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「こんなとこ…怖くて変な人しかいないじゃん!」と思った精神科病棟 摂食障害で入院した女子高生が、患者仲間に励まされ心を開いていった日々【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

「精神科の閉鎖病棟」と聞くと、どこか不安や怖さを感じる方は多いでしょう。もつおさんの作品『精神科病棟の青春 あるいは高校時代の特別な1年間について』は実際に精神科入院経験がある作者が、怖くもどこか温かい精神科病棟を描いています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約8000ものいいねを集めました。

高校2年生の春、加藤ミモリは摂食障害を発症し精神科病棟へと入院します。病棟を散策してみると、手すりに寄りかかり倒れている人や、何度も何度も必死に手洗いする人、つま先立ちで歩く人など奇妙な人々に出会います。

そんな人たちが集う病棟で、ミモリはスマホも面会も制限された状態で日々を過ごしていました。

しかし少し変わった人たちが集う場所だからといって、何もかもが変というわけではありません。例えば食事の時間、今まで食事を完食できなかったトガワが「完食できた…!」と喜んでいると、他の皆も喜び、楽しい雰囲気になることもあります。

とはいえ病棟に入ったばかりのミモリは、まだこの雰囲気や変わった人たちに慣れることができず、まったく食事に手を付けられずにいます。そして部屋に帰った後も「ここには怖くて変な人しかいない」と震えるのでした。

ミモリがベッドで落ち込み震えていると、看護師が夜の見回りで現れます。看護師にミモリは「もういやだ。ここにいたくない」「怖くて変な人しかいない」と思いをぶつけると、看護師は今日食事を完食できたトガワについて語ります。

実はトガワが食事を完食できたのは今回が初めてであり、入院4ヶ月目であるそうです。続けて看護師は、「毎日すごい頑張っててね」「ずっと見てきたからみんな喜んだんだよ」「それって変なことだと思う?」とミモリに問いかけます。

それから一晩経って、ミモリはこの精神病棟について、やっぱり変なところには変わりないものの「学校や家よりもちょっとだけ息がしやすい」と感じるのでした。

そもそも、ミモリがなぜ摂食障害に陥ったのか。それは友人から「ミモリの脚太くて変だよ」と言われたことがきっかけでした。その一言が重い足かせとなり、食べたものを吐き出しランニングに勤しむようになったのです。やがて『摂食障害』と診断され、入院へ至りました。

ある日、入院に嫌気が差したミモリは先生に対して「退院します」と言い放ちます。しかし先生は「いい加減にしなさい!誰のための入院なのか、何のための入院なのか自分でよく考えなさい」と怒られました。

そのことを知ったトガワは、「先生たちはミモリちゃんに期待してるからじゃないかな」と語りました。その言葉を聞いたミモリは「16歳の自分はそんなに大人じゃないけれど、自分にだって踏ん張る力はあるはず」と、奮起し始めます。

ミモリは少量ながらご飯を食べ、体重もほんの少し上向いてきたころ、先生に「学校の授業に1時間出席してみましょう」と告げられます。外の空気が吸えると喜ぶ反面、ミモリは皆に会うのが怖い気持ちもありました。母の送迎で着いた学校では、友人たちがミモリを心配そうに迎えてくれました。

友人たちと久々の学校生活を楽しみ、体重がさらに増えたことで週に2回学校へ行けるようになります。しかしある日、友人から「学校来れるのになんで退院できないの?ミモリって頭がおかしくなって食べられなくなったわけじゃないんでしょ?」と言われたのです。

この言葉を聞いたミモリは、ショックから食事を摂ることがバカバカしくなってしまい、病院の食事を捨ててしまいます。さらに病院から逃げたい気持ちになってしまうのでした。そんなミモリの胸中を察したのか、何人かの患者仲間がミモリに声をかけます。皆は「ミモリさんが学校に行ってる姿に元気がもらえる」や「いつも頑張ってる」と言われ、自分を見てくれている人がいることを知って励まされるのでした。

同作について、SNS上では「自分が入院してた頃を思い出した」「娘が今まさに悩んでいるけど希望を持てた」など、さまざまな立場からのコメントがあがっています。そこで、作者のもつおさんに同作について話を聞きました。

誇張しない精神科病棟の空気をリアルに感じて欲しい

―摂食障害について『精神科病棟での青春』を描こうと思われたきっかけや動機を教えてください。

私が高校生のときに精神科病棟に入院したのは摂食障害の治療が目的だったので、病気と向き合う時間が長くありました。その部分をもう少し丁寧に描きたくて、主人公は摂食障害の設定にしました。

自分の経験をもう少し詳しく作品に落とし込みたいという思いで、この作品を描きました。

―実際に精神科病棟を描く際に意識された工夫や、難しかった部分があればお聞かせください。

この作品では、当時の病棟で私が感じた空気をそのまま描こうと最初から決めていました。リアルに感じてもらえるように、誇張した表現はせず、本当にあった出来事や当時の自分の気持ちをそのまま描くことを意識しました。

また、読者に病棟の空気やそこでの人間関係をリアルに感じてもらうために、あえて主人公は架空のキャラクターにしました。

描き方としては、あえてナレーションを少なくして、景色だけのコマを入れたり、映画のワンシーンのように見せたりしました。そうすることで、読む人が「病棟の空気感」を体感できるように工夫しました。

―最後に、読者の方々や、今まさに悩みを抱えている方々にメッセージをお願いします。

もし今すごくしんどい渦中にいる方がいたら、「そのつらさは確かに存在しているし、間違っていないんだよ」と伝えたいです。無理に前向きにならなくても大丈夫です。

また精神科病棟って、聞いただけで怖いとか暗いというイメージを持たれる方も多いと思います。正直に言うと、私自身も入院する前はそう感じていました。でも私の場合は、そこで過ごしたことで少し元気になった自分もいました。だから「そういう人や病棟もあったんだなあ」くらいに知ってもらえたらという思いです。

もし自分や周りの人が困った時に、ほんの少しでも気持ちが楽になったり、選択肢が増えたりするきっかけになったら嬉しいです。

<もつおさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/mamimumemotsuo
▽電子書籍『精神科病棟の青春 あるいは高校時代の特別な1年間について』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CK1LMWBX/

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