恋愛経験ゼロだった息子に訪れた人生初の春
子どもが大学生になると、親の知らない交友関係や価値観が広がり、思いがけない成長を見せることがあります。しかし、その成長のスピードに親のほうが追いつけなくなることもあるようです。
東京都在住のBさん(50代)は、大学2年生になった息子・Sくん(20歳)の変化に驚かされました。
中高一貫の男子校で育ったSくんは、これまで恋愛とは無縁の生活を送っていました。ところが大学2年になり、所属するサークル活動を通じて初めて彼女ができたのです。
「ようやくそういう話が出る年齢になったのだなと、親としては微笑ましく思っていました」
ところが、その報告から間もなく、息子の口から飛び出したのは予想外の言葉でした。
「一人暮らししたいんだよね」
彼女ができた途端の一人暮らし宣言
理由を尋ねると、息子は「通学時間が長いから」と説明しました。
確かに大学までは片道約1時間半。決して近いとは言えません。しかし、それまで通学時間について不満を口にしたことはほとんどありませんでした。
「彼女ができる前は、一人暮らしの話なんて一度も出たことがなかったんです」
Bさんはそう振り返ります。
もちろん本人は恋愛を理由にはしませんでした。しかし親から見れば、人生初の彼女と少しでも長く一緒にいたい…そんな気持ちが、一人暮らしへの憧れにつながっていることは十分に伝わってきたそうです。
父が求めた「資金計画書」
しかし、両親はすぐに賛成したわけではありません。
家賃、光熱費、通信費、食費、日用品代。実家暮らしでは意識しなかった出費が、一人暮らしには次々と発生します。
父親が出した条件はシンプルでした。
「本気なら資金計画書を作ってみろ」
家賃相場を調べ、生活費を試算し、自分がどれだけ負担できるのかを書き出すよう求めたのです。
数日後、Sくんは真面目に作成した資料を父親に見せました。
ところが計算を進めるうちに、本人も、一人暮らしにかかる費用の大きさに気づき始めたようです。
家賃だけでなく、電気代やガス代、インターネット代まで加えると予想以上の金額になります。
さらに父親から、
「そのうち親はいくら負担する想定なんだ?」
と聞かれると、言葉に詰まったそうです。
一人暮らし計画がお金の勉強につながった
その後、Sくんはアルバイト収入だけでは将来的な生活資金が十分ではないことを実感しました。
一人暮らしの費用だけでなく、大学生として人並みに遊ぶお金も必要になります。
最近ではお金に関する動画を見たり、個別株を購入したり、積み立てNISAを始めたりしています。
「彼女ができたことがきっかけですが、お金について真面目に考えるようになったのは良かったかもしれません」
とBさんは話します。
物件情報ばかり見ていた息子は、今では家賃相場と収支表、さらには投資信託の運用画面まで見比べるようになりました。
恋愛をきっかけに始まった一人暮らし計画は、思いがけず「自立とは何か」を学ぶ機会にもなっているようです。