結婚、夫婦、家族、日常のやり取り。身近だからこそ見過ごしがちな違和感や感情の揺れを切り取った漫画が、今年も多く読まれました。理想と現実のギャップ、言葉の行き違い、別れのあとに残る時間──2025年に反響を集めた4作品を振り返ります。
「運命など存在しないので」
もし結婚相手を「理想」だけで選ぶとしたら、「若くて可愛い人がいい」と考える男性は少なくありません。井原タクヤさんの漫画『運命など存在しないので』は、そうした願望と、婚活の現場で突きつけられる現実の差を描いた作品です。
結婚相談所を訪れた52歳の男性は、「20代の女性と結婚したい」「子どもは3人欲しい」と希望を口にしますが、担当するベテラン相談員は、その条件では成婚は難しいと即座に伝えます。若い女性側にとっての負担や不利益が大きいからです。
作中では、若い女性への過度な申し込みが本人たちの負担になることから、相談所側が申し込み自体を届かせない「おぢブロック」と呼ばれる仕組みがあることも示されます。やり取りを重ねる中で、男性が抱えてきた不安や焦り、結婚を望む動機の変化も少しずつ明らかになっていきます。
独身おぢ52歳「子ども3人ほしいの 奥さんは20代がいいな～」→「無理です」結婚相談所が明かす“おぢブロック”の現実【漫画】
知人の「返信不要」にモヤッ… 夫に教わった"神フレーズ"
日常のやり取りの中で、言葉の選び方に戸惑う場面は少なくありません。漫画家のB.B軍曹さんがInstagramに投稿した漫画「気持ちがいい会話の終わらせ方」は、知人から届いたLINEの文面にあった「返信不要です。」という一言をきっかけに生まれました。気遣いのつもりで使われがちな表現ですが、「不要」という言葉に冷たさを感じたり、本当に返さなくてよいのか迷ってしまったりする自身の感覚が描かれています。
作中では、仕事のメールで夫・髭さんが使っていた「ご不明点などなければ、返信には及びません」という表現や、LINE向けにさらに柔らかく言い換えた一文が紹介され、同じ意味でも伝え方で印象が大きく変わることが示されます。否定的な言葉で締めくくるのではなく、感謝や余白を残す言い回しにすることで、相手への配慮がより伝わる点が共感を集めました。
知人の「返信不要」にモヤッ… 夫に教わった"神フレーズ"「この表現なら安心」「すぐ使いたい」
夫が亡くなった翌月、ケーキ屋からの電話 「最後のプレゼント」の奇跡
身近な存在との別れを静かに描いたコミックエッセイ『死んだ夫からのプレゼント』が、SNSで注目を集めています。描いたのは、コミックエッセイを発表している「家事しないと死ぬ旦那を描いてる人」です。
作品では、亡くなった夫が生前に予約していたクリスマスケーキを、亡くなった直後の12月24日に受け取りに行く妻の姿が描かれます。喪に服すつもりでいた矢先、夫の携帯電話にかかってきたケーキ店からの連絡で、その事実を知りました。
閉店間際の時間帯、片道1時間ほどかかる距離を急いで向かう道中、毎年夫がケーキを用意してくれていたことや、病気を抱えながらも日常を続けていた姿が思い出されます。無事にケーキを受け取った際、店員から何気なくかけられた言葉に、夫がそばにいるような感覚を覚える場面も印象的です。
帰りの電車の中で、作者は初めて自分が深く悲しんでいることに気づきます。持ち帰ったケーキを前に、夫が残した時間の重みを受け止めていくまでの過程を、静かな筆致で描いた一作です。
夫が亡くなった翌月、ケーキ屋からの電話 「最後のプレゼント」の奇跡に妻が感じた“再会”の夜【漫画】
「育休中の妻の仕事は育児でしょ」夜泣きでボロボロの妻に、夫はアドバイスを検索するだけ
漫画家・はむら芥さんが描いた『育児しない夫、変わりますか？』は、育児の役割分担をめぐる夫婦のすれ違いを描いた作品です。物語は、娘の危険な行動を目の前にしながら、何も手を出さずに見ている夫・タカシの姿から始まります。妻のさとこは、夜泣きや育児の負担で追い詰められながらも、夫に協力を求めますが、タカシが示すのはスマホで調べた育児情報を伝えるだけの対応でした。
「育休中なのだから育児は妻の仕事」という考えを崩さないタカシに対し、さとこは具体的に手伝ってほしいと伝え続けますが、話し合いは次第に平行線をたどっていきます。作品では、育児に向き合おうとしない夫の姿と、諦めずに言葉を重ねる妻の葛藤が描かれています。
「育休中の妻の仕事は育児でしょ」夜泣きでボロボロの妻に、アドバイスを検索するだけ “見てるだけ夫”に限界を迎えた妻の決断【漫画】
