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大阪・関西万博関連まで…手放したドメインが成人向けサイトに なぜこんなことが起きるのか 「ドロップキャッチ」のリスクと対策

井二 かける 井二 かける

2026年7月、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が万博関連のドメイン名の運用終了について発表し、その一部が既に第三者に取得され、成人向けサイトなどの運用に使われていることが話題となりました。

失効したドメイン名が再び登録可能になるタイミングを狙って取得する行為は「ドロップキャッチ」と呼ばれています。こうしたドメイン名の第三者による再取得は、行政関係からアニメ公式サイトに至るまで、さまざまな事例が確認されています。

・大阪・関西万博 万博関連のドメイン
・各自治体の新型コロナ関連のドメイン
・アニメ「温泉幼精ハコネちゃん」旧公式サイトドメイン
・過去に開催された『名探偵コナン』関連イベントの旧公式サイトドメイン

上記のケースはいずれも、期間限定の事業サイトや旧公式サイトの運用が終了した後に、ドメイン名が第三者に取得されたケースです。

失効したドメイン名を第三者が取得すること自体は、通常、違法ではありません。ドメイン名は一種の限られた資源であり、登録が失効し、再び登録可能になれば、原則として誰でも取得できる仕組みだからです。

しかし、有名なWebサイトのドメイン名や公的なWebサイトのドメイン名であればあるほど、第三者に取得された際の影響が大きいのが現実です。

「ペットを飼うなら最後まで」と同じように、ドメインを取得するなら手放さず維持する覚悟が求められます。簡単に取得できるからといって、気軽にドメインを取得しないこと、そして、なるべく既に取得済みのドメインのサブドメインを活用することが重要です。どうしても手放さざるを得ないときは、長期間かけて準備を行い、顧客等の訪問者に迷惑を掛けないようにしなければなりません。

この記事では、ドロップキャッチのリスクと、ドメインを手放すために必要な準備について解説します。

ドロップキャッチのリスク

手放したドメインを第三者にドロップキャッチされることには、どのようなリスクがあるのでしょうか。

まず考えなければならないのは、訪問者への影響です。例えば以下のようなリスクが考えられます。

・旧ドメインのリンクにアクセスすることで、自社顧客が意図せず成人向けサイトやオンラインカジノ、マルウェア配信などに誘導されてしまう
・旧ドメインにアクセスした際、ブラウザに保存されたCookieが新たな運用者のサーバーに送信されたり、ローカルストレージに残された情報が読み取られたりする
・旧ドメインにアクセスした際、ブラウザに保存されたユーザーIDやパスワードが自動入力されることで、認証情報が漏えいする
・旧ドメインで配信されていたJavaScriptを現行サイトが引き続き読み込んでいる場合、そのJavaScriptが第三者によって悪意のあるものに差し替えられ、現行サイトの改ざんや情報漏えいにつながる
・新しい運用者が旧ドメインのメールアドレスを悪用して関係者に成りすます
・旧ドメイン宛のメールを新たな運用者が受信できるようになる。旧ドメインのメールアドレスでSNS等の外部サービスのアカウントを取得していた場合、パスワードリセットなどにより乗っ取り行為が行われる

次に考えられるのが、ブランドイメージや信用の毀損です。

実際、ドロップキャッチが大きな騒ぎになった場合に、真っ先に批判の槍玉に挙げられるのは、ドロップキャッチした怪しい第三者ではなく、前所有者であることも少なくありません。いくら現在は無関係のWebサイトとはいえ、こうしたリスクは容易に想定されたことです。特に公的機関や著名なWebサイトにおいて、第三者による再取得のリスクを十分に考慮せずにドメイン名を廃止した場合、従来の運営者にも管理上の責任を問う声が上がるかもしれません。

なぜ繰り返されるのか

ドロップキャッチの問題は毎年のように繰り返されています。特に公共事業では批判の声が上がります。

しかし、このようなリスクが知られていながら、なぜ繰り返されるのでしょうか。一つ言えることは、新規ドメインの取得は簡単なのに、安全に手放すことが難しいということです。

新規ドメインを取得する動機はさまざまです。

・製品・サービス名称のドメインを押さえておきたい
・期間限定のキャンペーンや事業のために分かりやすいドメインを確保したい
・所管部署や運営企業が違うため、既存ドメインを使用する手続きが面倒くさい

こうして、山のように新規ドメインが取得されますが、製品の終売やキャンペーンの終了などにより不要になったドメインも山のように発生し、管理しきれずに手放されるという結果となります。

