自宅に忍び込んだ泥棒が昔の同級生だったら、普通の人なら冷静に対応するのは難しいでしょう。しかし、この物語の家主は違います。漫画家・蒼崎渚さんの作品『泥棒に入った男と女家主の話』では、泥棒の男が偶然、昔好きだった同級生の家に忍び込むエピソードが描かれています。同作がX(旧Twitter)に投稿されると、9000いいねが集まりました。
泥棒を生業とする福本はある夜、アパートの一室に忍び込みました。金目のものがないか部屋中を探し回りましたが、それらしいものは見当たりません。この家はハズレかと考えながら玄関を物色していると、急にドアが開いて家主の女性と鉢合わせてしまいます。
福本はあわてて逃げ出そうとしますが、女性から「福本くん?」と呼び止められました。なんと彼女は、福本が高校時代に所属していた野球部のマネージャー・小林カズミだったのです。
久々に再会した2人はテーブルに座り直し、コーヒーを飲みながら昔話を始めます。カズミは福本に、自分や野球部員が原因で泥棒になったのかと尋ねました。それは、野球部時代に盗塁が得意だった福本が、ねずみ小僧や石川五右衛門と呼ばれ、からかわれていたからです。
家庭の事情で泥棒になったのだと説明する福本に、カズミがなにげなく「生まれつき盗むことに長けていたのかもね」と言うと、福本はそれはないと否定しました。
実は福本は昔、カズミのことが好きでした。しかし、当時カズミと付き合っていたのは野球部のエース選手だったのです。盗塁も泥棒になることも怖くなかった福本ですが、唯一カズミに振られることだけは怖く、2人の間に割って入ることができませんでした。
福本がカズミに「会えてよかった」という言葉を残して立ち去ろうとすると、カズミは福本の腕をつかみ、「行かないで……」と引き留めました。
カズミは何度か言葉を詰まらせた後、警察手帳を片手に自身が警察官であることを明かし、福本はあえなく逮捕されてしまうのでした。
読者からは「一本取られた」「素晴らしいオチ」など、賞賛の声があがっています。そこで同作について、作者の蒼崎渚さんに話を聞きました。
昔の友人としての情はありつつも「それはそれ、これはこれ」
――同作は、どのようなところから着想を得たのでしょうか?
短編のネタを考えてるときに、ふと短編集『冒険少年』(作:あだち充)に収録されている作品『時の階段』のワンシーンを思い出したんです。怪盗が夜に屋敷に忍び込むシーンが頭をよぎったのが、泥棒の漫画を描こうと思ったきっかけです。
泥棒の「盗む」から野球の「盗塁」、映画『ルパン三世 カリオストロの城』の「心を盗む」と広げて、キャラクターや関係性を作っていきました。
――カズミはなぜ、すぐに福本を逮捕しなかったのでしょうか?
カズミは警察官とはいえ女性なので、1人で福本を逮捕しようとすると逃げられる危険性があります。そのため、福本に気づかれないようこっそり応援を呼び、応援が到着するまで逃げられないよう、昔話をして引き留めていたという裏設定があります。
しかし、福本が逃亡しないと分かって余裕ができてからは、昔の友人としての情も生まれていると思います。ただ、それは職務に影響を及ぼすものではなく、「それはそれ、これはこれ♡」という感じです。男性側は、そうは思ってなかったと思いますが(笑)
――とくに注目してほしいシーンを教えてください。
この作品は場所の移動のない会話劇なので、派手なシーンがなくても飽きずに読ませる工夫が随所に散りばめられています。キャラのコミカルさやセリフ回し、回想を入れるタイミングなど、そういった細かなところが注目ポイントですね!
この作品の他にも短編漫画を20本近く公開しているので、ぜひXに遊びにきてください!連載企画やSNS用の1ページ漫画も、本格的に進めていく予定です!
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