそうだ。