パソコンやスマートフォンを使った仕事が当たり前になった今、目の疲れや見えづらさが仕事の効率に影響していることが明らかになりました。医療法人先進会の眼科全国ネットワーク「先進会眼科」(大阪府大阪市)が実施した「目の不調がもたらす『見えない赤字』実態調査」によると、目の不調によって生じる確認作業や作業中断などの「ワークロス」による経済損失は、日本全体で年間「約2兆円」と推計されることがわかりました。
この調査は、仕事でデジタルデバイスの画面を週3日以上かつ1日4時間以上使用する全国20〜59歳の被雇用者(会社役員を含む。自営業・フリーランス/非就業者を除く)500人を対象として、2026年8月にインターネットで実施されました。
調査の結果、約4人に3人が「直近1カ月の仕事中に見えづらさ・目の疲れ・ピントの合いづらさなどを感じたことがある」(74.4%)と回答しました。
また、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを使った仕事において、約2人に1人が「目の不調をきっかけに通常より余計な確認や対応(ワークロス)が発生することがある」(49.8%)と回答。
具体的には、「文字や画面を拡大する」(41.8%)、「作業を中断したり、予定外の休息を取ったりする」(34.9%)、「数字や記号を確認し直したり、打ち直したりする」(32.1%)といった意見が挙がり、ひとつひとつは短時間の作業でも、繰り返されれば仕事全体の効率に影響することが示唆されました。
併せて、「集中力が続きにくい」(51.4%)、「作業スピードが落ちる」(51.0%)、「資料や数字・文字の確認に時間や手間がかかる」(41.8%)といった業務への影響も挙げられ、約4人に3人が「目の不調が原因でミスやヒヤリハットを経験している」(73.1%)と回答しています。
さらに、72.7%が「目の不調がまったくなければ、仕事の生産性は上がると思う」と回答しており、多くの経験者が、目の不調を仕事の生産性に関わる課題として認識していることがうかがえました。
目の不調によって生じるワークロスは、個人の作業時間だけでなく、経済的な損失としても推計されています。
ワークロス経験者249人に「1日あたりの発生状況」を尋ねたところ、平均発生回数は「4.14回」、平均ロス時間は「約20.9分」でした。
この時間を年間に換算すると約72.73時間。さらに、給与統計を基に算出した換算時給を掛け合わせると、ワークロス経験者1人あたりの年間経済損失額は「約19.16万円」となります。
調査では、事前スクリーニングと本調査の結果を基に、仕事でデジタルデバイスを週3日以上、1日平均4時間以上使用する人のうち、ワークロスを経験している人を約1030万人と推計しました。
1人あたりの「年間損失額」と「経験者数」を掛け合わせると、日本全体の年間経済損失額は「約1兆9734億8000万円」。概数では約2兆円に相当し、名目GDPの約0.3%に相当するとしています。
なお、この金額は、回答者の自己申告に基づくロス時間を給与統計などに当てはめて算出した推計値です。実際に発生した損失額を直接計測したものではありません。
業務の効率化に役立つ生成AIですが、本調査では、利用頻度によってワークロスの経験率に違いが見られました。
直近1カ月に生成AIツールを週4日以上利用する「AIヘビーユーザー」の64.6%が、目の不調によるワークロスを経験。
一方、生成AIを利用していない人の経験率は28.0%と、およそ2.3倍の差がみられたほか、目の不調によるミスやヒヤリハットの経験率でも、AIヘビーユーザーの62.6%に対してAI非利用層では20.0%とおよそ3.1倍の差がみられました。
ただし、この結果はAIの利用と目の不調によるワークロスの経験率との関連を示したものであり、生成AIが目の不調を引き起こしていることを証明するものではありません。
画面を見る時間や仕事量、業務内容など、ほかの要因が関係している可能性もあるため、結果の解釈には注意が必要です。
働き方のデジタル化は、紙の資料を減らしたり、情報共有を迅速化したりするメリットがあります。一方、画面を見る機会やデジタルツールを使う場面が増えたことで、目の負担を感じる人もいるようです。
職場や働き方の変化を経験した人に、「目の負担が増えたと感じる変化」について尋ねたところ、「書類のペーパーレス化・資料の電子化」(38.8%)、「複数モニター・複数デバイスの併用」(32.5%)、「チャットツールでのやりとりの増加」(30.1%)が上位となり、デジタル化は業務の効率を高める一方で、画面上の資料を読み込む時間が増えるなど、目の使い方に変化をもたらしている可能性が示唆されました。
また、「業務改善・効率化のためのツールを職場で導入している」とした人は60.0%。これに対し、視力検査や眼科受診の補助など、「目の不調に対する支援がある」とした人は38.0%にとどまっており、業務効率化を進めるためのツールが広がる一方で、目の健康を支える取り組みは、それよりも少ない割合であることが明らかとなりました。
これらの調査結果を踏まえて、先進会眼科の岡義隆理事長は、「デジタル化と視力への依存が進む現代社会では、見えづらさによって時間を失い、生産性の低下を感じる人が多いことが明らかになった」とコメント。
さらに、「視力や見え方は個人の生活だけでなく、社会全体にも影響を及ぼすものだ」と指摘。良好な見え方を保つことは、仕事や生活の質を長く支える資産であるとして、これを「裸眼資産」と表現しています。
そのうえで、「まずは眼科で目の状態を確認し、自分に合った選択肢を知ることが第一歩になる」と呼びかけています。
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【出典】
▽目の不調がもたらす「見えない赤字」実態調査/医療法人先進会調べ