三宮駅前のビルに2025年、無料喫煙所「THE TOBACCO SANNOMIYA(ザ・タバコ・サンノミヤ)」がオープンした。駅から数分の一等地に高性能の脱臭機を備え、地下に静謐(せいひつ)な分煙空間が生まれたが、目立たない立地とあって、利用者がまだまだ少ないという。
三宮が通勤圏の記者も駅チカ一等地に無料喫煙所ができたとは気づかなかった。どんな場所にあるのか、神戸三宮駅から歩いてみた。
阪急神戸三宮駅東口に降り立ち、JTの会員向けオンラインサービス「CLUB JT」で喫煙所を探す「喫煙所MAP」を開く。
喫煙所マップを頼りにスターバックスがある高架沿いを西へ歩くと
黄、赤、青と極彩色の海鮮居酒屋「磯丸水産」の看板が見えてくる。
この「磯丸水産 三宮駅前店」がある角を北へ上がり、20メートルほど歩くと、目的地に着いたらしい。どこだ?
あ…
あったー
探していた無料喫煙所「THE TOBACCO SANNOMIYA」は神戸牛ステーキのテナントが1階に入るビルの地下にあった。うーん、これはわかりにくい。
目の前の喫煙所に気づかない人も…
暗い階段を下る。RPGゲームのダンジョンに入る時みたい。
地下に降りると、バーのような空間が広がっていた。
タバコのにおいは感じられない。神戸市の「喫煙所整備経費補助金」の助成を受けて、初めて誕生した民間の無料喫煙所だ。
そもそも、なぜ民間に喫煙所を作ってもらう必要があったのだろう。神戸市に聞くと、行政主体で繁華街に喫煙所を整備するのには限界があるという。
神戸市は人通りが多く、路上喫煙による火傷(やけど)や衣服の焼け焦げなどの被害が起きやすいエリアを「路上喫煙禁止地区」に指定している。三宮・元町地区(三宮ー元町間の繁華街や神戸市役所、東遊園地含む)や六甲道駅周辺地区が「路上喫煙禁止地区」に指定され、「路上喫煙防止指導員」が違反者から1000円の過料を徴収する。
神戸市の担当者によると、禁止区域で吸っていた人から1000円を徴収する際、「お金取るのはええけど、なんか(分煙して吸える場所を)整備しいな」という声が上がっていたといい、神戸市は元町駅前喫煙所、三宮駐車場喫煙所を設けたが、「私ども行政サイドが持っている公共用地では、三ノ宮中心部にはもう喫煙所として使えるスペースがありません。六甲道も同じ状況です」(神戸市)と公共スペースに喫煙所を設ける方法に限界を感じていた。「総務省からも分煙施設整備を求める通知が2024年4月に出てます。かような背景もあって、民間事業者の力を借りて、神戸市が財政支援する補助金制度を創設しました」と経緯を説明する。
大阪市や名古屋市でも助成金によって分煙施設、喫煙所が整備されており、神戸市担当者は「路上喫煙を禁止にするだけではなく、同時に排煙対策を施した喫煙所を整備することで、喫煙者も非喫煙者も双方が暮らしやすい環境を整えたい」と語る。喫煙所の整備経費を補助するだけでなく、2025年度からは維持管理経費も補助経費に加わった。
神戸市補助金第1号の「THE TOBACCO SANNOMIYA」は、ブラウンのタイルに幾何学模様が刻まれ、バーのような間接照明で都会の喧騒と一線を画す。神戸市担当者は「高度な空気清浄機を入れてもらっただけでなく、デザイン性の高い喫煙所にしてもらった」と喫煙所を企画運営するコソド(東京)のデザインセンスを評価する。
コソドの山下悟郎社長は学生時代に神戸で暮らし、バーで働いていたこともあった。山下社長は「石造りの旧居留地など港町神戸のイメージはもともと自分の中にあった」といい、思い入れのある港町神戸へのリスペクトを込めて、ガラス張りの中央テーブルの内部に鎮座するコンクリートに船の金具を配したり、石材を活用してバーのような、洞窟のような落ち着いた雰囲気を演出した。高性能な排煙設備を備え、タバコのにおいはほぼ感じられない。
利用時間は7:00~21:00。好立地に生まれたクリーンな空間ながら、もっぱらの課題は知名度不足だ。神戸市も状況は認識しており、「道行く人にどう知ってもらうかが課題。近くで路上喫煙している人がいたら、路上喫煙防止指導員からTHE TOBACCO SANNOMIYAの存在を知らせています。ぜひ利用してみてほしい」と認知度向上に努めている。
隠れ家のような地下空間。RPGゲームの洞窟に入る気持ちで、一度のぞいてみては。
THE TOBACCO SANNOMIYA
CLUB JT喫煙所MAP
提供:日本たばこ産業株式会社 兵庫支社
分煙の取り組み | JTウェブサイト (jti.co.jp)