公共事業においては、「受託者が専用Webサイト用のドメインを取得し、公開から契約終了までドメイン管理を含む保守管理を行う」というような仕様で発注されたために、契約終了後、予定通りドメインが廃止されるということもあるようです。

さらにこの状況を悪化させているのが、一部のドメイン事業者が実施している、失効ドメインのバックオーダーやオークションサービスの存在です。バックオーダーは、失効したドメイン名が再登録可能になるタイミングを狙って取得を試みるサービスであり、オークションでは取得希望者同士が価格を競い合います。有名なドメイン名はSEO(検索エンジン最適化)対策の観点でも価値が高いことが多く、冒頭で述べた万博関連のドメインの一つでは、45件の入札を経て、終了時点で159,600円(税込)の価格が表示されていました。こうしたサービスには批判も存在しますが、ニーズがある限りは無くなることはないでしょう。

ドメイン名の手放し方

冒頭で述べたように、一度取得したドメインは手放さないことが原則です。

しかし、現に大量のドメイン名を抱えている場合、毎年のように維持管理費も発生することから、やむなく手放さざるを得ないという場合もあることでしょう。そのようなときは、どのような対策が行えるのでしょうか。

残念ながら、完璧な対策というものは存在しません。
しかし、最低限行うべき対策も存在します。例えば以下のようなものです。

・Webサイトの運用終了後、一定期間(少なくとも数年間)はドメイン名を廃止しない
・検索エンジンから削除されるように、HTTP 410 Gone、HTTP 404 Not Foundなどのエラーコードを返すようにWebサーバーを設定する
・主要な検索エンジンに削除依頼を出す
・検索エンジンやリファラー情報を継続的に観測し、外部サイトに対して地道にリンク削除依頼を出す

もちろん、書籍やチラシなど印刷媒体をすべて回収するのは現実的ではありませんが、少なくとも旧ドメインの価値やアクセス数を減らすための対策となります。

加えて、システム運用として以下の対策も重要です。

・認証情報の無効化:旧サイトで使用していたセッション、APIキー、認証トークンを無効化する。 
・外部サービスの登録情報変更:旧ドメインのメールアドレスをアカウント復旧先などに使用していないか確認する。
・依存関係の調査:現行サイトやシステムが旧ドメインのJavaScript、API、画像、DNSなどに依存していないか確認する。
・ドメインの管理台帳:登録名義、管理責任者、更新期限、利用目的、廃止予定日などを一元管理する。部署ごとに分散管理しない。
・委託契約上の管理:外部事業者にドメインを管理させる場合は、契約終了後の登録維持や移管の責任を明確にする。

また、政府機関や地方公共団体が運営するWebサイトでは、原則として既存のgo.jpやlg.jpなどの公的なドメイン名の配下にサイトを設置することが望まれます。これらのドメイン名は登録資格が制限されているため、一般的なドメイン名と比較して、第三者に再取得されるリスクを低減できます。

このように取得するのは簡単なのに、手放すのは非常に面倒なのがドメイン名です。

しかし、そもそも余計なドメイン名を取得しない、管理し続けられる少数のドメイン名のみを所有することが大切です。ドメインを取得したなら最後まで、しっかり管理しましょう。

【関連情報】
▽2025年日本国際博覧会協会:専用サイトに関するドメインの運用終了について
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20260729-01/

▽旭プロダクション:【重要なお知らせ】偽サイトにご注意ください
https://asahi-pro.co.jp/8378

▽放送30周年記念TVアニメ「名探偵コナン」展:廃止したドメイン名の第三者による取得について
https://tvconanten-30th.jp/

▽お名前.com:ドメインオークション(該当ドメインのオークションページ)
https://www.onamae.com/auc/jp/detail/252298

   ◇   ◇

◇井二かける(いぶた・かける)情報処理安全確保支援士、作家、ITエンジニア。
「IT・セキュリティをもっと面白く」をモットーに、アニメ・小説・漫画・記事等の形で情報発信している。2014年より自主制作アニメ「こうしす!」シリーズを公開、2020年に小説「こうしす!社内SE祝園アカネの情報セキュリティ事件簿」(翔泳社)にて作家デビュー。最近の関心分野は、2038年問題、AIの利活用やエッジAIにおける情報セキュリティ。自身が経営するひとり出版社にて、目下、技術×SFの出版レーベルを企画中。

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