「ミケちゃん今までひまわりスマイルをありがとう」
「ミケちゃんのおかげで頑張れたよ。ありがとうね」
祭壇に飾られた遺影に向かって、訪れた人たちが語りかけていました。10月25日、千葉県市川市の鍼灸マッサージ治療院「やすらぎ治療室」で開かれた「ミケちゃん感謝の集い」。悪天候の中、約200人が足を運び、看板猫として親しまれたミケちゃんに感謝を伝えました。
右足のない3本足のミケちゃんは、ひまわりのような笑顔がトレードマークの女の子。甲状腺機能亢進症やリンパ腫、乳腺腫瘍などの病気と向き合いながら、多くの人に愛されてきました。10月19日午前7時50分、院長の冨森猛さんと妻に見守られ、推定14~15歳で静かに息を引き取りました。
遠方からも駆け付けた人たち 遺影に向かって「ありがとう」
感謝の集いには、地元だけでなく、兵庫県や栃木県から駆け付けた人もいたといいます。届けられた花は約200。市川市の田中甲市長から弔電が届き、84年ロサンゼルス五輪代表でスポーツジャーナリストの増田明美さんからも供花が寄せられました。国会議員のえりアルフィヤさんも治療室を訪れたそうです。
冨森さんが何より心に留めたのは、ミケちゃんに向けられた言葉でした。
「皆様から一番多く発せられた言葉は、『ありがとう』という感謝の気持ちでした」
ミケちゃんの笑顔へのお礼、自分を支えてくれたことへの感謝。祭壇の前に立った人たちは、それぞれの思いを遺影に語りかけていました。
訃報を伝えてから、SNSや治療室には数え切れないほどのコメントや手紙が届きました。自身も闘病中だという人からの言葉も多かったといいます。
「単なるアイドル的な『かわいい』存在を超えて、私もそうなのですが、人生に大きな影響を与えた特別な存在だったように思いました」
冨森さんは、寄せられた言葉をそう受け止めています。
愛猫を亡くしたわずか3週間後、ミケちゃんにも病気が
もともとは治療室の近くで暮らす外猫だったミケちゃん。人懐っこく、次第に冨森さん夫妻と親しくなり、やがて治療室で暮らすようになりました。冨森さんは、その日々の様子をXで発信し続けてきました。
長い闘病の始まりは、2020年夏に発症した甲状腺機能亢進症でした。薬の量を微調整しながら朝晩の投薬を続け、比較的症状を抑えられていたといいます。
ところが、昨年、新たな病気が見つかりました。
4月末、冨森さん夫妻は、自宅で暮らしていた愛猫のチャコマロンちゃんをリンパ腫で亡くしました。診断を受けてから、わずか8日目のことでした。
それから約3週間後。今度はミケちゃんの背中にしこりが見つかり、診察を受けると、同じリンパ腫と診断されたのです。
「目の前が真っ暗になりました」
当初は、1クール6カ月の抗がん剤治療を始めました。しかし、副作用が強く、1回で中止することに。その後は経口の抗がん剤に切り替え、治療を続けました。
冨森さんによると、この時期のミケちゃんは、発症前と同じような元気さで日常生活を送れていたそうです。
手術後も見せてくれた「ひまわりスマイル」
今年4月には、左下腹部に小さなしこりが見つかりました。検査の結果、乳腺腫瘍と判明。すでにリンパ腫の治療を受けていたミケちゃんの体への負担を考え、局所の腫瘍を切除する手術を受けました。
手術は無事に終わり、ミケちゃんは再び、いつもの表情を見せてくれたといいます。
「今までと変わらない『ひまわりスマイル』を見せ続けてくれました」
投薬や通院の日々にも、冨森さんの記憶に残るミケちゃんらしい姿がありました。薬を嫌がるそぶりを見せず、採血の際には、自ら首を前に出してくれることもあったそうです。
「すべて自分のためにしているんだと思ってくれているようでした」
そんなミケちゃんの体調が大きく変わったのは、9月11日ごろでした。食欲が落ち、元気がなくなり、白血球や赤血球が激減。ひどい貧血の症状が出るようになりました。
冨森さんによると、骨髄検査で悪性腫瘍の浸潤が確認され、急性骨髄性白血病の可能性が高いと診断されたといいます。計3回の輸血を受けましたが、効果は一時的で、症状は悪化していきました。
旅立つ前の夜、懸命に水を飲もうとしていた
最期の日々は、地元の保護猫団体から借りた酸素室で過ごす時間が増えました。それでも、優しくなでると、ミケちゃんはいつものようにうっとりとした表情で身を寄せてくれたそうです。
冨森さんが特に忘れられないのは、亡くなる前日の18日深夜の姿です。
ミケちゃんは酸素室の中で、器にあごを乗せ、一生懸命に水を飲もうとしていました。
抗がん剤の服用を始めてから、ミケちゃんには、薬を飲むと自分で水飲み場に行き、水を飲んではその場で休むという習慣があったといいます。その姿を見てきた冨森さんには、この夜も、ミケちゃんが「お水を飲めば、きっと今までのように体が楽になるはず」と思っているように映りました。
治療室に駆け付けた冨森さんは、シリンジでミケちゃんの舌を湿らせました。その間も、ミケちゃんはきれいな瞳で前を見続けていたといいます。
「ミケちゃんは最後の最後まで、生きるために前向きで一生懸命でした」
それから数時間後、ミケちゃんは夫妻に見守られながら、静かに息を引き取りました。
「続けてください」涙の声を受け、Xの発信を続けることに
冨森さんは以前から、ミケちゃんが亡くなったらXをやめようと決めていました。しかし、感謝の集いで何人もの人から、涙ながらに「続けてください」と声を掛けられたといいます。
過去の投稿をまとめてくれるフォロワーもおり、最近ミケちゃんを知った人からは「昔のミケちゃんについて知ることができて、よりミケちゃんが好きになりました」といった声も届いています。冨森さんは、当面、発信を続けることにしました。
「皆様のミケちゃんへの熱く深い思いを直接伺うことが出来て、忘れられない一日になりました」
感謝の集いを終え、冨森さんはXにつづりました。
祭壇の前で繰り返された「ありがとう」。その言葉には、写真や投稿を通じてミケちゃんを見守り、励まされてきた人たちの、それぞれの日々が込められていました。